2013年慶応文学部日本史論述答案例

大問Ⅳ問7
 藤原京は儀式や政務の場である大極殿・朝堂院を備えた宮に天皇が住み、その周囲に条坊制を持つ京が設立され、王族や貴族たちが集住する中央集権国家を象徴する都であった。(80字)

太字は指定語句

大問Ⅴ問7
 物価の高騰を背景に借金に関する訴訟が増えため、相対済し令で金公事を禁止し、当事者同士での解決を命じることにより、奉行所の負担軽減を狙った。その後、不当な借金をめぐる訴訟は受けつけるようになり、さらに金銀貸借が滞ったため、同令は廃止された。(119字)

解法
①…まずは設問要求・条件①から、史料文の読み取りが必要となる
史料イ(相対済し令)
金銀に関する訴訟が多く、評定所の寄合もその本旨を失っている。よって、金公事は当人たちで決着をつけ、三奉行所に訴えることのないように。
史料ロ…史料イを良いことに借りた金を返さない者がいる。ひどい場合は訴えよ。
史料ハ…史料イの廃止

②…設問要求は趣旨と推移である。趣旨は相対済し令の一般的な記述をしておけばよい。
「借金に関する訴訟が増えたため、奉行所の負担軽減を目的として、相対済し令により、金公事を禁止して、当事者同士での解決を命じた」

③…推移については史料ロ・ハで読み取った内容を必ず含めて、3段階(A⇒B⇒C)で記述すること。②がAにあたるから、史料ロがB、史料ハがCにあたると考えればよい。

④…「借金・訴訟・物価」の使用語句について、借金・訴訟は②の部分で使用可能であり、他の部分でも使える語句である。一方、物価については史料文イ~ハ中にそれを示す言葉はないため、知識で補う必要がある。同問題の問1、問5がヒントとなる。
⇒ 吉宗期(問1)の物価に関して、「米価安の諸色高」という言葉を踏まえれば、相対済し令発令の背景に物価高騰による借金増と考えればよい。「米価安の諸色高」が武士(直参)の生活窮乏につながったこと(問5)も学習済みであり、同問題の複数の設問と合理的に関連するところから見て、「物価高騰⇒借金増⇒金公事増」という組み立てが妥当であると考えることができる。

「物価高騰による借金増」は教科書レベルでは言及がなく、吉宗期の社会を想定して、書く必要があるから、受験生には難しいと思われる。また、推移についても教科書レベルでの知識ではなく、史料文ロ・ハの読み取りが必要であり、しかも、史料文ロ・ハは未見史料であるから、論述問題の難易度としては高い。まずは趣旨説明で減点を防ぐことが最優先と思われる。次に推移と設問要求にあることから、2段階以上の変化があることを答案で示したい。

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