明けましたが2023年下半期映画ランキング& #2023年映画ベスト10

2023年下半期映画ランキング

  1. 哀れなるものたち(※先行試写済み)

  2. バービー

  3. グランツーリスモ

  4. ウィッシュ

  5. ミッションインポッシブル デッドレコニング Part.1

  6. マーベルズ

  7. ジョンウィック コンセクエンス

  8. ナポレオン

  9. ウォンカとチョコレート工場のはじまり

  10. 君たちどう生きるか

順位ごとの感想


1位:哀れなるものたち
(※先行試写済み)

アカデミー賞を受賞した前作から約4年、正統進化を遂げたCGアニメーションと数々の世界に存在するスパイダーマンたちのアイデンティティーを描いた珠玉の一作。全3作の2作目にあたり、完結編「ビヨンドザ〜」は来年3月公開予定。

スパイダーマンとして活動する高校生のマイルスは前作で共に戦ったグウェンとの再会をきっかけにスパイダーマンたちが集うスパイダーソサエティにたどり着く。
マイルスはそこでスパイダーマンにとって受け入れなければならない運命を知り、彼の世界に待ち受ける未来、そして自身の真実と直面する…。

主人公マイルスの葛藤やもう一人の主人公グウェンの苦悩を軸に、前作の出来事が今作の中心につながるシナリオや「そういうことか…」と思わず納得させられる展開に胸を打たれる。
どんな世界のどんな姿のスパイダーマンでもお約束の定番がある、という不文律からの脱却こそ本作の重要な意義だと思う。


2位:バービー

実質1位と遜色なしで甲乙つけ難かったのでアニメ部門と実写部門で分けたなら堂々の1位。(なんで差がついたかについては明確なポイントがあるけど作品自体の評価が割れるほどでもない)

作品自体も描かれるべきテーマをしっかり捉えた素晴らしい内容だったし、ガーディアンズみんながそれぞれ活躍して誰一人として不要な存在なんていないと改めて実感させられたし、そこに交わる新キャラたちも魅力的で(アダムウォーロック最高!)、やはりジェームズガンにしか出来ない最新作であり完結作だった。

この映画が作られなかったかもしれない危機を乗り越えたことも含めてまさに綺麗な大団円を迎えた本作の意義も評価されてほしい。


3位:グランツーリスモ

「ドライブマイカー」の三浦透子が主演および主題歌を務め、前田敦子や伊藤万理華、坂井真紀など豪華キャストによるアセクシュアル・アロマンティックを題材にしたヒューマンドラマ。

主人公の蘇畑香純は音大を経てチェリストになる夢を諦め、実家で結婚を急かす母親や妊娠中の妹など家族と過ごしていく中で「他人に恋愛感情・性欲を抱かない」という自身の気持ちを見つめ、生きづらい世の中と向き合っていく。

脚本:アサダアツシ、助監督:平波亘、ロゴデザイン:Iyo Yamaura と今泉力哉作品にお馴染みのスタッフだったり、作品自体も人間模様が重なり合う群像劇としてとても好きなストーリーだった。自分自身も30歳目前で、性的指向や性自認に対する悩みや恋愛に対するなんとも言えない思いに深く突き刺さった。


4位:ウィッシュ

「ドロステのはてで僕ら」に続くヨーロッパ企画の長編映画第2作は、冬の京都・貴船で2分間のタイムループから抜け出せなくなったすこし不思議なSF映画。

2分って短いようで長くそれがループされると観客も疲れてくる中、飽きないように毎回展開に変化を付け、時には揉め事から愛の逃避行までありながらクライマックスまで気持ちよく駆け抜けていった。

友情出演の久保ちゃんが演じる謎の美女ヒサメ役は存在ごとネタバレ。秋冬ごろに貴船神社に行きたくなり、エンディングに流れる「くるり/Smile」も良かった。


5位:ミッションインポッシブル デッドレコニング Part.1

1980年代のバスケットシューズ市場で大逆転する為にNIKEと当時新人のマイケルジョーダンがライセンス契約を取り交わし、あの「エアジョーダン」を発売するに至った誕生秘話。

1984年、CONVERSEとadidasに大きくシェアを離されていたNIKEバスケットボール部門のソニーが目をつけたのは、当時NBAデビュー前の新人だったマイケルジョーダンだった。しかしジョーダンがNIKE嫌いを公言する逆風の中で、ソニーは千載一遇のチャンスを掴もうとする…。

「オーシャンズ11」マットデイモン主演、みずからも出演する「アルゴ」ベンアフレック監督の盟友同士といえば「グッドウィルハンティング」や「最後の決闘裁判」でもおなじみ。
本編の肝となる、主人公ソニーのジョーダンへの規格外かつ心を打つプレゼンは印象的だった。


6位:マーベルズ

アカデミー賞で8部門9ノミネートを果たした本作は、人の死を予告するアイルランドの精霊バンシーをモチーフに、「スリービルボード」マーティンマクドナー監督、コリンファレル、「ハリーポッター」ムーディ役のブレンダングリーソン、バリーコーガンなど出演。

1923年アイルランドの小さな孤島で暮らす主人公はある日、長年の友人から突然の絶縁を告げられる。訳も分からない主人公は理由を問いただすものの「自分に残されたわずかな時間を無駄にしたくない」と頑なに拒絶され、これ以上話しかけるなら自分の指を切り落とすとまで脅されてしまう…。

なんてことないスレ違いが気付けば取り返しのつかない所まで悪化してしまう。恋人同士では諦めがついても友人同士ではそうはいかず、誰にでも起きうることは尺度を広げれば世界で起きていることにも重なる。本作のその皮肉と、それでも最後に残るものが何かを届けたかったんだと感じた。


7位:ジョンウィック コンセクエンス

ダニエルラドクリフが死体役で話題の「スイスアーミーマン」ダニエルズ監督と「アベンジャーズ エンドゲーム」ルッソ兄弟のプロデュースによる本作は、「クレイジーリッチ!」ミシェルヨー「インディジョーンズ魔宮の伝説」キーホイクァンが出演。

破産寸前のコインランドリーを経営している主人公エヴリンはある日、確定申告に向かう途中に夫ウェイモンドから"自分はマルチバース(並行世界)から来たウェイモンド自身であり世界を救えるのはこの世界のエヴリンしかいないから戦ってほしい"と告げられ、指示に従いマルチバースに飛び込んでいく…。

奇しくもルッソ兄弟が携わっていたMCUで目下進めているマルチバース展開を1作にまとめ、登場人物みんなが"そうなる可能性のあった自分たち"の力を借りて世界を救うスペクタクル作品にまとめている点は素直に驚き。映画自体も現実世界のマルチバースであり、無限の可能性を秘めているのだと感じた。


8位:ナポレオン

20年前の夏休みに父親と娘がトルコ旅行へ行った様子を撮影したビデオを、現在の娘があらためて再生して当時を思い出す作品。アカデミー賞主演男優賞ノミネートのポールメスカル、新人フランキーコリオの自然体な親子を描く演技も見どころだった。

11歳のソフィは別居していた31歳の父カラムと夏休みでトルコへ旅行に来た。プールで遊んで日焼け後(アフターサン)クリームを塗ったり、他の旅行客に影響されて大人ぶったり、ひと夏の淡い思い出は空港での見送りで締めくくられた。
20年後、ソフィは当時撮影していたビデオを再生して回顧する…。

大好きな「SOMEWHERE」を彷彿とさせる構成ながら、今作は決して語られない要素が多く難解な印象を持たれるものの「幼少期の思い出を振り返ったとき大人になって、親になって初めて気付くこと」を散りばめた、観た人ごとに感想を持つ映画だと感じた。Queen&David Bowie「Under Plessure」の使い方…!


9位:ウォンカとチョコレート工場のはじまり

ロッキーから繋がるシリーズ最新作は主演マイケルBジョーダンが自ら監督も務め、宿敵であり少年時代からの親友として「アントマン&ワスプ クアントマニア 」ジョナサンメジャースが出演という"キルモンガーvsカーン"が実現。(シルベスタースタローンはクレジットのみ)

ボクシングヘビー級チャンピオンとして輝かしいキャリアに幕を閉じ、幸せな家庭を築いていたアドニスの前に現れたのは、出所上がりの幼馴染デイムだった。少年時代デイムはロサンゼルス代表のボクサーだったことからアドニスのジムに通い始めるものの不穏な空気が流れ始める…。

前作まで父アポロや恩師ロッキーの過去を清算してきたが、本作はアドニス自身の過去と向き合う姿が、負け犬人生から栄光を掴んだアドニスに対して屈折した思いを抱えるデイムのコントラストによって「ブラックパンサー」のティ=チャラとキルモンガーをも彷彿させる。


10位:君たちはどう生きるか

女性指揮者(マエストロ)リディア・ターの栄華と失墜を描く2時間半強の本作は、ケイトブランシェットの圧倒的演技を以って本作の説得力を持たせる。アシスタント役の「燃ゆる女の肖像」「パリ13区」ノエミメルランなど俳優陣も重厚かつ繊細な演技で厚みを持たせる。作曲は自身もチェリストでもあり「ジョーカー」のヒドゥルグドナドッティル。

女性初のベルリンフィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者であるリディアは、誰にも物言わせぬその権力で若い女性音楽家へのハラスメントなど行なってきていた。
ある日リディアを告発する批判が出てきたことにより周囲の反応も一気に変化し、一転キャリアの危機に直面することに…。

オーケストラが題材のサイコホラーとして冒頭からエンディングまでじわじわと追い詰めていく様相は観客をも巻き込み、劇中の小さな音も現実かと敏感になる。「セッション」のフレッチャー教授視点のような捉え方も。