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仕事を辞めて旅人かぶれ

仕事を辞めた。旅がしたかったから。能登に行きたかったから。
行きたい時に行きたい場所に行けて時間にも場所にも社会的な「こうあるべき」にも何にも縛られない気ままな生活。憧れだったはずなのにまだ部屋の解約手続きもしていない今、もうやめたい。

ここ3日間、旅の練習も兼ねて県内のお世話になった人達の元でバイトをし家に泊まらせてもらった。決まった仕事をせず家もない暮らしとはこういうことだと思った。
3日間関わった人はみんな良い人だった。私の急なお願いを快く受け入れご飯を奢って今後放浪することを応援してくれた。
それなのに今、猛烈に人から離れたい。
1人貧乏旅って何となく寂しそうとか心細そうって感じがするけど実際は何かにつけ誰かを頼ることとなって頼る時はめちゃめちゃ気を遣って感じの良さを出すし何か自分にできることはないか探すから人付き合いの疲れが半端ない。感謝疲れ。
誰も入ってこれない自分だけの部屋に籠ってただただ寝たい。
これから帰る家が無くなるのに、こんなんじゃ先が思いやられるどころの騒ぎじゃない。考えれば分かったことだけどその時は考えてしまう前に先手を打ちたいと思ったのだ。そんな浅はかで前向きでミーハーな自分が嫌い。

街角の建物に映ったアウトドアハットを被ってバックパックを背負う自分に嫌気がさす。何を調子に乗って旅人気取ってるんだ体力も気力も無いくせに。せめて日焼けした薄汚い姿であれ。

頭から降る整髪剤の匂いに苛立ちながら「上を向いて咲くのよ」といただいた山伏の花に地面を見せて歩いている。