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一風堂3店舗の期間限定メニューは、 麺がないラーメン?

ラーメン店である一風堂が豆腐の老舗「豆藤(まめふじ)」とタッグを組み、2016年3月から一ヶ月間、期間・店舗限定のコラボレーションメニューを提供したところ、全国で大きな反響を呼びました。同じ福岡県をルーツとする者同士が共同開発した商品、それは豚骨スープに麺ではなく豆腐を入れた「白丸とんこつ百年豆腐」。ユーモアあふれる変化球メニューはどのような経緯から生まれたのでしょう。そこには遊び心だけでなく、たしかなロジックが存在していました。

WORDS by SHOTA KATO (OVER THE MOUNTAIN)

一風堂と豆腐の老舗の遊び心あふれるコラボレーション

こんにちは、IPPUDO OUTSIDE編集部の加藤です。メロンに生ハム、メロンにはちみつ、世の中意外な組み合わせがなかなかイイね!的なこと、ありますよね。今回はそんなイイね!なお話。

2016年3月1日から一ヶ月間、一風堂銀座店、恵比寿店、薬院店の3店舗にて、新商品が仲間入りしました。その限定メニューが「白丸とんこつ百年豆腐」。「白丸元味」のスープに、麺ではなく豆腐を入れた、なんとも風変わりな商品です。豆腐は福岡県八女市で大正10年に創業し、まもなく100周年を迎えようという老舗の豆藤(加藤豆腐)によるもの。

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今年で創業95年を迎える豆藤は当初、卸を中心に豆腐を取り扱っていましたが、平成10年に福岡市内に直営店をオープン。6年前には豆腐のスイーツショップもスタートさせました。

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他にも厚揚げ4兄弟、豆腐プリン、燻製豆腐などオリジナル商品で開発するなど、とにかくいつも “豆腐でおもしろいことをやろう” と企んでいる豆腐屋さんなのです。もうじき創業100周年を迎える老舗ですが、長年培ってきた伝統に頼ることなく常に革新しようとするスタンスは、「変わらないために変わり続ける」を掲げる一風堂と同じ。そんな似た者同士のコラボレーションは、一体どのようにして始まったのでしょう。豆藤4代目の加藤信介さんにその誕生秘話を聞いてみました。

「昨年11月に行われた福岡ラーメンショーに豆藤も出店していたんです。もともと一風堂創業者の河原さんとは面識があって、そのときに久しぶりにお会いできたんですね。河原さんに『今度、ウチの直火豆腐という難しい技術で作る、美味い豆腐を食べてください』と話したら、「じゃあ今度、テストキッチンに持ってきてよ!」と声をかけてくださって」

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福岡ラーメンショーで、豆藤はラーメンの余ったスープに豆腐を入れる「替え豆腐」というサービスを提供したところ、これがなかなか美味しいと好評。後日、加藤さんは一風堂の商品試作中の場に、自慢の豆腐を持ち込み、豚骨スープの中に豆腐を入れて試食してみたのです。「これは美味いぞ!」と現場は盛り上がり、具体的に一風堂で商品化していく運びとなりました。つまり「白丸とんこつ百年豆腐」は、豆藤の「替え豆腐」が進化したものだったのです。加藤さんは試作の現場を唸らせた「白丸とんこつ百年豆腐」の特徴について、次のように語ってくれました。

「『白丸とんこつ百年豆腐』は豆腐の製造段階から一風堂の豚骨スープを使っています。実は豆腐と豚骨って相性がいいんですよ。豆腐はアルカリ性、豚骨は酸性でちょうど中和されて、口の中でまろやかに溶けるんです。白丸の新しい楽しみ方として、一風堂のお客さんに楽しんでもらえたのはうれしかったですね」

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ちなみに「白丸とんこつ百年豆腐」に使われたのは、豆藤のよせ豆腐。飲んだ後の〆はもちろん、半替玉 or ごはんセットをオーダーできて、即席で豆腐入りの雑炊としても楽しめました。(この雑炊、絶品です!)

麺を豆腐に替えただけに見えて、実は科学的にも裏付けられた美味しさのコラボレーション。しっかりとしたロジックに裏付けられた背景が生み出すその味わいを体感すれば、納得すること間違いなし。ラーメン食べたいけど、炭水化物とか糖質とか気になるわよね!というそこのあなたにもうってつけの逸品です。ラーメンと豆腐、お互いの生業で意外な取り組みをする一風堂と豆藤。両者の自由で柔軟な発想から生まれた「白丸とんこつ百年豆腐」をまた味わえる日を願ってやみません。

WORDS by SHOTA KATO
加藤将太 / OVER THE MOUNTAIN
IPPUDO OUTSIDE 編集担当。1981年、山梨県生まれ。紙・ウェブ媒体の企画・編集・文章執筆からイベント・番組の司会進行まで幅広く担当。2011年3月にウェブマガジンCONTRASTの立ち上げに携わり、2013年7月より世田谷は松陰神社商店街のシェアオフィスを活動拠点とする。2014年10月には自営業の屋号として「OVER THE MOUNTAIN」を開設。今日も明日もこれからも「ひと山を越え続ける」。

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