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自律分散的に展開される遊び場の制作支援

関口 大樹(せきぐち だいき)

 子ども向けの遊び場は,近年安全性を重視するあまり,大人が遊び方を規定した遊具のみになってしまっている.これは子どもたちから,遊び方に対する創造性を奪っているのではないだろうか.関口さんは, 子どもたちの「やってみたい遊び方」を実現可能にする,身体スケールでリアルとバーチャルを往来可能な,デジタルツインの新しい形の遊び場の仕組みを開発した(図-1).遊び場は,間伐材を利用したオリジナルのジャングルジムのようなものを,イメージしていただきたい.

図-1 実環境と情報環境を往来可能な遊び場

 関口さんの開発した,デジタルツインの新しい遊び場は,4つの領域から構成される.部材となる間伐材の3Dスキャンおよび管理ツール(図-2),部材を利用した構造物の解析ツール(図-3),実環境との連携を実現するAR/MRツール(図-4), 構造体全体のスキャンとモデル復元のためのツールである. このほか, ワークショップで必要となる,遊び方を分かりやすく説明するための実践例なども成果物の重要な要素となっている.

図-2 部材スキャンツール
図-3 構造解析ツール
図-4 AR/MRツールと実践の流れ

 子どもたちはスキャンされた部材を使って情報空間で設計する(遊ぶ)こともできるし,実空間を情報空間に取り込んで部材の追加などを考える(遊ぶ)こともできるという仕組みである.情報空間では,構造計算なども行われるので,子どもたちが怪我をしないための強度チェックなども分かりやすく提示されている.

 実空間も情報空間も,ともに身体スケールであることがポイントである. ツリーハウスやハンモックをつくったりすることができるわけだが,自身の遊び場を作り上げる過程を楽しみ,また作ったあとの体験を楽しむこともできるのである.

 加えて注目すべきは,遊び方をつくり自ら遊んでみるというプロセスに,ローレンス・レッシグの言うアーキテクチャ,つまり環境管理型制約をデジタルのプロセスで組み込み実装したことである.子どもたち自身がデジタル環境とのインタラクションを自然な形で活用して,新しい遊び方を自ら考えられることは,デジタル時代の創造性と安全性の両立に新しい可能性を提示している.

 関口さんは,都内で認証保育園を運営する家庭で育ち,子どもの遊び場や社会の仕組みなどに強い関心があったことについて触れておきたい.まさにこのプロジェクトは,そのような背景とパッションを持ち,建築とデジタルを学んだ関口さんだからこそ実現できたプロジェクトだと考える.

 現在は,子どものための空間設計で有名な設計事務所に就職を決め,さらなる高みを目指している.本プロジェクトで彼が提示してくれたように,デジタルを活用した設計・建築の未来を,新たに切り開いてくれると信じている.(藤井彰人PM担当)

[関連URL]
https://www.youtube.com/watch?v=HgyQnrx9kwY

[統括PM追記] 関口君は本当にアーティストだった.アーティスト特有(?)のとても小さい文字の,しかしレイアウトに美的センスがつまった発表スライドを見るのには本当に苦労させられた.それと裏腹に(?),子どもたちを見る目はやさしさに満ち溢れたものだった.フィールドワークで子どもたち,その親たちと間伐材を組み上げていくのは,そのやさしさなくてはなかなか難しかったと思う.子どもたちに彼の難しい構造計算の画面がどのように提示されていたのか,実は私にはよく分かっていないが,きっと素晴らしい尊敬の眼差しを浴びたのではなかろうか.
 この運動が全国的に再生可能なものとして展開され,たくさんの子どもたちが生き生きと自分たちの遊び場を作リ,それを遊び尽くす喜びを味わえるようになることを期待したい.

(2022年6月30日受付)
(2022年8月15日note公開)