設定まとめ資料集的なやつ
イメージ・設定まとめ。分かりやすさを重点するために所属ごとの見出しで管理します。
*主人公組*
ディムロス・トーランド
「今があればそれでいい。俺はそう思う」
地虫族。背が低く頑丈で、足が速くスタミナもある。タイプはあく・じめん。闇探りのセベク、その一人であり、彼は特に後ろ暗い秘密を持つ者からそれを奪い取って白日の下にさらすことを生業にしている。性質上、恨みを良く買うので荒事上等。
地虫は武器の扱いに習熟しづらく、一般的な剣や槍、刃渡りのあるカタナや弓といった武装はもたない。彼が信頼するのは古代の技術によって造られた黒曜石の大きなナイフだ。ひとつの岩塊から削り出されたと思しいそれはおそらく異術の産物であり、複製は不可能。
単純な体捌きにも優れており、四本の短い手足を最大限に生かしたボクシングめいた近接格闘によるダーティファイトもこなす。が、あまり泥臭い戦いを好まないらしく基本的には避けられる交戦を避けるタイプ。
彼が常用している灰色の笠は巨大な地虫の死体から削り出されたもので、ブライト・ラプトの暗黒技師が心血を注いだもの。奇怪な仕掛けが施されており、一枚の紙めいて畳むことで収納を容易にするほか、笠の縁をこすり合わせることで鋭く加工されたレイヤーがせり出し、満月型の刃となる。
種族の特性として毒物に耐性があり、たいていの環境でしぶとく生き延びることができる。
性格は不愛想でやや利己的。他人のために何かをする、ということがそもそも選択肢にない。よく言えばドライ。悪く言えば自己中。生まれや育ちは多くのセベクに共通して不明だが、「ろくな出自じゃない」とのこと。最近ちょっと丸くなってきた。昔がとがりすぎだった…らしい。
ジェンダール・ラプソディー
「リスクマネジメントなんてものができるなら、僕は僕でいられないね」
羽虫族。金色の身体と緑の複眼がトレードマーク。タイプはフェアリー・エスパー。薄い翅めいた撥水クロークと伸縮性のある有機ガラス製ポーチを身に着けてあちこちうろつき、お宝を求めて歩くトレジャーハンター。挑戦的で無鉄砲なのでトラブルに巻き込まれがちだが、大した戦闘力を持たない彼にとって戦闘とはすなわち逃げの一手。武装は閃光弾や爆竹、多少の殺傷力を与えた爆弾、奥の手のまきびし。
種族特性として感受性の高さがあり、これに清浄なるルシス・デインの城壁から持ち帰った欠片を組み合わせることで自身の感覚神経を拡大し、超越的な感知能力を発揮する。そのまま精神干渉などを行うこともできるが、フィードバックも甚大。
ディムロスを無二の友人として接し、それなりのトラブルと冒険を乗り越えてきた。頼りなさげに見えるがこれでもれっきとしたトレジャーハンターであり、身体能力そのものは高い。怖がりだが好奇心の方が強い、無茶だと分かっていても無理でなければやるなど、肝心な時には役に立つのだ。肝心でないときは逃げ回ってばかりだが。
ラプソディー(狂騒曲)はもちろん偽名だが、そもそも本当の名前は彼も知らない。物心ついた時には既にカブラー老のもとで修業を始めていた。
ハアム・デンドロン
「ハハア」
はがね・むしタイプ。デカい。筋肉。カブトムシ。もはや説明不要である。
遙か南方はトラジェリプスからやってきた流れの傭兵。馬鹿力と多彩な武器の取り回しで全てを粉砕する存在だが、性格はいたって温厚。気遣いもできる。今回は自称教授のレイドリアン老に連れられてフィールドワークにきたが、目当ての遺跡はことごとく瘴気に侵されていたため難儀していた。
かつて故郷に母と妹がいたが、何かの要因で二人を亡くしたことから放浪の身になったと思しい。彼の心には今も深く暗い陰が降りている。…が、それとこれとは別だと割り切るだけの強さもまた彼のものだ。
レイドリアン
「聞いとるのか!おい!」
老いたる自称教授。教授という単語から想像されるような教育施設はライザールには存在しない。ただし、そういった知識人が集う図書館やサロンを指して「学会」だとか「研究室」と呼ぶことはある。彼は考古学者であり、少なくとも閉ざされたルシスの城下町には知識を尊ぶだけの文明が存在していることの証左でもある。偏屈じじいとしても有名で、頑固。
カエデ
「私はカエデ。ごめんなさい、突然」
北国出身の美少女。かわいいだけじゃない。気性がほのおタイプ。
武器は投げナイフとカタナと体術、イアイドー。ニンジャではない。礼儀正しく理不尽が嫌いでお姉ちゃん想い。どこか天然で、クソでか荷物を引きずってはるばる旅をしてきた。なお、この荷物は最初こそ大した大きさではなかったが、あまりにも旅慣れないその姿を見て襲ってくる野盗の類を撃退しては逆にその荷を拾い集めてきたことによる。「ゴミを残してきたらいけないかと思って」。
シクターンやサイアン、そしてカエデとその姉はみな北の異郷からやってきた種族だが、微妙にその性質は異なっている。
火の山のふもとで暮らす部族は元来、身体に毒を持っていた。永い時のうちに鉄を鍛え舞うように戦うすべを身に着けるにつれてその機能は衰えていき、第二の呼吸器系統として働くようになったと考えられる。その結果、循環呼吸と呼ばれる深い呼吸によって息をその生体フィルターに通すことで、周囲の毒素や劣悪な環境をある程度緩和する形質を得たと思われる。他の者では立ち入れない高温と毒ガスの噴き出す火山の奥地へ踏み入り、巨大な鉱山ムカデの煮える卵を拾ってこられるのはそれゆえだ──無名の研究者の手記
*ライザール*
カブラー老
「未知の暗闇に踏み出す時、セベクは孤独じゃ」
本名ビザルネルカブラ。
ライザールに居を構えるセベクの元締め的存在。かくとう・あくタイプ。かなりカラテが強い。現役は退いたが、今は暗黒社会の情報を一手に取り仕切る役を担っている。ラプト自警団とはあまり仲が良くないらしく、滅多に自らラプトに降りることはない。
ディムロスと同じく地虫族の彼は、“黒い目”の異名で知られる。実際黒い複眼は珍しいものではないが、特に彼の冷酷かつ宇宙的に黒い瞳をさしてそう呼ぶのだ。
近所づきあいはよく、優しいカブラーおじいちゃんとしても人気。もちろん、彼がセベクであることはあまり知られていない。ただ醸し出す時と力のアトモスフィアだけでも、彼は一目置かれる存在なのだ。
マライ・ロン=シクターン
「へい、へい」
北国出身、長い灰色の触角とひょろりとした体つきが特徴の水先案内人。出自どころか種族も不明な輩が行き交うライザールにおいて最も信頼のおけるガイドであり、ひ弱な外見ながらセベクや自警団との不可侵協定を結んだ身。つまり、彼を傷つけることは許されていない。無秩序な混沌を抱く二つの街も、経済が存在している以上、どこかで折衝が必要なのだ。
シクターンはいくらか存在しているそんなガイドの中でも特に弱そうで、かつ足が速く時間に遅れない。つまり、これ以上ない適任と言うわけだ。観光客に多少舐められる程度がやりやすいのである。
腰が低く臆病だが、意外に年を取っており、ディムロスの倍はいく。
灰色の種族は火の山から注ぐ灰を浴びて育ち、極めて生育が遅い。代わりに彼らは空を見るだけで時刻がわかり、水の場所や食べ物の気配を第六感で察知することができる。身体が年齢を重ねる速度は通常の三分の一程度であると考えられるが、いかんせん個体数が少ない。私に無限の長寿があれば、彼らの里で一からその人生を観察したいものだが!──無名の研究者の手記
シャグナイア
「シャグナイアは光を愛しています」
ゴースト・フェアリー。いやなタイプだ…
シャグナイアは一つながりの単語ではなく、シャグナ=イ・ア、つまり旧きイア族の血を引く、常ならざるものであることを示す。が、カブラー老によって現在のように一つながりの名として呼ばれるようになった。
イア族はシクターンたち灰の民のその更に前身であり、呆れるほどの長寿と、絶望的な記憶障害を伴って生きていたとされている。永すぎる生のゆえに何とかかわることもなく、もはや自然の一部となって生活することが習慣となっていたと考えられ、進化の過程で淘汰されたその生き残り、結晶化した灰のような身体を持つシャグナイアもまたその性質を残している。
彼らは大きな「流れ」を掴み、ぼんやりとではあるが「可能性」を知覚する能力を持っている。未来予知とは異なり、具体的な事柄まで見通すことはできないが、彼女にとって他者はうねる道のように見えており、それを指して「光」や「闇」と呼んでいる節がある。……本当のところはカブラー老にも分からないが。
また、彼女は光に当たると姿が消えてしまう。そして薄く灰色がかった身体は、闇の中で視認することも極めて困難である。何らかの理由で記憶障害と自我の希薄性を多少なりとも克服した彼女は、カブラー老に見出されたのちの生活を経て少しずつ世界に馴染んできており、自身の特異な能力を恩人ビザルネルカブラのために活かすべく超人的な修練に励んでいる。
イア族!?…おっと、取り乱してしまったかな。イア族は実在しない…というのが通説だ。彼らはもうとっくに絶滅したか、あるいは自然界の中に溶け込んでしまった。奇妙な形の石が転がっていたり、何年も枯れたままの木が生えているのを見つけると、もしかしてこれはイア族の成れの果てなのではないか、とついつい考えてしまうほどだ。もしも、まだ生き残りがいて、しかも動いて喋ったりしていたら、僕は喜びのあまり心臓が吹き飛んでしまうだろう──無名の研究者の日記、その切れ端
たぶん美人。脚が長い。フェローチェみたいなイメージだけどなんかサソリが頭から離れない。突然しっぽ出てきそう。自在に身体の一部分を硬質化させて武器にするジツを使い、ステルス状態からの闇討ちを得意としている。忍殺‐SINOBI EXECUSION‐
*ブライト・ラプト*
(夜に在りて闇に惑わず、道無きを道とし、友の背を墓標とせよ。それこそが、我らを導くくろがねの正義なり)──ラプト自警団の掟。彼らがレジスタンスと呼ばれるのは何故なのだろう。
デジャヴとジャメヴ
情報量の不足により開示できません。
(然して我らくろがねの道を往き、以て無尽の刃とならん)──“執行者”の警句。
サイアン
「あんまり調子に乗られると困るんだよね」
ラプト自警団における武力担当機関、“執行者”。その一員。
青い身体の異邦人だが、最もよく表舞台に現れて働く。働くとはすなわち戦うということ。タイプはみず・はがね。
月のような刃紋の優美な長刀を携え、恐るべきイアイドーを得手とする達人。キャラを思いついたときの忍殺本編で活躍していたヒャッポ・ニンジャ=サンの影響が強く出ている。
主な役割はラプト深層へ潜ろうとするセベクの阻止や、ルシスに最も近い東の坑道の封鎖・警告である。中性的な言動と外観だが男。彼がラプトにとどまる理由ははっきりしていないが、他に行き場がないというのが最もなところであろう。
味にうるさい一面を持ち、時折シクターンの案内でグルメツアーをやる。その際はマスクと笠で顔を隠すらしい。
執行者の中では最も話が通じる部類であり、それが祟ってかやや苦労人めいたところがある。もっとも、他の連中がおかしいとも言うのだが。
青い身体の部族は更に珍しい。月の満ち欠けに合わせて移動を繰り返し、年に一度神秘的な湖の周りに部族全体が集まって特別な祭りを行うという。彼らは火を使わずにはがねを鍛える術を心得るというが、それが事実ならなにがしかの異術が働いている可能性が高い。ぜひとも…この命が尽きるまでに、見てみたいものだ。──無名の研究者の手記
オゾン
「来たよォー」
どく・フェアリー。
ラプト自警団、“執行者”。彼は位階を持たない遊撃者で、名を口にすることさえ憚る深淵から産み落とされた種族の一員だ。太く長い全身は未発達な柔らかい肉で出来ており、闇の中でぼんやりと燐光を放つ粘液にまみれている。左右非対称のおぞましい貌を揺らして笑い、全身から絶え間なく有毒な気体を吐き出し続ける。その毒を吸ったものは自我を侵され、思考・判断・理性を失う。拷問さえ必要なく、そうなった者はありとあらゆる秘密を自分から打ち明けてしまうだろう。なおも毒の吸引を続ければ、やがて自我は崩壊し脳が焼き切れて、死ぬ。そのため執行者オゾンは東の辺境や住人のいない深層などにしか姿を顕せないのである。
オゾンは前述の通り恐ろしい特徴を持つが、これでもまだ彼らの種族からみれば子供である。あと百年のうちに育ち切れば、彼は更なる巨躯と猛毒を手に入れ……かつて自分を産み落とした深淵へと、帰ってゆくだろう。
なぜかサイアンに懐いており、彼はそれに辟易している。
カーマイン
「(絶叫)」
彼女のことを知る者は居ない。全員、死んだからだ。彼女のことを聞くものはない。その名を口にすることで、夜の闇に踊る紅いシルエットに怯えることになるからだ。彼女はカーマイン。かつて執行者の座にいたとも、あるいはただの流れ者だったとも言われるが、今となっては定かでない。刃のもとに血を求め続けた彼女は狂い、神話やおとぎ話でしか語られることのない“鳥”を殺すために世界の果てへ向かったという。
デルタ
「執行」「執行」「執行」
ラプト自警団、“執行者”。三人で一人の執行者であり、常に互いの存在を強く知覚しテレパス会話を行う三兄弟。エスパータイプなのは間違いない。
王都ルシスから持ち出された隕鉄の剣を携え、三人それぞれの間を行き交う奇怪な光の斬撃を扱う。いつしか彼らに囲まれていることに気づいたとき、既にその命はない。
PKカメムシ三兄弟。ディムロスより背が低く頑強な身体を持っている。複眼は緑色だが、ジェンダールがエメラルドのような緑とすればデルタの眼は山奥にひっそりと存在する腐った沼のような緑色だ。彼らにしてみれば互いの眼は微妙に違う色合いらしいが、当然第三者に分かるはずもない。オゾンは匂いで判別できるという。
イオルブすき(自白)
ヴォイド
「バァーハハハハァーッ!!!」
かくとうタイプ。
ラプトの治安を維持するという名目のもとに存在している「自警団」、その深部では、およそ人知の及ばない暗黒から忍び寄る脅威との闘いが続いていた。執行者ヴォイドはその役割を担う“八本足”の末裔であり、彼自身もまた暗闇から這い出た恐るべき存在だった。違うところがあるとすれば、彼は本質的に狩人であり、それを鈍った知性と有り余る暴虐によって一時的に忘れているだけなのだ。
ヴォイドの全身を鎧う筋肉は尋常でない硬度を誇り、その裡を流れる金色の血液とともに、ラプト深層の暗闇で最も恐れられる存在のひとつだ。鍛えられた鋼による斬撃をものともせず、逆に粉々に砕き、持ち主までも粉砕してしまう。
ただ腕を振り上げ、振り下ろすだけで、どんなものでも叩き潰してしまえるほどの膂力。並大抵の毒物や汚染ではびくともしない、雄々しく滾る血。刃を通さぬ鉄壁の肉体。それらが合わさり、ヴォイドがいる。
ラプト深層はあちこちに瘴気だまりがあり、それによって汚染され、心を失った消失者たちが獲物を求めてさまよっている。彼らは命の枷から解き放たれており、ただ襲い掛かることでしか己を満たすことのできない抜け殻だ。そして、そんな消失者がラプトから出ていくのを阻止するための防壁として、ヴォイドのような執行者がいる。基本的にはオゾン一人でも消失者の群衆を抑えることは可能だが、ときには更なる武力が必要なこともある──あるいは、彼がただ暴れたいだけであることも。
オゾンは瘴気に対して特に耐性があるわけではなく、自身が吐き出す毒霧によって疑似的な中和を行っているだけだが、ヴォイドは瘴気への完全な耐性を持っている。あるいは、既に瘴気と共存している。ただ暴力によってそれを克服した例、と言うこともできる。要は極限状態。オズの支配権がラプトまで及べば、彼は即座にもっとも邪悪でもっとも強力な駒となるだろう。
彼が「そう」なることは極めて少ないが、時に彼を上回るほどの強者が現れた場合、彼は破壊者としての自我を克服し、冷酷な狩人として目覚める。針のような毛の一本一本にまで黄金の血を滴らせ、明確な言語を発し、そして効率的に相手を殺すのだ。意志持つ大嵐に立ち向かえるものなど、いるはずもない。
代行者ヒサメ
みず・ゴースト。
フードの下から三つの光る眼だけをのぞかせ、いつもぺたぺたと湿った音を立てて移動する。戦闘力は皆無に等しいが、その身体はいかなる原理によってか傷ついたはじから再生してしまう。首を落とされても、焼かれても、凍らせても死なない。その特異性によって、彼は自警団の最深部に出入りする特権を得た。
とはいえ、その代償として支払ったものがなんであるのかはヒサメ本人しか知らない。少なくとも、彼は二度と自らの意志で行動することなどできないのだ。
プラナリアのハイヴみたいなイメージ。軟体動物かもしれない。
身体の一部を切り離してくっつけることでアンカーのように使うことができる。打ち込んだ相手をヒサメが知覚し、あるいは別の者に別の一部を与えることでマーカーとしての機能を与える。攻撃力は皆無であり、彼一人が脅威になりうることはありえない。
ラピス
「いつか貴女に届くのよカーマイン」
はがね・ゴーストタイプ。虹色の複眼、長身の女。トンボみたいな?
基本的にブライト・ラプト内部で使われる飛び道具といえばナイフや手裏剣であり、遠距離武器は必要ない。大抵が坑道のような暗く狭い場所であり、開けたところで荒事を起こす輩は少ないからだ。
執行者ラピスの得物は身の丈ほどもある巨大な弓である。つがえる矢も特別製で、有り余るその推進力・貫通力は主として対物破壊に用いられるものだ。鋼を通さないヴォイドの筋肉装甲だろうと容易く貫通するほどの威力を誇り、通常の標的に向けて執行者ラピスが運用されることはない。
どんな場面でも狙撃を成功させるだけの精神力を持つと同時に狂気にも侵されており、その言動はやや意味不明。かつて執行者として最強の地位を持っていたカーマインという存在に執着しているが、彼女が持つ狂気の中でそれはだいぶゆがめられているようだ。
+随時更新します+
*リムゼの救い*
オズ・キーラン
おや。何も見せてあげませんよ。……そんなに気になりますか?(邪悪な存在は嗤った)
ヴァルツ
「…?」
かつて西にその住処を持っていた高貴な一族、その末裔。その故郷は悲劇に見舞われ、生き残った者は居ないとされている。
言葉を失い、かつては親しんだ音楽さえ理解できなくなり、今やその身は傀儡と変わらない。今でもヴァイオリンの音が聞こえると、微かにその足を動かそうとするのが分かる。
それでも彼に悲しみや嘆きは見当たらない。彼は幸福だからだ。
カデーナ
「?」
前後不覚の病んだ女。
彼女は忌まわしい“八本足”であり、それもかなり旧い。ネアロスの檻がそう呼ばれる以前からそこに暮らし、ネアロスの教えを守って生きてきた聖女。獲物を喰らう前には必ず懺悔と祈りを捧げ、埋葬まで行ってきた。
黒き呪いの風を操る存在が全てを崩壊させ、彼女を傀儡と化した時、その全てが混ざり合った。彼女は穏やかに笑い、食事を好み、全ての命に対して慈愛を持つ。
胸の前で祈るように組まれた腕はその身体と癒着しており、力任せに引き抜くことで汚れた血の鎌へと変貌する。それを以て彼女は慈愛を行使し食事を行い穏やかに祈り殺しては祈り殺して祈り殺して祈り食って祈り食って殺して祈り
おや。駄目ですよ。私がいいと言ってからです。
*旧きもの*
ミュイライア
「受け継いで。でも、背負わないで」
大いなる旧きネアロスに仕える、異端の八本足。海のような色の複眼、白磁の手足を持ち、異術に通じている。
彼女が操るのは海色の『慈悲の霧』。重く優しいそれを意志のままに操作し、森そのものの隠匿や獲物の誘導、あるいは超自然の防御手段として用いることができる。心優しい性格で、果物を好んで食べたという。戦士ラウザとは恋仲。
ラウザ
「我こそラウザ、世界の果てを貫く槍」
大いなる旧きネアロスに仕える戦士。彼の腕は七本しかなく、通常戦いによって腕を失った八本足は低い位階とみなされる。
だが、彼の場合は違った。彼は一羽の鳥と戦い、そしてそのくちばしに腕を奪われたのだ。この世ならざる武勇の印だった。ミュイライアとは恋仲だったが、考え方の古いラウザはよくミュイライアに振り回されていたらしい。戦士ラウザもただ彼女にはかなわない、と噂されたものだった。
槍を好んで使い、敵対するものには誰であれ容赦を知らない真の戦士。
オヴリナム
「うーむ」
大いなるネアロス、その幼少を知るいわば助言役。ネアロスとは別の方向で崇められる存在でもあり、非力だが博識。彼が知らないことはないとまで言われる。
一度考えだすと何日でも平気で座り込んでしまうくせがあり、そうなったオヴリナムに花輪をかけたり食べ物を備えたりする同胞があとをたたなかった。
ゾルゲ
「何故だ!何故だ!私は間違ってなどいない!ネアロス!私は間違っていない!これは、我々が更なる高みへ、かつて在った場所へ戻るべき力だ!ネアロス!」
──愚かなゾルゲ、最も器用な八本足の技術者の最期の言葉。彼は旧時代の遺物を研究するうちに彼だけの真実にたどり着き、奇怪で忌まわしく、かつ恐るべき機械を発明していった。彼の最期の発明は「虚無の鉄心」と呼ばれる機械仕掛けの心臓であり、かつて地上を覆っていたロストテクノロジーが組み込まれたそれは所有者に第二の命を与えるとともに、自身の魂を規定し、またそれを理解・行使するシックスセンスを──つまり、異術を──目覚めさせる。
ゾルゲ本人がネアロスの手で粛清され、彼の発明は全て破壊・封印されたが、虚無の鉄心の行方だけはついぞ分かっていない。
カデーナ
「怪我をしたの?大丈夫、大丈夫。痛くない、痛くない」
大いなるネアロスのもと、八本足の信仰を集める淵の森の聖女。慈愛に満ち、獲物に対してさえ礼節を忘れない。子供たちの世話を担う役割も合わせて持ち、親を亡くした子らの面倒を一手に引き受けていた。怒ると怖いことで知られており、ネアロスその人さえカデーナに対してはやや気を遣って接していたという。
これに限らず、淵の森の上位者たちは皆が自身の旧さと力を理解しており、そのうえで仲間たち全てを平等に扱っていた。世界に分散した八本足の生き残りのコロニーの中で、淵の森は最も平和で穏やかな場所だったに違いない。
ネアロス
「皆の喜びは私の喜びだ。そして私の喜びは森の喜びでもある。願わくば、この喜びが永久に大地を満たさんことを」
──大いなるネアロスの祈りのひとつ。皆で唱和し、ネアロスが応えるもの。
最も古い八本足の一人であり、非常に長命であること以外はよく分かっていない。彼は森そのものとして崇められ、淵の森に暮らす八本足たち全てを見守っていた。
*無所属*
アオイ
「私にはするべきことがある」
カエデの姉。何かの意志に触れて使命を得、ルシスを目指している。
カルヴィン
「~♪」
殿。ライザールで平和にその日暮らしを送っている。たまにラプトまで足を延ばすが、三層より下に降りることはしない。まともな思考をしていれば、それ以上降りるようなことはしないものだ。
ちょっぴり贅沢をしに立ち寄ったレストランでお忍びで来ていたサイアンと同席になったことがあり、それから時々ひっそりと一緒にご飯を食べることがある。苦労人は苦労人を嗅ぎ分けるもの…らしい。
ヴォルドール・トーランド
ビザルネルカブラのかつての友であり、ルシスへ向かって二度と戻ることのなかったセベク。その名は志と共に受け継がれ、今なお「黒い目」の前にある。
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