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失われた記憶一ダークアンビエントミュージックThe Caretakerについて

こんにちは。

みなさんは音楽に触れるとき、メッセージ性やコンセプトも含めて楽しむと思います。それは楽しさや説得するようなもの、怒りや悲しみなどいろいろあると思います。

斬新なコンセプトを持ち、しばらくの間「むぅ。」と深く考えさせられてしまうようなメッセージをストレートにぶつけてくるThe Caretakerをご存じですか?

The Caretakerって?

The Caretaker(ザ・ケアテイカー)とはJames Kirbyによる全く新しい記憶をコンセプトにした音楽プロジェクトのこと。

記憶といっても美しい思い出や、楽しい出来事のことではありません。いや、もしかしたらその美しい思い出も含まれるのかもしれませんがその記憶は少しずつ消えていくのです。

つまり記憶障害がケアテイカーの核になります。

この記憶障害については2016年にリリースされた『Everywhere at the End of Time』という6部作のアルバムがすべてを語っています。
6枚にはそれぞれStage1からStage6まで割り振られています。
アルバムを発表する毎に病気が進行しているのです。。
(あくまでコンセプトなので実際に病気ではありません)

James Kirbyは様々な名義を持ち、アンビエントのほかにハードコア、ダンスミュージック、様々なジャンルの音楽で我々を楽しませてきました。

ケアテイカー名義では1999年リリースの『Selected Memories From The Haunted Ballroom』が第一作目。スタンリー・キューブリックの「シャイニング」という映画から着想を得たといわれています。

そして名前のケアテイカー(管理人)とは、パーティーを楽しむたくさんの幽霊に遭遇する有名なシーン。あのシーンで主人公が出会うホテルの管理人から名前がとられました。

前述のとおり記憶をコンセプトにしています。あの映画に登場する幽霊たちも過去や記憶を表していますよね。The Caretaker(ザ・ケアテイカー)は99年に創造されたケアテイカーという人間の人生であり、物語はこの頃からスタートしているのです。(定かではないですが)

Everywhere at the End of Timeを聴く

それでは、実際にアルバムを聞いてみます。
現物が欲しかったのですがAmazonでは現在在庫切れだったりなのでYouTubeで聴くことにします。

全6ステージコンプリート。

Stage1~3

ブツブツとノイズの入りつつ優雅でクラシカルな音楽が響きます。30年代のソフト・クラシックやジャズのようです。James Kirbyは20年程かけ30年代の78回転10インチの古いレコードを収集し、音源として使用しました。

ケアテイカーという世界の時代設定自体が30年代なのか、James Kirbyが「記憶」をイメージしたものが30年代クラシックであるのか、こういうこと考えながら聴くのは楽しいです。

まだこの段階では音の輪郭ははっきりしています。stage2、3からノイズが目立つようになり、不穏な空気が立ち込めます。このノイズが症状を表しているのでしょうか。

Stage4~5

中盤。複雑な気分になりそうでした。ノイズは入り乱れ、クラシックな音楽はブツブツ途切れ始めます。本当に狂っている。
ただ、きちんと計算されているのでしょう。適当に音を悪くしているだけじゃないのです。
二重構造のような、奥行きをもたせることにより音楽として楽しめる。Stage5はインダストリアルのようで、音源元のクラシックの優雅さは消えています。


Stage6

物語はクライマックスを迎えました。
ノイズと「ボーーーー」という狭く暗い筒の中にいるときのような低い音が鳴り響く。Stage5に比べひどく落ち着き払っています。始まった瞬間絶句だったのですが終わりに近づくと共に光が差し込みました。
美しいピアノの旋律が聴こえてくるのです。
ここからはなんだかもう悲しくてしょうがなかったです。まるでエンディング?いや鎮魂歌かのようにオルガンと賛美歌が流れ始めゆっくりフェードアウトし、物語は終わりを告げます。

最後に

2016年から2019年までの3年に渡った超大作。本当に素晴らしいとしか言いようがありません。

そして何よりジャケットに使用されている画家・Ivan Sealさんの、彩りがありつつも冷たさを感じる絵が大変素晴らしい。個展などあればぜひ行きたい。画集もないかな。

追記
現在音楽配信サービスBandcampで全6stage揃ったアルバムが買えます!
※投稿した後即買いました!
しかも言い値システム。
海外サービスなのですが日本円対応してるので購入される方はJPYに変更しましょう!


皆さんも1度この物語を味わってみてはいかがでしょうか。

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