Vtuber調査レポート0─N.U.Iに依頼されるまでの話─
やぁ、僕は20代前半のフリーター。
否定的に言えば……落伍者。肯定的に言えば……自由人だ。
ネガティブな自己紹介はこれくらいにして、まずはタイトルにある通りのN.U.Iなる組織から記事作成を依頼されるまでの概要を記すとしよう。
端的に言えば、僕は非正規雇用でN.U.Iに雇われた。
前金1万円、1文字につき0.5円、特別報奨金でなんと100万円だ。
僕はライターなんかしたことが無い、する気も無かった。だがこれが現実。
ちゃんとした文書なんて就職試験の作文を書いた時、
それくらいしか記憶にない。
いまだに就職試験に落ちてフリーターをやっているのだから、
文才が無いのは論より証拠だろう……。
……話を変えよう。
僕は貯金も無ければ生活費だって危うい高等貧乏民なのだ。だから、
できうる仕事ならなんだってやる。それが大金を稼げるのならなおさらだ。
Network Unconfirmed creature(未確認ネットワーク生命体)
の頭文字を取った‘N.U.I‘なる機関からの外注で僕は仕事を与えられた。
活字という仕事を。
N.U.Iなんて聞き覚えの無い組織だ。と読者の皆様方は段々と懐疑的になり、ショボい詐欺被害に遭った時のような陰謀の闇を感じているだろう。
かく言う僕もそうだ。
Google検索においてもN.U.Iなる企業も、パトロンも、研究機関も、
それらしい物は一つもヒットしなかった。
この時代、情報ソースこそが信憑性の核なのに、広報サイトも無いとは
どういうことなのだ。まったく。
記事を書く僕まで疑われてしまうじゃないか。
彼らとの契約内容は簡単に言うと、文体や表現方法は問わないが、
見て聞いて知った事実。とりわけ僕の感性に乗っ取ったレポートを作成し、
web上に公開する事が業務内容だそうだ。
なんだか簡単そうに感じるが、僕は仕事に手は抜かない。
抜くのはコルクか手榴弾のピンくらいな物だろう。
どちらも抜いたことはないが。
それから、ここまで読んでくれた読者のキミにならわかるだろう。僕はへそ曲がりで偏屈でどうしようもない奴なんだ。
自己嫌悪がしたいわけじゃない。だれだってしたくない。
そんな僕が自分の気持ちに正直な文章なんて書けるのだろうか、
不安だが努力をしなければならない。それが仕事だ。
そうだ、どんなジャンルのレポートを書くかまだ説明していなかった。
N.U.Iから依頼されたジャンルはVirtual reality creature(仮想現実生命体)のVirtual Youtuber(バーチャルユーチューバー)という情報生命体を観察し、
レポートする事。
彼らは主に動画配信媒体や、生配信媒体に寄生する
パラサイト型の情報生命体らしい。
姿は多様だ、殆どが人型で少女の姿である。
現在Vtuberを呼称する生命体は3000体以上いるらしい。
だが、一部の知名度が高いVtuber以外の生態は謎に包まれている。
レポートするのならば、知名度の低いVtuberを選びたい。
冒険とは常に新大陸を目指す物だ。そうありたいと思う。
すばらしい再発見よりも、さび付いた新発見だ。
別に彼らがさび付いている訳ではない。僕の心がさび付いているのだ。
的は絞った。引き金がさび付いていなければいいが……。
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