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筋トレを全自動で記録するMuscle Supporter

山本 恒輔(やまもと こうすけ)
下島 銀士(しもじま ぎんし)
海老原 裕輔(えびはら ゆうすけ)

 スポーツ・スタイル改善・健康維持・ストレス解消など,多くの人がさまざまな目的で筋トレを行っている.筋トレを継続し,筋トレの効果を高めるためには活動内容の記録が非常に有効であるが,筋トレをしながら筋トレ内容を記録するには手間がかかるため,詳細・継続的な記録は困難である.

 山本君,下島君,海老原君は,筋トレを全自動で記録できるiOS・WatchOS 向けアプリとそれらを支えるシステム「Muscle Supporter」を開発した(図-1).これは,iPhone とApple Watch それぞれのモーションセンサの時系列データから筋トレ種目を自動で判別し,記録できるというものである.本システムの開発においては,既存の筋トレ記録アプリにない特徴として記録の簡便さを追求した.結果,本システムで筋トレの記録を開始するのに必要なのはたった1タップのみにまですることができた.ユーザはまず1タップし,後は自分の筋トレをしているだけでそのすべてが記録できる.記録開始だけではなく,取得したデータの閲覧や記録の修正などといった操作も改善を重ね,UX を損なわないよう開発を行った.機械学習については継続的改善ができるシステムを組んでおり,ユーザが増えるほどより精度高く判別が行えるようになっている.

図-1 1タップで開始したあとは筋力トレを全自動で記録できる

 筋トレ愛好家の夢,筋トレ種目ごとの回数の自動記録を実現した.特別な器具は不要で,手近にあるスマホとスマートウォッチだけでいい.それこそ,歩数,ランニングや水泳の距離など測定しやすい項目であれば,数多の商品がある.しかし,自重トレーニング愛好家は,腹筋とスクワットそれぞれの回数を記録したいのである.これを叶えた(図-2).

図-2 Muscle Supporterの2つの自動化と2つの特徴

 そのためには,筋トレの種目を判別し,その上で,回数をカウントする必要がある.加速度センサからの値を元に判別・カウントする方式を研究し,判別はCNN,カウントは筋トレ種別によってCNN,またはルールベースの方法を用いることとした.加えて,利用者による判別・カウントの修正を元に機械学習モデルを改善する仕組みも組み込んだ.スマホアプリの使い勝手にもこだわり,ごく少ない操作で記録や修正ができるようにした.成果物の展示やリリースも行った.
 
 3人とも,開発期間を通じて,面白い,いい成果を出そう,見せよう,と突っ走った.海老原君は主にバックエンド(Web側)の開発,下島君は主にスマホ・スマートウォッチのアプリ開発,山本君は主に判別・カウントの開発をそれぞれ担当した.

 未踏期間ではアプリのリリースを行ったが,その後数人のユーザに使ってもらい,問題点を洗い出した.期間内にリリースしたアプリは,実際に使ってもらうと問題点が複数見つかった.開発を一時休止しつつも,今後の発展の方向としてはジムマシンのウェイト記録の対応や自動判別対象の拡充などを考えている.(首藤一幸PM担当)

[関連URL]
https://www.muscle-supporter.com/
https://ebiyuu.com/

[統括PM追記] 最近妙に筋トレや運動関連の提案が多い.コロナと関係あるのだろうか?また,東大はいつから「筋トレ大学」になったのかという声も出ているくらいだ.しかし,話を聞いてみると筋トレは予想外に奥深い.正しい筋トレを行うのが意外に難しいし,それ以前に飽きないで続けるのが難しいらしい.
 「筋トレ以外に頭を使わない」もキャッチーだが,「開発していて気がついたら筋肉痛」という山本君をはじめ,妙に楽しい3人組だった.成果報告会のビデオを見たら,きっと微笑んでしまうだろう.当初の計画からは割りと大きくピボットしたが,むしろいいシステムに仕上がった.プロジェクト期間中にMuscle Supporterのロゴができあがったが,これが秀逸.どう見ても筋トレと分かるデザインだが,筋肉痛まで表現している?(図-3).

図-3 Muscle Supporterのロゴ

(2022年6月30日受付)
(2022年8月15日note公開)