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子どもの目が輝く,数学プログラミング

竹内

竹内 薫
YES International School 校長

 小さなインターナショナルスクールを運営しています.もともと「娘を安心して預けられる学校がない」という理由で始めた学校です.いわゆる一条校ではなくフリースクールです.

 力を入れて教えている科目は2つ.グローバル人材の育成という意味での英語と,第四次産業革命後の世界で生き残るための数学プログラミングです.

 私が担当している数学プログラミングでは,学齢でいうと小学4年生〜中学2年生を教えています.世にたくさんあるプログラミング塾とちがう点は,(将来学ぶであろう)高等数学を念頭に授業をしている点かと思います.

 ウチの学校では,低学年のうちは,ScratchJrでブロックをつなげて遊んでもらい,とにかく,プログラミングが楽しいと実感してもらうことを目指しています.そして,4年生までに,ゲームをしながら英文タイプの練習をし,ブラインドタッチで命令を打ち込めるようになってもらいます.

 そこからが本格的なプログラミングのスタートです.現在,主流のプログラミング言語といえば,Pythonを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか.あるいは,ScratchJrからScratchへと進む手もあると思います.ウチの学校では両言語とも触れる機会がありますが,私の授業では,主にWolfram言語(Mathematica)を使っています.数学との相性がすこぶる良いからです.

 いまは,無料でインターネット上のWolfram Cloudにつないで授業をしています.私だけ有料サービスのWolfram|Oneに加入し,デスクトップでも作業ができるようにしていますが,生徒たちは,授業が始まるとネットにつないでログインします.

 基本的な約束を学んだ後,生徒には,毎回,15分ほどで挑戦できる,やさしい数学の課題を与えます.方程式を解いてみたり,モンテカルロ法で円周率をシミュレーションしたり,新型コロナウイルスの感染者数のグラフを(指数関数を用いて)描いてもらったり.残りの30分は自習です.私が選んだ2冊の教科書のページをめくりながら,映像をいじってみたり,音楽を作成したり,もう,なんでもありです.

 子どもたちは,最初の15分間は,文句を言いながら授業に参加していますが,後半の30分が,待ち遠しくて仕方ないようです.ちょっと言葉では表現できないような食いつきぶりに驚かされます.私も知らないような命令を探してきては,実験を繰り返して遊んでいます.

 先週は,ちょっと趣向を変え,ルービックキューブを用いてアルゴリズムの授業をやりました.数学解説の15分が過ぎると,生徒たちはルービックキューブの早回しを始めました.1週間練習しただけで,完成まで1分を切る生徒が出てきて,先生である私もたじたじです.

 楽しいプログラミング授業に数学のスパイスをきかせる.楽しいプログラミング授業から,将来,国のディジタル産業を背負って立つような人材が出現してほしい.それが,私のささやかな願いです.

(「情報処理」2021年2月号掲載)

■ 竹内 薫
1960年東京生まれ.東京大学教養学部教養学科,理学部物理学科卒業.マギル大学大学院博士課程修了(高エネルギー物理学,Ph.D.).猫好きサイエンス作家.趣味はカポエイラ,ロードバイク,ルービックキューブ.