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やさしくなった元気玉

ノベル・セラピストの io です。
ノベル・セラピー®」は、創始者であるOjha(オジャ) Emu Goto さんが考案した即興で物語を作るグループセラピーです。
< ノベル・セラピー®協会  >
ワークショップでは、 セラピストが設定した簡単な質問リストに答えていく形でストーリーの骨子をメモしていただき、その後、即興でお話を語っていただきます。そして、そのときの語りをのちに、ご自分で録音起こしをしていただきます。
イメージを言葉に降ろして語る方、ふと頭に浮かんだことをお話しに取り入れて物語を紡ぐ方、自分の中で「語る人格」が現れたかのようにお話しをする方、語りは人それぞれに。
聞く側も語る側も、その時その時に、湧き出る物語に心が動くのを感じたり、未知の思いに触れるなど、何かしらの気づきがあります。
ここでの物語は、ノベルセラピストでもある io の中から出てきたものです。

お題は、<元気玉ノベル>
では、🌟~ はじまり、はじまり ~🌟


僕の名前はピオ、「元気玉のピオ様」とみんなから呼ばれている。
みんなは僕に願いを投げかけたり、「こんな夢があるんだあ」などと話してくれたりするので、僕はその願いを叶えたり、夢を叶えたり導いたり。
そんなことをずーっとしながら、ピオは人々がいる国を見下ろしていました。
ところが最近、なぜか調子が出ません。人々の願いを叶えてやろうかなあと思っても、うまくいかないのです。
「何か僕、最近ちょっと萎んでない?」
そう感じていたところに国王が、「元気玉のピオを元気に、丸くする、その方法がわかる者に賞金を渡す」というおふれを出しました。
「えーーっ、何~、僕が? やっぱり萎んでた……」
ピオは萎んだ気持ちで思いました。
「うーん、今までみんなの願いや夢を叶えたりしてきた僕が、賞金を出されて復活しなきゃいけないなんて、おかしいよ、それ」
そう思ったピオは国王に言いました。
「僕、自分のこと、丸く元に戻るように何とかしてみます」
ところが、元気玉のピオにはどうすれば自分が復活できるのかわかりません。
 
「困ったなあ……、このままどこかへ行って、僕は消えちゃってもいいかなあ」
ピオはそんなことも考えたりしました。
そこへ、ひゅーーっ、風に乗って龍がやって来ました。
「おまえさあ、どうしちゃったの? そんなに萎んじゃって」
「えっ、あぁ、それ言う……」
龍にありのまんまを言われたピオは、「はぁ、もう何だかなあ、怒る気もしないよー」という気分でした。
「どうしたらいいかねえ? これねえ」
ピオは思い切って龍に尋ねてみました。

「そうだねえ、うーん……、おまえさ、エネルギーが足りなくなってるから、エネルギー補給できるようなことをしたらいいんじゃないの」
そして龍は「おれさ、風をおまえに貸してやるよ。この風に乗って、どこか行っておいでよ」と言ってくれました。
龍が、ふーーーっと鼻から息を吐くと、一筋の風がピオを乗せて山々が見えるところへ連れていきました。そうしてピオは、しばらく風に乗って気持ちのいい~気分で地上を眺めおろしていました。すると、緑の草原の中でひどく悲しんでいる人がいます。彼は「おいおい、おいおい」一人で泣いていました。
その様子に興味を持ったピオは、ふーっと風の高度を下げ、その人の近くまで降りてみました。

「どうしたの? どしたんだい、そんなに泣いちゃって」
悲しんでいる人は、自分が育ててきた大事な友達のような馬が亡くなってしまい、とってもとっても寂しくて悲しくて、「もう、僕は立ち上がれないよ」、そう言って泣いていました。
その人の話を聞いているうちに、ピオもだんだん悲しい気持ちになってきて、一緒になって泣き始めてしまいました。
泣いて泣いて、また泣いて。ピオは涙が枯れるまで、その人と共に泣きました。
そうこうしていると、彼は「ふー」と息をつき、静かに言いました。
「とにかくもう一度、もう一度、僕は新しい馬を探して育ててみようと思う」
ピオもそれがいいと思い、立ち去る彼を見送りました。

一人になったピオ。
涙が枯れるまで泣いたことなど、これまでありませんでした。
「からっからになるまで泣くってこういうものなんだなあ」と思いながら、ピオも「ふー」と息をつき、周りを見渡しました。
龍の風は気持ちよさそうに、空の高いところを飛んでいます。その龍の風が飛んでいる様子を見て、ピオは「ふーーっ」と力を抜いて、自分がとても落ち着いた気分でいるのを感じました。
「はーーっ」、さらに力を抜くピオ。
するとどうでしょう。力を抜いたら、力が湧いてくるのを感じたのです。
「えーーー、力を抜くと力が湧いてくる!」
その時、ピオはふと思いました。
「そうか、自分がいつも、元気でいなくちゃいけないわけじゃないのか……、何かしてやらなくちゃいけないわけじゃないのか」
ピオは自然でいれば、自然に力が湧いてくることをはじめて知ったかに思いました。
「力を抜くということが、自分自身が丸くなるのに必要なことなのかもしれない」
ピオがそんなふうに思っていると、高いところにいた龍の風が降りてきて、再びピオを乗せると空に舞い上がり、雲をどんどん突き抜け、空高く悠々と旋回しました。
すると、ぽろりんと金色の小粒の玉が落ちてきて、思わずピオは「ぽくりっ」、それを飲み込んでしまいました。
「ん? 何これ、ドロップ?」
「ふふ、それはね、太陽が落とした光の粒さ」
 龍の風がピオに教えてくれました。
「飲んじゃったけど、大丈夫?」
「ふふふ、なるようになるから!」
ピオの思うことに、龍の風が応えました。
気が付くと、元気玉のピオはすっかり元気を取り戻したのを感じていました。
「何か、僕さ、丸く復活してない?」
ふわり、そんな気分になっていました。
 
龍の風はピオを乗せて、あの国の空高くへピオを連れ帰りました。
元気玉はちゃんと元気を取り戻し、丸く、心地よい光を放っています。その光は、以前よりも広く、やさしく、大きく輝いて、世界はその光を映し、広くやさしく、大きくみんなの心に映ります。
自然に、やさしく、広々と。
そんな気持ちで、地上を眺める元気玉のピオ。
ときにケタケタ笑い、ニコニコ過ごし、落ち着いた静けさにいるときもある。
そんな元気玉に、「願いを叶えてくれ~」と頼む人もいます。「夢を叶えて~」と願う人もいます。でも、ピオは人々にもう何かをするのをやめました。ただその人たちの声を聞いています。
「だってね、その人たちにもちゃんと、夢や希望や願いを叶える力があるんだよ」
ピオはそのことを知っています。

人々の声を聞き、ピオは励ます思いで、やさしい気持ちで、自分の光を放っています。元気玉はそういう存在になりました。


🌟~ おしまい、おしまい ~🌟


《240615*P03》 🌎🌐地上綴り🌎🌐


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