見出し画像

ひつじサミット尾州2022前夜祭 ③三市長が語る「オープンファクトリーとシビックプライド」

※written by 三星毛糸株式会社 未来創造室 杉山修治さん

地場産業の工場見学などオープンファクトリーによる地域活性化に取り組んでいる地域は全国で40カ所以上あると言われています。ひつじサミット尾州でも、工場見学で尾州の繊維産業について多くの人に知ってもらいました。こうした取り組みを、地元住民のシビックプライドにつなげていくこともサミットの目的です。

最後のセッションでは、「オープンファクトリーとシビックプライド」と題して、地域の活性化とシビックプライドの関わりについて、一宮市の中野正康市長と津島市の日比一昭市長、羽島市の松井聡市長に語っていただきました。モデレーターは三星グループ代表の岩田真吾さんが務めます。

◆目次
・オープンファクトリーとシビックプライド
・会場からあふれ出たシビックプライドへの想い
・歴史から見た尾州
・終わりに


◆オープンファクトリーとシビックプライド

・オープンファクトリーとは?
ものづくり企業が生産現場を外部に公開したり、来場者にものづくりを体験してもらう取り組みです。
従来から工場見学などで実施されてきましたが、近年では一企業に止まらず産地全体で協力して同時開催する形態(産業観光、クラフトツーリズム)が増えてきました。
このような取り組みを行っている地域は、全国で40箇所ほどあります。

・シビックプライドとは?
「都市に対する市民の誇り」という概念です。
郷土愛と似ていますが、単に地域に対する愛着のみを示すのではなく、権利と義務を持つ主体として市民が自分自身から地域に関わり、良くしていこうとする当事者意識に基づく自負心を指します。

このセッションではオープンファクトリーとシビックプライドについて岩田さんが解説を行った上で、現役の市長が掲げるシビックプライドについて語っていただきました。

◆一宮市 中野市長の掲げるシビックプライド

(一宮市 中野市長)
「知名度を高めたい」という想いで、このシビックプライドは非常に重要だと思います。
若者が遠方に行ってどこから来たか聞かれた時に、「名古屋から来ました」と言うのではなく、「一宮市から来ました」と胸を張って言えるようにしていきたい。
そのためには尾張の、尾州の知名度が上がる事が必要不可欠です。

最近では、市立中学の制服を詰襟、セーラー服から、ブレザーに変えました。そして、どうせ変えるのならと、尾州の繊維を使ってほしいとメーカーにお願いしました。これを機に、学校で地場産業を学ぶ取り組みをしていこうと思っていますが、こうしたことを教えるには、教科書やネットの情報では限界があります。そうしたときに、毛織物産業に携わる人たちがオープンファクトリーなどの取り組みをしてくれることは、大変うれしいことです。

一宮市では、まちなかウォーカブルという取り組みをしていて、一宮駅前、真清田神社前、本町商店街を魅力あるエリアにしようと取り組んでいます。年1回、道路の一部を通行止めにして、歩行者に開放する社会実験も行っていますが、昨年は、繊維メーカーで働く若い職人さんがションヘル織機という古い機織り機を持ってきてくれました。それを路上で実演をしていただいたら、大いに人気を集めて、中には昔を懐かしんで涙ぐむ高齢の女性もいらっしゃいました。

尾張の国、尾州の「尾」には「毛」という文字が入っており、切っても切れない縁だと思います。折に触れて地域の人たちに情報発信しながら、これからも地場産業が栄えていってほしいと思います。

◆津島市日比市長の掲げるシビックプライド

(津島市 日比市長)
津島市には人の心を繋ぐ「祭り」の文化が古くから根付いています。
若いうちから笛や太鼓に関わってもらう事で、将来ふるさとに戻ってほしい。
津島を愛してほしいという想いを祭りの文化から感じてもらえればと思っています。

津島市では、ひつじサミットと連携して、津島駅前で「えきまえVIP」という社会実験を行います。駅前を活性化しようと、さまざまなイベントが開かれますが、若い人たちが今のままではいけないと、街づくりに参加してくれています。

また、津島は東海地方で寺の密度が最も高い市だということで、寺社巡りのイベントを年に数回開いています。1回に1000人くらいの参拝客が来てくれて。いつも訪れてくれる愛好家も増えました。そうした街づくりの中心となってくれる若い人が育ち、花を開こうとしています。行政も彼らと一体となって、街を盛り上げていきたいと考えています。

◆羽島市松井市長の掲げるシビックプライド

(羽島市 松井市長)
尾州はわが国随一の毛織物産地です。
今でも軟水木曽川の豊かな水が毛織物の染色整理に有利であるという点を、市民一人一人が尾州のマフラーや毛織物を身にまとう事でアピールできる市民活動が盛んになる事を一生懸命企画していきたいと考えています。

シビックプライドに関わるホットニュースをひとつお伝えすると、「東海道新幹線の秘境」として名古屋テレビのニュース番組に特集された事もある岐阜羽島駅の利用者は、今年ついに三河安城駅を上回りました。
新たな活力の起爆剤として、交通手段と共に市民の方一人一人が自慢できるまちづくり、人づくりを目指しています。

そんな中で、ひつじサミットのような取り組みに、若い経営者らが徹底的なマーケティングに基づいて挑戦してくれるのはうれしい限りです。

羽島市で繊維工業が最も盛んだったのが約30年前、960億円規模の商売をしていました。
今は当時に比べると8分の1程度に規模が縮小しており、事業所の数を見ると60年前に900近くあったものが、今は31社です。
こうした状況を変えていくためにも、地元の人には、羽島の毛織物を良く知り、自慢してほしい。そして、経営者の方々には、今のようなチャレンジする姿勢を続け、オープンファクトリーなどに取り組んでいただきたいと思っています。


◆会場からあふれ出た、シビックプライドへの想い

市長の話がひと段落したところで会場からの質問を受け付けた所、想いを受けて日本毛織株式会社の麻河さんから意見が飛び出してきました。

(麻河さん)
話の中で、シビックプライドという言葉がありました。
私もヨーロッパ、イタリアあたりに行くと、おじいちゃんもおばあちゃんもウールを身に着けています。
マフラーなどを見せてきて、「これ、かわいいでしょう?」とニッコリ笑ってくれる。

一方、一宮は公園に行っても誰もウールを着ていないんですね。
それではやっぱり町おこしもできないと思います。
やはり「一宮に行くとみんないい服着ているね」とか「かわいい物持っているな」という事を思ってくれる町づくりを私もしたいと思っています。
アイデアを持ち込みますので、ご協力をいただければと思います。

(羽島市 松井市長)
郡上の徹夜踊りの前には、市議会と市の幹部クラスは浴衣を着て議会を行うそうです。
そこで、羽島市にはカシミヤのマフラーを作る工場があることから、市の部長をはじめとした職員が1本以上羽島のカシミヤマフラーを用意して登庁してくれています。

(麻河さん)
日本の政治家の皆さんがたが尾州地区のスーツを着てもらえれば、一気に尾州地区が活況になると思います。
政治家の方や経産省の方と会う事がありましたが、誰一人尾州の素材を着ていませんでした。
そのあたりのコマーシャルもしていただければと…。

(津島市 日比市長)
やはり主体的でないといけないと思うんですね。
主体的になるような格好で、アイデアや戦略を出していかないと長続きしていかない。
みんなで知恵を出し合って行くのが今どきのやり方だと思います。
ぜひ一緒に考えていきましょう!


◆歴史から見た尾州

先日最終回を迎えたNHKの大河ドラマで鎌倉時代が取り上げられていましたが、一宮市は承久の乱の際、幕府方の軍議が行われた地でもあります。


*一宮市「承久の乱といちのみや。」より引用

(一宮市 中野市長)
今から801年前、1221年の承久の乱では、京都から朝廷の軍がやってきて、東鎌倉から北条軍がやってくる。丁度ぶつかったのが木曽川のあたりです。
北側に朝廷側が陣取り、南側(愛知県一宮市側)に北条軍が陣取りました。
「吾妻鏡」という鎌倉時代の歴史書にも「北条軍は尾張の国一宮にて軍議を開きたり」と一宮の地名が出てきています。

(岩田さん)
松井市長、一宮市が北条軍だったという事は、(北側にある)羽島市は朝廷軍だったんでしょうか?

(羽島市 松井市長)
羽島市には時代的に大名が居なかったので…。

ちなみに、徳川将軍家の分家御三家の一つである尾張徳川家に2人の家老が毎日川を渡って出勤していました。1人は石河(いしこ)さんという実務派のNo.1のご家老職で、徳川美術館にもその屋敷跡が残っています。

(岩田さん)
ひつじサミット尾州に来てくれた方が歴史も楽しめれば、と思うのですが。
それで言うと、津島市も「信長の台所」と言われる商業都市で一世を風靡したそうですが…?

(津島市 日比市長)
戦国時代、信長の台所と言われた理由は、津島湊と呼ばれる地方随一の港町・門前町として繁昌したその財力や、「津島衆」という戦力を惜しみなく信長に投資したことです。
岐阜市とも連携して、お互い高めあえたらと…。

(一宮市 中野市長)
最近は岐阜市が信長まつりで大変賑わいましたが、もともと信長は尾張の出身で、一宮には信長と斎藤道三が会談した「聖(正)徳寺の会見」が行われた場所、聖徳寺跡も伝わっています。尾州はそうした歴史のある地域ですから、地場産業に歴史も交えて、アピールしていけたらと思います。

(岩田さん)
ひつじサミット尾州はもちろん工場を見学してもらう事が一番ですが、飲食店にも立ち寄ってもらいたい。また、こういった歴史の跡を辿ってもらうのも面白い事だと思います。


◆終わりに

セッションの最後に、ひつじサミット尾州2022副実行委員長の岩田さんからメッセージをいただきました。

(岩田さん)
ひつじサミット尾州だけでなく、尾州のカレントやリテイルなど、いろんな活動をしている人が沢山いる、という状況こそが尾州が活性化しているということだと思います。
その中で、ひつじサミット尾州は「誰でも参加できる」という緩さが良いところです。
行政と事業者、市民が互いに意見を出し合って、地場産業の活性化を考えるプラットフォームとしての役割を、このひつじサミットが担っていけたら…と考えています。

着れる、食べれる、楽しめる! ひつじと紡ぐサステナブル・エンターテイメント、「ひつじサミット尾州」。
2021年に尾州一帯を巻き込んで始まったこの産業観光イベントは、2023年も10月28日(土)29日(日)の2日間で開催を予定しています。

・今年はどんな工場が見学できるのか?
・次回の見どころは?
・前夜祭後夜祭は今年も開催する?

などなど、事前情報は「ひつじサミット尾州公式LINE」でご案内いたします。
お友達登録はこちらのQRコードからどうぞ!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?