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読書レビュー:その午後、巨匠たちは、(藤原無雨 著)





物語を通して描かれる多くの部分は、イージーフィクションとでも表現すべきだろうか?恐らく誰しもが想像しうる「if」をとてもキャッチーに、またコミカルに描写されていると思う



反面、ところどころに埋め込まれた「不穏さ」は確実に読み手の中に残るだろう



これを伏線と呼ぶには余りにも大げさだと思う
伏線よりはずっとはっきりと明示されていて、それでいて読んでいるうちは意識しないというか、その暗澹とした未来に目を背けるように読んでいく


そもそも歴史に残る巨匠たちを神々として祀るという、ありそうであまり聞いたことの無い冒頭にしても、それを行う人物もまたあまりにも人間離れしているのだから




作中、様々な超常的な事象や神性に触れる記述は「至極当然」とでも言うふうに日常として描かれている

作中の「人間たち」も読み手同様に、その異常さと不穏さを飲み込んで、頭の中からもみ消して、上澄みの快楽をありがたく受け取っていく




その絶対的な依存は果たして無限に続くものなのか

「神様の都合」に人間はどこまで付いていくことが可能なのか



なんとも「胡散臭い」1冊だったと、私なりに賛辞を述べておきたいのだ



謎は解けず、人々は救われず、その未来はあまりにも暗い


しかし、少なくともこの作中は、まさに至上の幸福の中に居るのであろう、巨匠たちと人々のお話だと思う



私はむっちゃ好きだ

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