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かめだし力だめし

 1000円
  500円

1000円が、500円。
心が動く。

同じ半額でも、一万円が五千円だと、
そもそも一万円が不当な値づけなんじゃないか? 
と思えてくる。

1000円から0が一つ減って、

 100円
  50円


同じ半額でも50円だと、逃してもいいかと思う。

開店して間もない、ご近所の中華屋さんでのこと。
「かめだし紹興酒 1000円が500円」
の張り紙が店の壁にあった。

さっそく、「紹興酒、二つ」と注文する。

「ふたぁつ?」
「そう、二つ」

だって二人だもの、一人ひとちゅでしょ。
半額だし。

注文を受けてくれたオネィさんが持ってきたのは、
醤油挿しより、ひとまわり大きい紹興酒挿しと小さいグラス。
これが、グラスに注いでも注いでも酒が出てくる。

 すみませーん、
 魔法ですか、これ?

飲んでいるうちに、貼り紙の「かめだし紹興酒」の“かだめし”が、
“力だめし”に見えた。

「ふたぁつ?」
そう訊かれた意味がだんだん分かってきた。

 オネィさん、
 ふたりでひとつぅ、じゅうぶんですね。
 ラーメン食べに来ただけですもの。

お水をもらって、飲み干す“力だめし”。
心動かされる半額に引っかかって、
頑張りました。

《08*P06》 🌐🌎地上綴り🌎🌐


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