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袋かき氷

中学生の頃、友人に誘われてなんとなくソフトテニス部に入部した。
もう20年近く前の事なので、日々の練習内容など細かい事は思い出せないのだが、ヤンキーみたいな転校生が入部して部の雰囲気が途中から滅茶苦茶になった事と、リーダーシップがなく、試合に出れるほどさほど上手でないのに多数決でキャプテンに選ばれた事がとても嫌だったのはよく覚えている。

そんな私にとって灰色でしかない部活動の記憶だが、夏休みの期間だけ顧問の先生が差し入れてくれる『袋かき氷』を食べる休憩時間のひとときは本当に至福だった。ふだん反抗ばかりしている私達もその時ばかりは大人しく(勿論ヤンキー転校生も!)黙々と『袋かき氷』を夢中で口の中に流し込んでいた。

平成17年。中学生最後の夏。流れる汗をポロシャツの袖で拭い、泥だらけになった白いスコートで体育座りをしてカラッカラの喉に一気に流し込む。
100円以下で買える、何てことないかき氷が私たちにとって最高のご馳走だった。


今は見た目も綺麗な“インスタ映え”するかき氷をお洒落なカフェで食べられるようになった。それなのに、あの『袋かき氷』が無性に食べたくなるのは何故だろう。

炎天下の下ボールを追いかけて汗まみれになる事も、嫌々ながらも大声を張り上げて部員に号令をかける事も、体育座りで袋かき氷を食べる事も、二度と出来ない。
晴れ渡る平成30年青空の下、汗をかきながらもう一度あの『袋かき氷』が食べたい。

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