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【同時通訳演習 第10回 振り返り】通訳者 K&F

同時通訳演習第10回では、受講生Mさんによるプレゼンテーション「Fundamentals of Software Engineering」を受講生KとFが5分交代で訳出しました。演習を振り返り、良かったところ、悪かったところ、次回に向けての改善点を述べます。


良かったところ 

・トピックが変わるときに上手くオーディエンスを誘導できていた(K)
新しいスライドに切り替わるときに、冒頭で「それではまず/次に〜」「ここからは〜をご紹介していきます」などと言うことで、オーディエンスが上手く話についてこられるような流れをつくりだせていたと思います。また集中力を切らさずに、声の調子が終始変わることなく訳し続けられるのは自分の強みになってきたなと感じています。前回から新たに良くなった点などがあまり見つけられず、伸び悩んでいると感じているのが正直なところですが、課題は明らかなので地道に練習に励むしかないと思います。

Fさんは、過去の演習と比べても特に今回はご自身の言葉で表現している箇所が多く見られました。入念な事前準備の甲斐あって、しっかりと頭の中にイメージができていたこと、リラックスしていたことなどが理由に挙げられると思います。また印象的だったのは、少し遅れを取っても必ず巻き返して元のペースに戻っていたところです!
関根先生も、前回の演習や授業でも仰っていたことですが、Fさんの心の余裕が声や表情にも表れていて素晴らしいパフォーマンスでした。

・引き継ぎ、声の調子がよく、困ったときに切り抜けられた(F)
引き継ぎが今までで最もスムーズにできたと思います。切り替わりのタイミングがいつもスライドの終盤か新しいスライドだったということもあり、単に運がよかったというのもありますが…。そして、IT分野という不得意分野にもかかわらず、声に覇気がまずまず出せていたと思います。理由として考えられるのは、(1)事前準備が出来ていたので不安がなかった(2)演習前にKさんと15分ほど雑談をして、口の筋肉をほぐせた(3)今回に限り、オーディエンスも先生もいない環境だったので、いつもと違いリラックスした状態で臨めた(!)ことが挙げられます。また、いつも間を取ってしまいがちなので、その点にも気を付けました。聴いていてもサッパリわからないと思ったときは、無言になるよりはマシだろうと思い、思い切ってスライドの内容を自分の言葉で要約して、切り抜け(?)ました。

パートナーKさんの良かったところとしては、アナウンサーのような美声です。いつもは自分の休憩中にイヤホンを外して耳を休めているのですが、今日は着けっぱなしにしていたほどです。KさんもIT分野は詳しくないと話していたので、打ち合わせで出てこなかった部分は戸惑ったと思うのですが、それでも間を開けずに平然と自信のある声で訳出していたので感心しました!私も、聞き手に負担をかけない話し方を心掛けたいです。


悪かったところ

・一つの文に無駄が多い(K)
今回の演習は、私がトップバッターで訳し始めたのですが、録音を聞いてみて気がついたのが冒頭から「本日は」を連呼していることでした。実際の訳文を例に出して失敗例をみていきます。

本日はご参加いただきありがとうございます。本日みなさんにお話しするトピックは、ソフトウェアエンジニアリングの基礎についてです。私はエキスパートではないので、本日はコードの話ではなく、基礎的なところをお話ししていきたいと思います。また本日は少しゆっくり話そうと思っています。」

長さにしてたった36秒なのに「本日は」を4回も使ってしまっています。過去の演習の録音を聞き返してみても、余裕がなくなるとチャンクの始めに「それから」「例えば」「本日は」などを多用してしまう癖があることが分かりました。ここ数週間は、過去のプレゼンテーションの動画を見て通訳の練習をすることが多かったので、もっと初見の動画を使った通訳の練習を増やし、心に余裕がなくなりそうな状況でも落ち着いて訳す練習を重ねていきたいと思います。


・メインメッセージに集中しようとしすぎて訳が雑になっている(K)
今回の演習を振り返って感じたのは、メインメッセージのみを伝えようという気持ちがあだになって「ここの情報取れたでしょ!」と思うような箇所や、メインメッセージではなくても、訳した方が話の流れが綺麗になるようなところもバッサリ切ってしまっていたところでした。他の通訳者の訳と聞き返してみても、自分の訳の情報量が少なすぎると感じました。

例えば、バックエンドのプログラミング言語について紹介しているところで「これらのプログラミング言語の何が良いかというと、すべて学ぶ必要はないということです」をメインメッセージだと早読みしすぎ、この先に続く「なぜなら多くの共通点があるからです」というメインメッセージをすっぱり抜かしてしまっていたのです。

話者が「なぜなら」と言ってくださっていたにも関わらず、自分でメインメッセージを伝えきったと勘違いしたばかりに、全く話者の言葉が耳に入っていませんでした。結果、オーディエンスにとっても疑問が残るような訳出しをしてしまいました。自分の中で「メインメッセージ」=「どれだけメインメッセージ以外を端折れるか」になってしまい、情報を聞き取ることを無意識にやめていることが分かったので、通訳者を目指すものとして一番は質の高い訳出を心がけていかないと、と改めて思いました。また、自分の頭の中でメインメッセージが浮かんだとしても、その周りにある情報を聞き逃さないような集中力の維持と練習方法を心がけていきたいです。

・打ち合わせではいわれていないところは、頭の中で絵が描けなかった(F)
今回の話者はモノトーンで話す方だったので、私の耳にはすべての情報が同じ「粒」で入ってきました。そのため、情報価値の高いところとそうでないところを見極めることが非常に困難で、今回の演習は難易度が高かったです。また、IT分野はよく知らない分野なので、馴染みのない単語や話が出てきた瞬間、頭の中で絵が描けなくなるのを感じました(脳内が、一瞬でテレビの砂嵐になる感じ)。さらに、打ち合わせではなかったことが本番で追加されていたので、その部分ではすっかり動揺してしまい、つい、溜息を「フゥ…」と出してしまいました。「自分の得意分野に特化すべき」というベテラン通訳者の方のアドバイスの意味がわかりました。

・ベタ訳を読みあげるのに集中しすぎた(F)
事前打ち合わせで「ベタ訳を用意しておくと良いですよ」と発表者が教えてくれた箇所があったので、もちろんベタ訳を用意しました。ところが、本番でそれを読み上げているあいだ、耳が完全に留守になってしまいい、話者よりもずっと早く訳出してしまい、やむを得ず同じことを2度繰り返してしまうことがありました。

次回に向けての改善点

・今日の自分に出来る最高のパフォーマンスを目指す(K)
泣いても笑っても次回が最後の演習です。今まで学んだことをすべて出し切るパフォーマンスをします!と宣言したいところですが、今の自分に出来る範囲での最高のパフォーマンスを目指します。また、今回の演習では過去で一番間が多かったので、次回までに対策を取り、確実に無くしていきます。パートナーのFさん以外の同通演習も素晴らしいものばかりだったので、録音音源を聞いてみなさんの技をどんどん盗んでいきたいと思います!

・間を開けず、短いセンテンスで訳出する(F)
約10日後に同通演習の最終回を控えています。トピックは美術史で、先生から8分を命じられています。これまでずっと5分間だったので、3分延長は長く感じます。練習で出来ないことが本番で出来るわけがないので、事前練習を重ねて備えたいと思います。間を開けないことと、日本語なので冗長にならないように、短いセンテンスで訳出することを心掛けたいと思います。

KとFによる振り返りは以上になります。
同時通訳演習も残すところ2回となり、受講生がそれぞれいろんな思いを抱えて挑むことになると思います。せめて悔いのない演習になるように頑張ります!最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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