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蛮族のためのアニメ月評

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毎月第4月曜の19:00にアップしている声優/アニメに関する評論集です。
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2021年7月の記事一覧

TVアニメ『恋きも』と『ひげひろ』が見せる純愛志向の極致:現代日本の病理としての「恋愛」中毒

はじめに  2021年4月期には、奇遇にも同じタイミングで、20代後半(アラサー)のサラリーマンと女子高生との「年の差」の恋愛模様を描くTVアニメが二作品放送されていた。一つは『恋と呼ぶには気持ち悪い』(通称『恋きも』)、もう一つは『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』(通称『ひげひろ』)である。  『恋きも』は、一流企業の課長代理を務める天草亮(27歳)が、寝不足で駅の階段から危うく落ちそうになったところを、通りがかりの女子高生・有馬一花(17歳)に助けられたことから物語が

社交・顔・感情:TVアニメ『シャドーハウス』が描いた宮廷社会のカリカチュア

※本記事は『シャドーハウス』の原作第4巻、TVアニメ最終話までのネタバレを含みます。原作未読、TVアニメ未視聴の方はご注意ください。 はじめに  2021年7月4日、「世にも奇妙なゴシックミステリー」として話題沸騰中のTVアニメ『シャドーハウス』が最終回を迎えた。本作はまさに「怪作」と呼ぶにふさわしいユニークな作品である。  断崖絶壁に建つ洋館――そこには貴族のまねごとをして暮らす、顔のない一族「シャドー」が住んでいた。その「顔」役としてシャドーに仕えるのは「生き人形」。生