J-REITはゴミ箱なのか2022年-ゴミ箱どころか今年は大掃除の年だった-

2020年からJ-REITはゴミ箱なのかゴミ箱ではないのか、を始めて3年目。
年内も残すところあと1か月ですが、今年は久々にJ-REITはゴミ箱ではないかもしれないと言い切れる年になりそうです。

年初にシノケンリートのIPOが発表された時は間違いなく今年のJ-REITはゴミ箱と断言できると思いました。シノケンリートの物件のほとんどが固定型ML(※不動産会社が固定賃料を払うスキームであるため、稼働率に関係なくREITの収入は固定)のため稼働率は未公表ながら、推定10%台(※空室率じゃなく稼働率)の物件がいくつも確認され、一部の界隈ではIPO失敗を見越してシノケンリートGOという動きも活発に。

また、日本都市ファンドの駅徒歩9分の町田の大規模シングルレジ(23年9月竣工)、サムティの住宅の取得価格やエリアも非常に痺れる事例ではありましたし、誰もが過熱状態と認める不動産マーケット環境下でそれはゴミではないか?と言わざるをえない物件がゼロだったとは言いません。

JMF町田。駅から遠いわ!

しかし、それ以上に今年はJ-REIT頑張ったな!と思ったのは物件売却。J-REITと言えば究極のエンド投資家と言うイメージであり、実際、ポートフォリオのサイズが大きいほど投資家(特に海外投資家)に評価されます。身も蓋もない話をしてしまえば、保有物件の規模が運用会社の収益に直結するだけに、これまでREITはそれほど物件売却に積極的ではありませんでした。

いや、正確に言えば2021年は売却に積極的で件数も多かったです。発表日ベースだと125件(分割売却はそれぞれカウント)。それはコロナの傷で落ち込んだ収益をカバーするために売ることが正当化しやすかった特殊事情の他、ホテル系は赤字回避するために売却せざるを得なかった。あとインベスコのTOBもJ-REIT市場からすると売却で、これだけでも18物件となります。

それに対し、今年は年初から投資口価格もファンダメンタルズも回復しており、J-REITの歴史からすると規模拡大に走りがちな一年を覚悟してました。23年4月は日銀総裁が交代して世界で一人続けている金融緩和の風向きが変わる可能性もあるし、政治家も役人もインフレが必要と言いながらいざインフレが間近に迫り支持率にマイナスの影響が顕著になるとそっぽ向いて現実から目を逸らす現在、インフレがコントロール出来なくなる可能性もあります。となると、J-REITのスポンサーは何としても22年にPOしときたい。それ故、きっと今年はゴミ箱ネタが豊富に違いないと思ってました。だってシノケンリートがIPO発表したし。

しかし幸か不幸か、クソ物件オブザイヤーに投稿するネタすらほとんど見当たらないほど慎重な取得スタンスが目立ちました。いや、むしろクソ物件を買う側から売る側に回った、すなわち脱ゴミ箱の姿勢すら目立ちました。

ザイマックスリートは業界でも最小規模を争う小さなREITなのにルネッサンス千早を売却しているし、

ユナイテッドアーバン出身の宰田氏が社長に就任したタカラレーベンリートはきっと物件を買いまくると思ったら、確かに買いまくって微妙な物件もいくつかあったけど、地方のどうにもならない物件もきっちり売って、赤坂のオフィスだけどこれどうにもならないんじゃないかと心配だった赤坂川瀬ビルも売却しました。

売却物件一覧はこんな感じ。

一番衝撃だったのはグローバルワンの大手町ファーストスクエアの売却。J-REITで一番東京駅に近いビルは、サンケイリートの大手町サンケイビル、森トラホテルのシャングリラ、JREの三菱信託本店ビル、NBFのグラントーキョーサウス、そして大手町ファーストスクエア。取得してからずっと賃料下がってて収益性は低いし、2003年から保有してるのに簿価と取得価格はほとんど変わらない(資本的支出が嵩んでる)。すなわち地主が立地自慢するだけで投資家にとってはお荷物と言えばお荷物でしたが、それすらスパっと売りました。

分かりにくいけど青いのがJ-REIT物件(J-REIT MAPより)


大手町ファーストスクエアの利回りの低さ

これは100%正しい判断なんです。REITと言うのはポートフォリオの相似形で成長していく事業体なので、どんなに良い物件を持っていても、それを同じ収益性で取得し続けなければ成長できないんです。で、大手町のオフィスを魅力的な利回りでガンガン買えるかと言えばそんなことは不可能。かと言って、二度と買えない大手町を手放すかと言えば常人には不可能。それをやってのけたのはすごい。

もちろんこのトレンドの先鞭をつけたのはキングオブJ-REITのNBFです。2020年にはクソ物件オブザイヤー リート・ファンド部門を制してしまった天下の三井不動産系リートですが、2021年3月にJ-REIT業界最大含み損物件だったNBF南青山を売却損なしに譲渡。で22年は年初から地方や江東区の物件を譲渡する一方、飯田橋と中之島のピカピカオフィスを取得。ポートフォリオの強化を図りました。

来年は分配金が右肩下がりなんですが、それでもこの難しい局面をこういう形で乗り切ったのは素晴らしいです。文句なし。

23年のJ-REITは大きく荒れます。もう荒れる要因しかない。公募増資なんて考えられないくらい荒れるでしょう。なので、J-REITはゴミ箱なんて言われないようこのトレンドを継続し、年初からビシバシ売却決めて欲しいもんです。で、24年、25年にはがっつり逆張り決めて欲しい。しかし、ちょっと上手くいったら調子乗ってリスクを取り過ぎるのがJ-REITの歴史。きっと楽しい1年になると思います。今年もお疲れさまでした!

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