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超有望米国株「FARFETCH」に投資する理由

日米株ともに7−9月期の決算シーズン真っ只中ですが、アメリカ大統領選も一応は結果が出て、ここから心機一転、再び戦略を練り直し投資に臨むという人も多いかと思います。最近は日本株のパフォーマンスが以前より好調で話題となっていますが、大統領選が決着した今、個人的には米国株の動きに一層注目しています。

さて、そんな米株ですが、私の本命銘柄が前回(4-6月期)の決算後にtwitterで言及されているのを多く見かけるようになり、さらに先週、大きなニュースがあり注目を集めました。

その銘柄とは、タイトルからご察しできる通り、FARFETCH(ティッカー : FTCH)です。

ファッションに興味がある人は名前くらいは聞いたことがあるかと思いますが、最近まで知らなかったという人も多いのではないでしょうか?

このFARFETCHですが、実際に投資する際に情報を集めようとしても、日本語では詳しく書かれた記事等が見つからず、十分な情報が集まらないのではないかと思います。

筆者は、ファッション関連のインプット量が圧倒的に多く、FARFETCH(FTCH)の動向も2年前のIPO時からずっと追って参りました。

そこで、この記事では、FARFETCHを投資先として検討しようという方へ向けて、FARFETCHの事業内容や魅力といった、同社に投資をする際に知っておくべき情報をお伝えします。


1. FARFETCHとはどんな企業?

一言で言うと、

FARFETCH=ラグジュアリーファッション × テクノロジー

の企業です。

おそらく、一般的にはFARFETCH=ラグジュアリーファッションECサイト「farfetch.com」と認識されていると思います。実際、売上の大部分がこの「farfetch.com」によるものです。

しかし、FARFETCHに投資をしようと考えている人にとっては、この認識だけでは十分とは言えないので、もう少し踏み込んで説明したいと思います。

まず、ECサイト「farfetch.com」はマーケットプレイス型です。これ、超基本ですが、以外に見落としている人もいるので、覚えておいてください。

また、FARFETCH(企業のこと)はファッションEC事業だけでなく、ラグジュアリーブランドに向けてソリューションを提供する事業も展開しています。加えて、積極的なM&Aにより、英国の老舗セレクトショップや人気ブランドを多数抱えるアパレル企業などを傘下に収めたため、こうした事業も展開していることになります。

これらについては、後ほど改めて記述するとして、ここではまず、


・FARFETCH=ラグジュアリーファッション × テクノロジー (主にECとソリューション)
・売上の大部分を占める「farfetch.com」はマーケットプレイス型のECサイト
・FARFETCHはファッションEC事業だけを展開しているわけではない


この三つを覚えてください。

次に、FARFETCHの軌跡について簡単に説明したいと思います。

FARFETCHは、2008年にCEOのJosé Neves(ジョゼ ネヴェス)氏によって設立されました。farfetch.com事業は順調に成長を遂げ、2015年には英国の老舗セレクトショップ「Browns(ブラウンズ)」を買収します。そして、2018年にアメリカのニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場。

翌年2019年には、スニーカーとストリートウェアにフォーカスしたマーケットプレイスを運営する「Stadium Goods(スタジアムグッズ)」、人気ファッションブランドを多数抱えるイタリアのアパレル企業「New Guards Group(ニューガーズグループ)」を立て続けに買収しました。

業績に関しては、投資を優先してきたため上場後も赤字が続いており、今年2020年も赤字の予定ですが、会社側は来年2021年にEBITDAベースでの黒字化を想定しています。

以上、かなり大雑把ですが、FARFETCHがどんな企業か、大枠は把握できたでしょうか。次はFARFETCHの事業について説明したいと思います。


2. FARFETCHの事業

FARFETCHの決算書や四半期毎のプレゼンテーション資料を見ると、事業セグメントが大きく3つに分かれているのが分かります。まず一つ目がDigital Platform、次にBrand Platform、そしてIn-storeです。これらを順番に解説していきたいと思います。


I. Digital Platform(デジタルプラットフォーム)

メインとなるセグメントで、全GMV(流通総額)の約90%、売上高の約80%を占めます。このセグメントは主に以下の6つの事業で構成されます。

ⅰ) FARFETCHマーケットプレイス(=farfetch.com)
ⅱ) Browns(ブラウンズ)のEC事業
ⅲ) Stadium Goods(スタジアムグッズ)のEC事業
ⅳ) New Guards Group(ニューガーズグループ)の展開する各ブランドのEC事業
ⅴ) FPS(Farfetch Platform Solution)
ⅵ) STORE OF THE FUTURE(実店舗とデジタルを融合させたデジタルテクノロジー&サービス)

それでは、一つ一つ解説していきます。


ⅰ) FARFETCHマーケットプレイス(=farfetch.com)
この企業の屋台骨となる事業で、Digital Platformセグメントの流通総額の約90%を占めます。ブランド、ブティック(日本で言うところのセレクトショップ)、百貨店など合計1300以上が出店するラグジュアリーファッションに特化したマーケットプレイスです。

基本的には、各出店者が商品をマーケットプレイス上に出店し、商品が売れると、その金額の何%かがFARFETCH側の取り分となります。この場合、マーケットプレイス上で実際に売れた商品の総額が流通総額(=GMV)、FARFETCH側の取り分が売上(=revenue)として計上されます。

但し、FARFETCHマーケットプレイスには、後述するFARFETCH傘下のBrownsやNew Guards Groupのブランドも出店していて、これらの商品に関しては、売れた商品の総額が流通総額=売上として計上されます。


ⅱ) Browns(ブラウンズ)のEC事業
Brownsはファッション業界では名の知れたイギリスのセレクトショップ(ロンドン中心部に実店舗あり)で、2015年にFARFETCHに買収されました。このBrownsのウェブサイト(BrownsFashion.com)でのEC事業を指します。

こちらに関しては、FARFETCHマーケットプレイスとは異なり、商品を仕入れて販売する形態ですので、在庫を抱えるビジネスです。売れた商品の総額が流通総額=売上として計上されます。

因みに、FARFETCHの決算を細かく読み込む人は覚えておいて欲しいのですが、決算書を読んでいると、First-partyとThird-partyという言葉に遭遇します(First-party revenueとかThird-party take rateといった形で使用されます)。

BrownsはFARFETCHの所有する事業ですから、Brownsの商品の売上はFirst-party revenue(revenueは売上)となります。また、FARFETCHマーケットプレイス上にもBrownsの名で出店しており、FARFETCHマーケットプレイス上でのBrownsの売上も当然First-party revenueとしてカウントされます。


ⅲ) Stadium Goods(スタジアムグッズ)のEC事業
Stadium Goodsは、プレミアムスニーカーやストリートウェアにフォーカスしたマーケットプレイス(ニューヨークに実店舗もあり)で、このEC事業を指します。FARFETCHが2019年に買収しました。

新品に限らず中古品も取り扱っていて、中には何十万円もする高額な商品も出品されています。FARFETCHマーケットプレイスと同様に、マーケットプレイス上で実際に売れた商品の総額が流通総額(=GMV)、Stadium Goods側の取り分が売上(=revenue)として計上されます。

また、Stadium Goodsの名で展開するオリジナルブランドの商品も販売していて、これらに関しては、売れた商品の総額が流通総額=売上として計上されます。


ⅳ) New Guards Group(ニューガーズグループ)傘下の各ブランドのEC事業
New Guards Group(NGG)は、FARFETCHが2019年に買収した、人気ファッションブランドを多数抱えるイタリアの企業です。このNGGが保有する各ブランドのEC事業を指します。

特に有名なブランドが「OFF-WHITE(オフホワイト)」で、ブランドの創始者であるVirgil Abloh(ヴァージル アブロー)氏は、2010年代にファッション業界で最も注目を集めた人物です。自社で在庫を抱え、消費者に直接販売されるモデルですので、売れた商品の総額が流通総額=売上として計上されます。


ⅴ) FPS(Farfetch Platform Solution)
オムニチャネルや世界190ヶ国への配送に対応したECサイトの構築(FARFETCHマーケットプレイスとの連携も可能)、iOSアプリの制作といったサービスをブランド(企業)に提供するB2B型の事業です。


ⅵ) STORE OF THE FUTURE
実店舗とオンラインを統合した、よりパーソナルなカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)を可能にするテクノロジーとサービスをブランド(企業)に提供するB2B型の事業です。

2020年現在、CHANELと独占契約を締結している事業で、この独占契約終了後は、サービスの提供が他のラグジュアリーブランドや百貨店等へ拡大される予定です。


II. Brand Platform(ブランドプラットフォーム)

売上ベースでグループ全体の約18%(2Q決算)を占めるセグメントで、New Guards Groupの各ブランドによる卸売り事業(BtoB)のみで構成されます。ここで言う卸売り事業とは、各ブランドの商品をセレクトショップなどの小売業者に販売する(卸す)ビジネスを指します。このセグメントでは、売れた商品の総額(流通総額)=売上となります。


III. In-store(インストア)

このセグメントは、Browns、Stadium Goods、そしてNew Guards Groupの実店舗事業で構成されます。売上ベースでグループ全体の約1%程度です。



3. FARFETCHの魅力

さて、FARFETCHがどのような事業を展開しているかは大体お分かりいただけたかと思うので、いよいよ本題のFARFETCHの投資先としての魅力についてお話したいと思います。


(1) グローバル・ラグジュアリーファッションECの“Winner”最有力候補

ファッションECと言うと、我々日本人には、まずZOZOTOWNが思い浮かぶと思います。最近まで低迷が続いていましたが、非常に高い利益率を誇り、在庫リスクを抱えないビジネスモデルに魅力を感じた人も多いはずです。

実際にZOZOの株価は上場後右肩上がりが続き、2018年に最高値をつけた時には、時価総額が1兆円に達しました。

FARFETCHの主要事業であるFARFETCHマーケットプレイスは、簡単に言えば、ZOZOTOWNのラグジュアリー版で(厳密にはZOZOはマーケットプレイスではなく、両者の間には在庫の所在などに違いがあるのですが、収益が発生するモデルと、自社で仕入れている商品以外は在庫リスクを抱えないという点は同じ)、且つグローバルなプラットフォームです。

FARFETCHマーケットプレイスやZOZOTOWNのように、商品が売れる度に販売価格に対して一定の%を手数料として受け取るモデルの場合、手数料率が同じと仮定すれば、商品が高単価であればあるほど1取引あたりの収益は増えます。また、マーケットがほぼ日本だけのZOZOに比べ、マーケットが世界中と言う事であれば、企業の成長を考えた時の「天井」の高さが全く違います。

つまり、単純に考えて、FARFETCHはZOZOよりも高い収益が期待でき、伸び代も遥かに大きいと言えるのです。

FARFETCHマーケットプレイスのようなグローバル・ラグジュアリーファッションECというビジネスが魅力的なのは上述の通りですが、もちろんFARFETCH以外にも同じような事業を展開する企業はあります。

ECビジネスを語るときに、しばしば “Winner-take-all(勝者総取り)” という言葉が使用されますが、FARFETCHは、グローバル・ラグジュアリーファッションECにおける“Winner”最有力候補だと私は考えています。これが、FARFETCHに私が投資する一番の理由です。

では、何故FARFETCHが“Winner”最有力候補なのか。その理由をこれから説明します。

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