220305 演奏会に行くのは楽しい

今日は、東芝グランドコンサート2022へ行ってきた。秋にキャンセル分のチケットが取れた時からずっと楽しみにしていた。コロナの影響でスペイン国立管弦楽団の来日が叶わず、代わりに、反田恭平さん率いるジャパン・ナショナル・オーケストラの特別編成によってコンサートが完成された。

結論から言うと、とても、とても楽しかった。


このコンサートのチケットを取ろうと思ったのは、ポスターに反田恭平さんの顔を見つけたからだった。私は以前から反田恭平さんの演奏が好きだったのだが、ショパンコンクールを機にその想いがさらに爆発していた。反田さんの演奏はすべてリアタイしたし、コンクールが終わってからもアーカイブに救われる日々だった。そんなときにホールのポスターに反田恭平さんの顔だ。行くしかない。チケット争奪戦、勝ち取るしかない。反田さんの演奏が聴けるかもしれない、ということだけで、今にも踊り出しそうなくらいに嬉しかった。

1回目のチケット争奪戦、あっけなく敗退。しかし落胆しているのも束の間、数日後のチケットキャンセル分争奪戦で見事勝利した。もうその時は踊り出した。

あっという間に月日がたち、コンサート当日になった。スペイン国立管弦楽団が来日できないことや、その重厚感に溢れていたプログラムが全くの変更となってしまったことは悲しかったが、初めて聴くJNOの演奏、普段馴染みがなかったギターコンチェルト、そして反田さんがショパンコンクールfinal roundで特別な想いをもって弾いていた、ショパンのピアノコンチェルト1番が聴けることが何より楽しみだった。

演奏会から帰ってきた今の自分の素直な気持ちは、先にも書いたが、本当に「楽しかった」だ。行ってよかった。あたたかくて充実感にあふれた、心地の良い2時間半を過ごした。

演奏会に行くと、新しい出会いがある。今日聴いたショパンのピアノコンチェルト1番は、紛れもなくその新しい出会いのひとつだった。JNOの特別編成、ガエタノ・デスピノーサさんの指揮、反田恭平さんのピアノによって生み出された今日のコンチェルトは、アーカイブで何度も何度も聴いていたあのときのコンチェルトとは全く別物だった。何より1番感じたことは、反田さんの今日のピアノの奏で方は、まるでシフォンケーキをさわるかのように、ほんわりと優しかったということだ。そして弱音の丸みとあたたかみ。半端じゃなかった。空気に溶け込むようにとろんとした音なのに、3階で聴いていた私の耳にもしっかりと聴こえてきた。(こんなに小さな音を出すのは怖くないのだろうか…と思うほどだった。)そして、オーケストラとソリスト、というよりも、仲間とぼく、というような、そんなほくほくとするような空気感を感じたのだ。あのときの、汗が滴り飛び散るような渾身の演奏を思い描いていた私は思わずハッとした。これが生演奏の醍醐味であり、会場に足を運ぶということの醍醐味なのだと痛感した。

コンチェルトのこの部分が好き、この部分が最高、というのは書き始めればキリがないので、またいつか時間をかけて、ショパンコンクールの反田さんのfinal roundの演奏について書けたらいいなと思う。実は今、文章を書くことにこんなに時間がかかっていることにびっくりしている。(もう書き始めて1時間だ。)今日のコンサートの第一部で見て聴いた、村治佳織さんのギターの繊細で美しい指捌きやその痺れるような音色、JNOの一体感にあふれていながら果てしなく自由でのびやかな演奏も、本当に本当に素晴らしかった。詳しく書くには今は時間が足りないので、今日はここで終わることにする…

ヤバい、今思い出したのだが、今日の反田さんのアンコールはまさかの Largo だった。これも胸熱すぎる選曲だった。眠れない夜には(眠れる夜でも)反田さんのthird roundの演奏を聴く、というのが日常の私にとって、Largoを生で聴けたというのは本当に嬉しくて意味の深いことだった。あの大きな空間に、出だしはあっさりと、しかし徐々に丸みを帯びた音色があたたかく広がっていった感覚を忘れたくない。

いくらでも書きたくなってしまうが、そろそろ自分も練習しに行こうと思う。本当に良い日だった。

素敵なコンサートをありがとうございました。



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