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インドネシアのラマダンと消費者の動向

2020年も3月に入り、今年のラマダンが近づいてきました。
ということで今回はラマダン期間中に消費者の動向はどう変化するか、その動向に合わせて主要スタートアップはどのような広告を出しているのかブログにまとめさせて頂きます。

とその前にざっくりとラマダンの説明を。
インドネシアは約9割近くの国民がイスラム教徒なので、毎年ラマダン(断食期間)とレバラン(断食明け大祭)があります。2020年のラマダン(断食期)は4月23日から5月23日を予定しており、この時期インドネシアのイスラム教徒の人たちは日中の飲食を断ちます。神に感謝の祈りを捧げるとても大事なスピリチュアルな期間です。「断食」は日中の日が登っている間に飲食を断つ訳なので、日が落ちた後はみなさん通常通りに飲食をしております。

ラマダン期間中に消費者の動向はどう変化するか

ラマダンはスピリチュアルな時期であると同時に、日の入り後に家族や友人と集まって食事をする文化があります。これをBuka Puasa (断食明け)と呼んでおり、通常よりも外食や人と会う機会が増えます。

先日Google社が発表したWinning Ramadan with Digital 2020によると、2019年はFMCG (Fast Moving Consumer Goodsの略で飲料、食品、化粧品などの比較的短期間で消費される製品)の売上が2018年に比べ13%上昇、小売の売上は毎年30%上昇しており、ラマダンは小売業者にとって最も大事な時期と言われています。そのような状況を踏まえ消費者向けのブランドがラマダン時期に広告を使って上手く業績をあげるためには以下の4つのポイントを押さえておく必要があります。以下Google社Winning Ramadan with Digital 2020のデータを基にまとめてみました。

1.心に届くメッセージ性が大事

ラマダン中に伸びるGoogle検索ワードは Doa (お祈り)、Zakat (イスラム用語で寄付)、Donasi (寄付)。通常に比べてDoaは2.1倍、Zakat 15倍、Donasi 2.2倍の検索結果が出ています。ラマダン中は実際にドネーション活動など他人に"与える"ことを活発に行う人たちが増えるので、この時期の広告はスピリチュアルに訴えるようなブランド価値・メッセージが一致するようなものにすると良いかもしれません。

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引用:Winning Ramadan with Digital 2020 by Google

2.できるだけシンプルに、わかりやすく

ラマダン中の人たちは日中飲食を断っているためエネルギーが低い状態。なので、通常よりもよりシンプルさや利便性が重視されます。疲れているのに頭を使う複雑な広告やカラフルでうるさい広告を見るとしんどいですよね。Google社の発表によるとラマダン中に美容系の検索はシンプル・簡単・チュートリアル、旅行系の検索は近場、料理系の検索はシンプル、単純、実用的という結果が多いと発表しています。ブランドの広告にはシンプルさを重視したメッセージと効率性が求められるでしょう。

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引用:Winning Ramadan with Digital 2020 by Google

3.消費者を楽しませるストーリー性

2に記載した通り、断食中は飲食を断っているので消費者のエネルギーが少ない状態。そのような状況で消費者はオンライン上でエンターテイメントを求めています。この時期はブランドを全面に出すのではなく、ストーリー性のあるものにする方法を取ることで消費者により大きな印象を残すことが可能でしょう。(後ほどご紹介する主要スタートアップによる広告をご参照ください)

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引用:Winning Ramadan with Digital 2020 by Google

4.消費者の目につくように

ラマダンの時期はFMCGや小売の売上が上昇するデータがあるように、消費者の購買意欲が高まる時期です。この時期にブランドと製品がどれだけ消費者の目に止まるかが鍵となっています。Google社の発表によるとラマダン中は408,559件ラマダンに関する買い物の会話がされ、更に買い物関連の会話が72%増えるという結果が出ています。

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引用:Winning Ramadan with Digital 2020 by Google

ラマダン期間中に主要スタートアップはどのような広告を出しているのか

以上の4つのポイントを踏まえ、インドネシアのユニコーンスタートアップは2019年に以下のような広告を出しています。各社ラマダン時期に合わせたメッセージ性のある広告となっています。

1. Gojek 

この動画ではラマダンの時期に合わせた#CariKebaikan (優しさを探す)というテーマで、顧客のニーズとGojekのサービスを組み込んだ広告となっています。ラマダン中の消費者の動き 1 に記載した通り、この時期にはドネーションが増えるなど"人のために行動する"ことが多くなります。そのようなニーズをGojekのアプリを通して簡易化できるという広告になっています。

2. Tokopedia 

この動画では両親が子供に30日間の断食に参加させ、毎日子供達が断食を終えるとご褒美にプレゼントをするというストーリーになっています。この動画自体では直接Tokopediaのアプリに触れていませんが、インドネシアの消費者に心理的に訴える短時間のドラマとなっており、結果的にTokopediaのブランドイメージ向上に繋がっています。

3. Bukalapak

BukalapakはTokopediaと同じくECサイトのブランドですが、ブランドを全面に出し"ラマダン"という単語と"Doing Kindness-親切をする"をキャッチコピーにプロモーションやセールの情報を動画で流しています。ブランドと商品が分かりやすい動画ですが、ラマダンの色が少し弱く、結果的に消費者に心理的なインパクトを与えられていない印象です。

4. Traveloka

Travelokaは"Experience-経験"を強調する旅行系スタートアップです。この動画ではTokopediaのようなミニドラマの要素を入れた、消費者に心理的に訴える動画となっています。この動画は "Hidup Lebih Kaya di Bulan Ramadan"というテーマで、英語にすると"Live richer during Ramadhan"、ここでのRichとは経験豊かという意味。つまりラマダン中はTravelokaを通してお金ではなく経験豊かに生きよう、というメッセージを込めています。

ラマダンの時期は消費者の購買意欲が高まるので色々なチャネルを通して消費者の目に止まるようにしたいのですが、シンプルかつストーリー性を大事にする繊細さが求められるのがラマダン時期のオンライン広告の特徴だと思います。

以上、ラマダン中のインドネシアの消費者の動向及び、その動向に合わせたスタートアップ各社の広告をご紹介させて頂きました。

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