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蛮族のためのアニメ月評

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毎月第4月曜の19:00にアップしている声優/アニメに関する評論集です。
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#ジェンダー

TVアニメ『恋愛フロップス』が示唆する美少女ゲームの帰趨:東浩紀『動物化するポストモダン』の再検討を通じて

はじめに 2022年12月に放送が終了したTVアニメ『恋愛フロップス』は、「お嫁さん候補」である5人の美少女から言い寄られるという多情な状況を下敷きにして、多層的に悪趣味な構成をとったオリジナルアニメであった。本作は、新味に欠ける「美少女ゲーム」的な布置のラブコメディが展開する前半部と作中の入れ子構造の種明かしを行う後半部に分かれているが、全体を通じて徹底的にお下劣な文芸と意匠で飾り立てられており、美少女ゲームの持つ猥雑さを視聴者に再認識させてくれる。  前半部では、「聖キク

TVアニメ『かげきしょうじょ!!』が照らし出す「僕たち」の後ろめたさ:歌舞伎・アイドル文化の蠱毒を制するためのレッスン

はじめに 2021年9月に放送が終了したTVアニメ『かげきしょうじょ!!』は、宝塚音楽学校をモデルにした「紅華歌劇音楽学校」を舞台として、「東大に並ぶ」とも言われる難関の入学試験を突破した100期生(予科生)の少女たちが繰り広げる切磋琢磨、友情、衝突、苦悩などを多角的に描いた傑作である。本作では、身長178cmで15歳、歌舞伎俳優の血を引く規格外の天然少女・渡辺さらさ(CV: 千本木彩花)と、有名女優を母に持つ「笑わない」元国民的アイドル・奈良田愛(CV: 花守ゆみり)の二人

TVアニメ『バトルアスリーテス大運動会 ReSTART!』とオリンピック批判の最前線:アスリートとの連帯は可能なのか

はじめに 新型コロナウイルス感染症の拡大が続くなかで強行された2021年の“TOKYO 2020”によって、オリンピック・パラリンピックの抱える無数の矛盾と欺瞞が人々の目に明らかとなっている。そんな折、オリンピック批判と受け取れるTVアニメが製作・放送されていたことは注目に値する。東京オリンピック開幕の直前、2021年4月期に放送されたTVアニメ『バトルアスリーテス大運動会 ReSTART!』(以下、『ReSTART!』)は、『バトルアスリーテス大運動会』という90年代コンテ