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ひつじサミット尾州2022前夜祭 ①Z世代から見るひつじサミット尾州

※written by 三星毛糸株式会社 未来創造室 杉山修治さん

ひつじサミット尾州では、「Z世代」(現在、大学や専門学校に通う世代)の若者たちにもウールの持続可能性や尾州産地の魅力を知ってもらう為に、大学生のインターンシップ「Z世代アンバサダー」を導入するとともに、学生が店舗経営を通じて経営や商売を学ぶ地域産品セレクトショップ「アナザー・ジャパン」とも連携しました。
前夜祭セッション1では、Z世代とひつじサミット尾州について触れていきます。

◆目次
・Z世代から見るひつじサミット尾州
・ひつじサミット尾州と尾州産地についての質疑応答
・登壇者からのメッセージ
・終わりに


◆Z世代から見るひつじサミット尾州

このセッションでは、ひつじサミット尾州のZ世代アンバサダー(インターン)の石田ろみさん、そして中川政七商店 会長の中川政七さんとアナザー・ジャパンで中部地方を担当している佐々春奈さんにひつじサミット尾州に携わってきた感想を語っていただきました。

まずは「ひつじサミット尾州Z世代アンバサダー」6名の中から選ばれた石田さんの声をピックアップします。


半年間アンバサダーとしてさまざまな活動をし、このイベントに参加してきた石田さん。
インターン期間中様々な会社を見て回り、体験してきた中で「ここが一番だった」という所は決められなかったと言います。

(石田さん)
例えばニッケ(日本毛織株式会社)さんでは長年の歴史がつまった生地やリボンが詰まった部屋を見せてもらい、色を生み出す役職の人と話しができました。
高校生、大学生ではいわゆる「工場見学」をする機会もあまり無く、貴重な体験が出来たと思います。

また、夏には三星毛糸ではReBirth WOOLプロジェクトのイベントに参加しました。
このプロジェクトはウール製品をワタに戻し、糸にすることでまた新たな製品に生まれ変わらせるものです。
このイベントでは山のように積まれたウールの衣服をウールの混率、色などで分別し、ワタに戻すことができない縫い糸やボタンなどのパーツを分解していきました。
小学生の子どもから大人まで沢山の人が家族で楽しめるイベントだったと思います。

他にも事前の体験を通じて、地域で産業を支えている様子を知ることができました。
「ここが一番いい」という所は無くどこに行っても楽しめるので、ぜひ当日は足を運んでみてください。

続いては、「アナザー・ジャパン」アナザー・チュウブ代表の佐々さんの声をピックアップ。


アナザー・ジャパンとは、「学生が本気で商売を学び実践する、47都道府県地域産品セレクトショップ」。
地域ごとのものづくりが楽しめる、東京駅前のショップ&カフェです。
北海道&東北、関東、近畿、中部、中国&四国、九州の6つに分けて、2ヶ月ごとに特集地域が入れ替わり、佐々さんは中部を担当する「アナザー・チュウブ」を代表して登壇してくれました。
ひつじサミット尾州に携わる中で、特に印象に残る新しい体験があったそうです。

(佐々さん)
これまでウールというと防寒具、冬に着る素材だというイメージを持っていました。
2022年夏ごろに尾州産地を見学する機会があり、その体験の中で「ウールとは夏は涼しく、冬は温かい素材」だと知り、驚きました。
蓄熱機能で冬に暖かい事はもちろんなのですが、空気を通しやすく吸湿機能も高い事から夏場もサラッとした肌触りをキープでき、涼しく快適に着られることを知りました。
自分の中にある固定観念がいい意味で壊れて、新しい知見を得る事が出来たと思います。

実際に産地にまで足を運ばなければわからないことがあり、直接見る事でそれまで常識だと思っていた事に対して新しい気づきを得る事が出来るのではないでしょうか。
このひつじサミット尾州は、そうした魅力があるのだと思いました。

若い世代の2人が尾州に触れて感じた思いを聞いたのは、アナザー・ジャパンを運営する株式会社中川政七商店 会長の中川さん。尾州産地に来るのは初めてなのですが…と前置きしつつ、1つの事例をもとにお話しをしてくれました。


(中川さん)
ものづくりの現場を見るという事は、小学校の社会見学以来という方も多いのではないでしょうか。
その当時にものづくりを見て感じる事と、今見て感じる事は違うんだろうなと思います。
佐々さん、石田さんのような「社会に出る直前」の方がものづくりの現場を見て、自分のやりたい事や関わり方を考えられる。
この取り組みはとても意義のある事だと思います。

私は全国の産地で工芸の活性化のお手伝いをしていますが、焼き物の産地である長崎県の波佐見町で、地元の企業が地域に公園を作ったんです。どうして公園を作ったのか聞いたところ、「この地域に住んでいる大人の中には、焼き物に対して良いイメージを持っていない人もいる。一方、これからの若い人たちにはその認識が無い。だから、若い人たち全員に良いイメージをもってもらいたい。地域に楽しい公園があり、それを焼き物の会社が作ったことを知ったら、焼き物の会社に憧れの気持ちを持ってもらえるんじゃないか」と言うんです。

ひつじサミットには、こうした気持ちと共通するものを感じました。生産者が若者に良いイメージを持ってもらい、憧れの存在にならないと産地の未来はないと感じます。


◆ひつじサミット尾州と尾州産地についての質疑応答


トークセッションが終わったところで、会場から3人に対しての質問が続々と。
ひつじサミット尾州についての質問からはじまり、尾州産地をさらに盛り上げるためには?という内容にシフトしていきます。
簡単に抜粋してみましたので、ぜひご一読ください。

Q1. → 佐々さん、石田さんに
「若い人が、尾州や繊維産業に携わりたいと感じるポイントは?」

(佐々さん)
私の場合、最初の窓口は製品だと思う。
作られた製品を見てそれに対する作り手の想いや話を知ることが、どういった仕事に携わりたいかを考える時に重視している事。
「なぜその製品なのか」を知ることができる機会がたくさんあることで、携わるきっかけの一つになるのでは。

(石田さん)
若い人は、ファッション関連に興味を持っている人が多いと思う。
「工場=硬い」というイメージはついて回っているので、例えばその工場で作られた布を使った服を着てモデルをしてもらう、インスタグラムを投稿してもらう等若者が得意な事に対して協力してもらう事で、ファッション関連が好きな人なら仕事の選択肢の一つになりそう。

Q2. → 中川さんに
尾州のこれからのために、一宮で何をやっているのかを発信していくとよいのか?

(中川さん)
産地全体で産地を売っていく。その取り組みは大切だが、「一番星」を作るのも大切。
例えば燕三条で言えばSnowPeakさんがあるように、産地を代表する1社が大きく伸びる事で、他も押しあげられていくと考えている。
産地全体で産地を売る、各社が切磋琢磨して成長していく。両軸あるのが良い。

Q3. → 中川さんに
一宮、尾張、尾州と表現が分散している弱点がある。
若い人に尾州を伝えていきたいが、食べ物に「尾州」と名づける戦略はどうだろうか?

(中川さん)
食べ物から、という線はとても強いと思う。

産地イベントを開催しても、ものづくりが見える事にプラスアルファ何かないと人の足は動かない。
例えば「名古屋の認識が強いモーニングは、実は発祥の地が一宮だった」というような歴史のようなストーリーを繋げる事で産地の魅力は上がっていく。
作り手はどうしても「ものづくり」にフォーカスしがちだが、魅力はすべて合わせて土地の魅力。
今回飲食店も参加しているように「総合力」で戦うという事はとても良いと思う。


◆登壇者からのメッセージ


トークセッションの最後に、登壇者の皆さんにひつじサミット尾州についてのコメントをいただきました。

(佐々さん)
ひつじサミット尾州をきっかけに「尾州産地」を巡って感じた発見も、12月7日~2月5日開催のアナザー・チュウブで伝えて行きたいと思います。
尾州を筆頭に東海は天然繊維が有名なので、繊維でカテゴリを作るという形も検討しています。
実際にお店に来てからのお楽しみになりますので、ぜひアナザー・ジャパンにも遊びに来てください。

(中川さん)
産地に足を運んで「ものづくり」以外の文化を体験する事は、何事にも代えがたい物だと思います。
ひつじサミット尾州は、その土地の人が当たり前に思っていることが、外から見ると面白かったり興味深いという事を体験するにもとても良いイベントです。
多くの方に足を運んでもらえたらと思います。

(石田さん)
ひつじサミット尾州開催日の2日間で終わる事の無いインターンにしていきたいです。
イベントに参加するだけで終わらず、東京などの若者に尾州へ足を運んでもらえるような情報発信の活動を今後も続けていきたいと思います。
アンバサダーには、100枚の名刺を使って友達を100人作るというチャレンジもあるのですが、実はまだ20枚ほど残っています。このイベントを通じてぜひ、目標を達成したいと思っています。


◆終わりに

着れる、食べれる、楽しめる! ひつじと紡ぐサステナブル・エンターテイメント、「ひつじサミット尾州」。
2021年に尾州一帯を巻き込んで始まったこの産業観光イベントは、2023年も10月28日(土)29日(日)の2日間で開催を予定しています。

・今年はどんな工場が見学できるのか?
・次回の見どころは?
・前夜祭後夜祭は今年も開催する?

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