この世でもっとも美しく、残酷な本のこと(1)
この世でもっとも美しい本を知っている。
夢さながらの美しい舞台で、詩のように意味深い言葉が綴られた、作者の深い愛憐が文章の隅々まであまねく行き渡っている、人間の善良さと正しさを信じていたくなる、そういう本を知っている。
〈少女〉は、(というのはこの本の主人公ことだけれど)あまり我慢強いとはいえない性格で、優等生というよりはお転婆で、思いこみが強く、つねになにかに困り果てていて、野を駆けたり、鳥と話したり、水に足を浸したりしては、やたらとため息をつく。どうして