FM 5-0 THE OPERATIONS PROCESS (March 2010)

前書き

 我々が作戦を遂行する環境には、不確実性、目まぐるしい変化、たゆまない競争、幅広い分散といった4つの傾向が、明らかな特徴としてみられる。このような傾向において指揮官は、複雑かつ様々な問題に立ち向かう心構えを持たなければならない。多くの場合、それらは無数の相互依存する変数を含むと共に、すべてにおいて人間の性質に起因していると考えられる。

 我々のドクトリンを具現化するにあたり導入部となるFM 5-0(作戦プロセス)の編纂において、我々は、従来の計画プロセスを通じて問題の解決を試みる前に、複雑な問題を理解することの重要性について十分に注目するべきである。

 デザインとはプロセスでもチェックリストでもない。それは、批判的かつ創造的思考に基づく方法論である。それは指揮官がおかれている環境を理解し、問題を分析し、潜在的なアプローチに取り組むことを助け、作戦を通じて、現況における弱みを認識したり、状況の推移に対して先手を打つ機会を利用することを可能とするものである。

 指揮官は、見通しを立てる、説明する、指揮する、先導および評価サイクルを実施する際、理解するということのためにまず構想(デザイン)を練る。アインシュタインはかつてこう述べた「もし私が地球を救うために1時間の時間を与えられたならば、私はそのうちの59分間を問題の定義に使い、残りの1分間をその解決に使うだろう。」陸軍の意思決定プロセスにおいて総合的な構想(デザイン)は、複雑かつ不確実な状況下において陸軍の指揮官に対し、問題解決のための、より包括的なアプローチを提供する。指揮官は下級および上級組織に対して行動をとる際、構想(デザイン)に基づく任務を経ることにより、それぞれを相互に関連づけることが出来る。

 構想(デザイン)の導入に加えて、FM 5-0における改訂は、FM 3-0 "OPERATIONS"(2008年) に記載されたフルスペクトラムオペレーションズに関するドクトリンに基づき、さらにその内容を拡張するものである。計画および命令による戦争指導に替わる概念として、このマニュアルでは総論としての作戦プロセスにおける計画、準備、実行、評価及および継続的学習サイクルに焦点をあてるものである。これは、効果的な指揮および統制について訓練すると共に、理解、見通しをたてる、説明、指揮、先導、評価を実行するためのアート(Art)とサイエンス(Science)を適切に適用することで、戦闘指揮において指揮官による作戦プロセスの中心的役割を、より強化することを意味している。

 FM 5-0 の意図するところは、米国陸軍将兵の考え方、行動、創造性に対して著しい柔軟性を持たせることを意図するものである。米国陸軍の指揮官は、ダイナミックな作戦環境における変化に対し、都度、適応し、計画を立て直す能力を維持すると共に、一つの計画に固執することなく、状況に応じて計画を転換しなければならない。

Martin E. Dempsy

米国陸軍訓練教義コマンド総司令官

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