広重ブルー/太田記念美術館
現代でも「青」て退色する色のトップですよね?
江戸初期の錦絵に使用されていた草木から抽出する「青」は瞬く間にその色を失って今に至ります。
今回の企画展「広重ブルー」は歌川広重が「プルシアンブルー」と出会う事で格段に広がった技法をメインに据えた展示でした。
比較展示の墨一色の風景から、徐々に色味が増えていく流れは判りやすく、ベロ藍登場によってそれまでの油性顔料では出せなかった「ぼかし」や「滲み」や「グラデーション」をふんだんに使って四季折々を描いた作品がずらりと並び、近寄ったり少し離れたりを繰り返しつつ鑑賞しました。
それにしても輪郭を取らずに色のみで刷り上げている幾枚もの作品を眺め、確かに版木に印はあるのだろうけれど、徐々に淡くなるグラデーション含めて想像したくない繊細な技だ…と幾度もため息を吐きました。
(自分が刷り師なら断るわ!)
草木の青は退色してしまうし、その後に使われた油性顔料は色が褪める事は無くなったけれど粘質な為に「ぼかし」「にじみ」などの技法はできず、しかし抜けるほどの青空の青と日が沈んだ直後の紫と群青の中間な青は全く違う色味だし、真冬の夜空で白く輝く月の明るさに照らされた澄んだ夜空もまた違う青色。それらを描き分けることができるベロ藍の登場は、もう世紀の大発見!!!てくらいの一大事だったのではないでしょうか?
さてこの偶然出来上がってしまった革新的「青」である合成顔料の「ベロ藍」は「プルシアンブルー」とも呼ばれております。
作品を見始める前にこの顔料に関しての解説を読んだ途端から、私の脳内にはあの安全地帯(バンドです)の玉置浩二が歌う「プルシアンブルーの肖像」がバリバリ流れてきました。
ご存じない方はググってみてください。
「プルシアンブルーの肖像」は映画のタイトルであり、その主題歌の曲名です。玉置浩二氏が初主演(俳優としても初)の学校を舞台としたジュニア小説的なホラー/ミステリー系映画です。
ずっと角川制作かと思い込んでいたら、実は配給は東宝でした。
しかもこの映画の主題歌だと思い込んでいた曲(歌いだしが「なぜ?なぜ?」と言うやつ)が同じく調べたら全く違う曲(恋の予感て曲でした)で、更に更に言うと「プルシアンブルーの伝説」だと思い込んでいましたが「~の肖像」でした。
封切りで見に行ったのですが(併映がチェッカーズの映画だった)内容を全く覚えておらず、なんか薄暗い青味がかった学校の廊下を玉置浩二氏がものすごい勢いで走りながら幾枚ものドアを開くたびに特殊メイクでどんどん顔が変化して(モンスター化)いくのだけしか記憶にありませんでした。
まぁ、そのくらいの若年層向けの怖い映画ってことだったのだと思います。
(個人的感想なので凄い好きだと思われてる方がいらしたらごめんなさい)
歌川広重の幻想的ですらある「青」の演出を見ながら、ずっと脳内では安全地帯が鳴り響き、そしてあの映画のシーンがヘビロテしており、なんだか無性におかしくて何度も笑いをかみ殺した企画展でした。