2017年慶応文学部日本史論述答案例
大問Ⅳ問10
将軍足利尊氏が軍事面、弟の直義が行政面を担う二頭政治は観応の擾乱を経て、将軍に権限が集中して解消した。当初、軍事面を担う将軍を補佐した執事は、義満期に鎌倉幕府の執権同様、幕政全般を担う管領に発展した。(100字)
太字は指定語句。
設問分析
設問要求①…室町幕府の管領というポストは、どのような経緯を持つ職か。
設問要求②…室町幕府の管領というポストは、どのような特質を持つ職か。
条件①…執権・執事・二頭政治の3つの語を用いて、説明せよ。
条件②…100字以内
解法
①…管領のポストに関する経緯と特質を説明する問題。特質は特徴と読み替えてもよいだろう。指定語句として執権・執事・二頭政治の3つを使うことが要求されている。
②…管領成立の経緯や特徴は知識としては知らないので、史料を参考にしていけばよい。
史料イ
執権とは政務を代行する人々のこと【執権トハ,政務ノ御代官也】
史料ロ・ハ
二頭政治に関して言及がある。
二頭政治→将軍は「軍事面を担う」【大御所は弓矢の将軍にて】
→直義は「行政面を担う」【ロの「御政道の事を将軍より御譲ありし」】、【ハの「大休寺殿は政道私わたらせ」】
史料ニ
細川頼之は管領に就任している 【則天下ノ管領職ニ令居】
細川頼之は義満の執事に就任している【右馬頭頼之ヲ武蔵守ニ補任シテ,執事職ヲ司ル】
③…次に考えなければならないのは、設問要求である。問いの型は設問要求①(管領のポストに関する経緯)が変化、設問要求②(管領の特質)が特徴である。
2つの問いの型に共通するのは、「管領を何かと比較する必要がある」という点で、指定語句を考えると管領を執権や執事と比較するという方向性で考えればよい。
④…管領については、史料ニの「細河右馬頭頼之,其比西国ノ成敗ヲ司テ,敵ヲ亡シ人ヲナツケ,諸事ノ沙汰ノ途轍(細川頼之は、その頃西国を平定し、敵を亡ぼし兵を従わせて、諸事の沙汰を型通り執り行い)」から、細川頼之が軍事面や行政面を担っていることが分かり、二頭政治の時代の尊氏と直義の職務を両方担っていることが分かる。
⑤…④で検討した管領を執事と比較することを意識する際、執事がどうした権限を持っていたかを考える必要がある。受験生が知っている執事は高師直しかいない。そして、高師直が観応の擾乱で直義と対立したことを考えれば(それに気が付かせるため、問4が置かれている)、二頭政治の時期に執事は軍事面を担う将軍を補佐していたことが想起できる。細川頼之は管領でもあり、義満の執事でもあるわけなので、以上から、
執事…将軍を補佐=軍事面を担う
↓
管領…幕政全般(軍事面・行政面双方)を担う
と整理できる。となると経緯は以下のⅰ~ⅲに整理できる。
ⅰ.二頭政治…将軍尊氏→軍事面を担う。執事は将軍を補佐
…弟の直義→政治面を担う
↓
ⅱ.観応の擾乱…将軍への権力集中→将軍は軍事・政治面の双方を担う
↓
ⅲ.義満期…管領の誕生→幕政全般(軍事・政治面の双方)を担う将軍の補佐(史料では将軍に代わって、幕政全般を担っている)
⑥…執権をどのように答案で使うかについては、史料イにある【執権トハ,政務ノ御代官也】から、「執権とは政務を代行する人々」であり、それが義満期の細川頼之と類似していることに気が付くことができれば、使い方は見えてくる。(ただし、できればと書いたように、受験生には難しいと思う。大学側もそれは認識があったのか、史料ニに【貞永・貞応ノ旧規ニ相似タリ】と入れて、貞永、つまり、泰時の時期を意識させようとしているし、その関連で問5の設問を置いたことも想像がつく。また、史料ニに細川頼之が武蔵守に補任されているが、これが執権に倣ったものと考えてよいだろう。受験生には難しいだろうが、史料イの【両国司トハ,武蔵・相模両国ノ国司御名也。将軍家執権御事也】の記述は、それを意識できるように大学側が用意しているという側面もある。しかも、問1を置くことで、武蔵・相模両国の国司に北条氏が就任したことも気づくことができるようになっている)。
よって、⑤のⅰ~ⅲの枠組みに「管領が鎌倉幕府の執権と同様の権限を持っていた」という点を加えればよいだろう。
大問Ⅴ問6
答案例①
アヘン戦争でイギリスに対し、清が劣勢であったことが伝わると、江戸幕府は外国船の撃退を命じていた従来の異国船打払令を改めて、天保の薪水給与令を出し、漂着した外国船に薪や水・食料などを与えることにした。(99字)
答案例②
アヘン戦争でイギリスに対し、清が大敗を喫したことが伝わると、江戸幕府は外国船の撃退を命じていた従来の異国船打払令を改めて、天保の薪水給与令を出し、漂着した外国船に薪や水・食料などを与えることにした。(99字)
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