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デジタル庁発足;「DX」から「デジ道」へ

平井

平井 卓也
デジタル改革担当大臣

 2021年9月1日,デジタル庁が発足します.デジタル改革は,従来の縦割り行政の弊害や,前例主義を打破する象徴として,菅政権の重要事項であり,昨年(2020年)9月の大臣就任以来スピード感を持って取り組んできました.わずか1年で新たな行政組織を創設するというのは霞が関にとって異例のことですが,激変する時代にはこのような前例のない取組みが必要です.

 デジタル庁は,誰もがデジタル化の利便性を実感できる,誰一人取り残さない,人に優しいデジタル社会を実現するために,国だけでなく地方や民間・準公共分野も含めた社会全体のデジタル化を牽引する司令塔です.徹底した国民目線に立ちながら,行政サービスを抜本的に向上させていくため,デジタル庁がデジタル改革の司令塔としての機能を発揮し,成長戦略の柱を担ってまいります.

 今は100年に一度の大変革期です.変革期を前にたじろぐ方もいますが,チャンスを感じて燃えている方もいると思います.国民の意識が変わらないと日本は変わりません.デジタル化によりとてつもなく便利になることを目の当たりにした国民が,変革に乗り気になることを目指します.デジタル庁は単に行政手続を便利にすればよいわけではなく,大変革期の旗振り役をやりたいと考えています.

 これからのデジタル社会の形成にあたって,先に述べたとおり,デジタル庁は「誰一人取り残さない」「人に優しいデジタル化」を旨として進めていきますが,それではなぜ「誰一人取り残さない」という強い想いを掲げているのか.たとえば,アメリカや中国等ではものすごいスピードでデジタル化が進んでいますが,そこでは一部の人たちがとてつもなく先行し,大きな貧富の格差や機会の格差を作っています.一方で,どこよりも進んだ高齢社会であり,1億2千万人以上の方々が住んでいる日本においては,高齢化と日本国土固有の災害等の問題を乗り越えてこそデジタル化の意味があると考えています.だからこそ「誰一人取り残さない」と掲げているのです.

 そこで,社会全体でデジタルを思い出す・感じる定期的な機会として,「デジタルの日」を創設します.官民で連携し,デジタル関連の技術・サービスを利用した祝祭を実施し,定期的にデジタルについて振り返り,体験し,見直し,共有し合える日としたいと思います.今年(2021年)は,デジタル庁創設の1カ月後である10月10日・11日の2日間です.情報処理学会および会員の皆さまには,この機会にイベント企画等を通じて,共に「デジタルの日」を盛り上げてもらいたいと期待しています.

 最後に,「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉が最近流行っています.要は「デジタル化によって生活や職場環境を良くしたりビジネスの構造を改革しよう」ということですが,どうしてもただのバズワードみたいに聞こえてしまいます.そこで,今は「デジ道」という言葉を使っていきたいと考えています.剣道や柔道などの「道」と同じニュアンスです.デジタルによって人助けをする「道」,デジ道! 情報処理学会および会員の皆さまとも,人助けの喜びみたいなものを「デジ道」として共感できればありがたいと感じています.

(「情報処理」2021年10月号掲載)

■ 平井 卓也
1958年香川県生まれ.上智大学外国語学部卒業.電通,西日本放送社長を経て,2000年衆議院議員初当選.以来,連続7回当選.2018年にIT・科学技術政策担当大臣,2019年に自民党デジタル社会推進特別委員長に就任.2020年菅内閣の発足により,デジタル改革担当大臣に就任.

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