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私たちは世界を1つ失った…「ベルセルク」作者三浦建太郎先生のご冥福をお祈りします。

「ベルセルク」の作者 三浦建太郎先生が亡くなられた。

訃報が目に飛び込んできた時、思わず声をあげ、平衡感覚を失った。なんという喪失感だろうか。私たちはもうあの妖しくも美しい世界と強い煌めきを放つ愛すべきキャラクターたちこれ以上見ることができないのである。本当に無念でしかない。

私は「ロード・オブ・ザ・リング(指輪物語)」やら「ゲーム・オブ・スローンズ(氷と炎の歌)」やら、いわゆる「剣と魔法」系のファンタジーが大好きだ。高校の頃はマイケル・ムアコックなんかを読んでいた。

日本における「剣と魔法」系ファンタジーの代表作は2つだと思っている。

栗本薫先生による小説「グイン・サーガ」と、三浦建太郎先生による漫画「ベルセルク」だ。

「グイン・サーガ」は豹頭の戦士グインを主人公とする100巻を超える壮大なスケールのヒロイックファンタジーだが、栗本薫先生が56歳で逝去され、127巻で絶筆となった。(以降、五代ゆう先生、宵野ゆめ先生によって執筆が引き継がれた。)

そして、「ベルセルク」もまた三浦先生が54歳という若さで亡くなられ、その語り部を失ってしまった。日本の2大ファンタジーが「未完」となってしまうとは、いったいなんの因果だろうか?

「ベルセルク」との出会いは深夜に放送していたアニメだったと思う。何よりも衝撃を受けたのが「真紅のベヘリット」であった。別名「覇王の卵」これを手にすることでグリフィスは「ゴッドハンド」に転生するきっかけを得るのだが、その造形と音の響き、控えめに言って天才でしかない。ちなみに「グインサーガ」でイシュトヴァーンというキャラクターが生まれてきたときに「玉石」を握っていて、いつか王になる運命なんだという設定と少し似ているように思う。

三浦先生も「グイン・サーガ」に大きなリスペクトも持っておられたようなので、オマージュ的なものはいくつもあると思う。グリフィスは「グイン・サーガ」のアルド・ナリスとイシュトヴァーンが混じったような印象がある。

三浦先生の造形は「美しいものが美しく、醜いものが醜くて圧倒的に美しい」

グリフィスは美しく、ファルコニアも美しい。一方で、拷問で醜くなったグリフィスも、不死のゾッドも、ガニシュカ大帝も醜くて圧倒的に美しい。あんなものは三浦先生にしか創造し得ないだろう。

光の美しさと闇のおぞましさを描く天才。それが生命力の強いキャラクターたちを通して人間の深い業を描き、唯一無二の世界観を作り出した。

三浦先生は「ベルセルク」の世界を描くためにプライベートのほとんどを犠牲にされていたと聞く。尋常ではない書き込みの量は通常の漫画の比ではなく、その絵は連載を追うごとにそのクオリティーを上げていた。過酷な執筆生活が先生の命を縮めてしまったのかもしれない。

ここからはただの夢想として聞いてもらいたい。

傑作と言われるファンタジーに出会うと、いつも思う。この世界はきっとあるのだと。その作者はその世界に呼ばれ、実際に見たものを描いているに違いないと。 世界中で大ヒットした「ゲーム・オブ・スローンズ(氷と炎の歌)」もきっと原作者はあの世界を見ていると思う。しかも作者はそれを少し匂わせている。この世の物語を全て知る「三つ目の鴉」の存在である。

同様に三浦先生もきっとベルセルクの世界を見たのだ。そして、その壮大なサーガの語り手として選ばれたのだ。

もしかしたら、三浦先生はもう一度あの世界に見に行ったのではないだろうか? そして、もしかすると向こうの世界でサーガの語り部となったのかもしれない。こんな才能を元の世界に返すわけにはいかないと、向こうの神々が思ったとしても不思議はない。

私たちの世界とベルセルクの世界をつなぐ扉は閉じてしまったが、先生は今でもどこかで物語を描き続けていると、信じたい。

三浦先生お疲れ様でした。心よりご冥福をお祈りいたします。











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