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『澤近泰輔65祭 The Chronicle』第1部レビュー

2023年6月20日に東京都町田市制65周年記念ライブ&澤近泰輔誕生祭として、町田市民ホールで開催となった『澤近泰輔65祭 The Chronicle』。
実際には澤近さんは、6月21日が誕生日なので前夜祭なのだが、そんな細かいことは誰も気にしないだろう。

この澤近泰輔誕生祭。実は、2018年6月の澤近泰輔60祭から毎年開催されている。
今回は、通算6回目の誕生祭だ。
歌手やタレントの誕生祭ライブは珍しくないが、編曲家やキーボーディストの誕生祭ライブは、かなり珍しい部類だと思う。
編曲家、キーボーディストは、世間では裏方扱いを受けるのが通例なのだから。
今後、澤近さんの誕生祭がきっかけとなって、編曲家や演奏者が大々的に毎年誕生祭をするライブ形式がスタンダードになっていってほしいものである。

そして、ライブ1か月後の2023年7月23日、ついに配信発売が始まった。9月3日までのロングラン配信である。

https://eplus.jp/sf/detail/3916520001-P0030001

地方に住む身にとっては、ありがたい配信だ。
最近は、ヒットチャートのベスト10常連のアーティストだけではなく、いろんなアーティストのライブ音源が手軽に視聴できるようになった。
どんどん便利になっていく半面、年配になればなるほど、新しい仕組みへの対応が大変だ。

私は、配信初日に視聴するつもりだったが、パソコンで登録・購入をしようとしたらうまくできず、途方に暮れた。
後から調べたところ、イープラスのアカウント登録は携帯電話認証じゃないとできないらしく、ようやく今日、登録・購入が完了した。

前置きが長くなったが、澤近泰輔65歳のセットリストは豪華だ。

1.Nurse(澤近泰輔 ドラマ『振り返れば奴がいる』サントラ)
2.Breath of Bless(澤近泰輔アレンジバージョン)
3.Time to Say Goodbye(サラ・ブライトマンcover)
4.恋一夜(宇海 工藤静香cover)
5.信じる友へ(宇海)
6.ファイト!(宇海 中島みゆきcover)
7.WINDY ROAD(宇海 MULTI MAXcover)
8.夕景(澤近泰輔)
9.昔の約束(Sasatika)
10.サタデナイ(Sasatika)
11.愛は勝つ(Sasatika KANcover)
12.明日の風(八神純子)
13.TERRA~here we will stay(八神純子)
14.Love is alive(ASKA&八神純子)
15.はじまりはいつも雨(ASKA)
16.PRIDE(ASKA)
17.僕たちの大航海(宇海)

そして、出演メンバーも豪華だ。
まずはチャゲアスのバックバンドメンバーとしてお馴染みの方々。
ギター:関淳二郎
ベース:恵美直也
ドラム:佐藤邦治
ストリングス:谷口いずみストリングス 総勢11名

さらにゲストボーカリストも豪華絢爛。
宇海
佐々木良(キンモクセイ・Sasatika)
八神純子
ASKA

もはや、夏フェスである。

オープニングは、澤近さんの作品でドラマ『振り返れば奴がいる』サントラの「Nurse」、「Breath of Bless」澤近さんアレンジ版。
澤近さんは、「本邦初演、ひょっとしたら最後」と自虐していたが、なかなか聴く機会のない楽曲は、ファンにとっては嬉しすぎるセットリストだ。
澤近さんのピアノとストリングスの相性は、いつ聴いても抜群で、ドラマやオリンピックの情景が目に浮かぶ。

最初の2曲から分かるように、このライブは、澤近さんが編曲した楽曲で構成している。
いわば澤近泰輔祭りなのだ。

3曲目からは、ゲストボーカリストが登場。
まずは、澤近さんが見出したシンガーソングライター宇海さん。
ミュージカル出身の宇海さんの歌声は、抜群の声量と表現力で一瞬で歌の世界に引き込んでいく。
ヨーロッパの大ヒット曲「Time to Say Goodbye」、日本の大ヒット曲「恋一夜」をまるで自らの持ち歌のように、情緒豊かに歌い上げる。

3曲目と4曲目の間には、澤近さんがメンバー紹介。11人のストリングスメンバーを1人1人紹介するのは澤近さんらしかった。
現在は、YouTubeやTwitterなど、SNSが隆盛で、ミュージシャンも音楽だけでなく、人柄も含めて評価される時代。
澤近さんがどんどん脚光を浴びるようになってきたのは、そんな時代背景もあるのだろう。

そして、5曲目は、宇海さんのオリジナル曲「信じる友へ」。私が宇海さんのファンになったきっかけの曲である。
沖縄音楽が醸し出すメロディーと心が洗われるような癒し、励ましを感じられる詞が琴線に触れる。

そして、ここからは澤近さんと宇海さんが二人三脚でカバーし、宇海さんを人気者に押し上げた「ファイト!」「WINDY ROAD」の披露だ。
「ファイト!」は、澤近さんの編曲と宇海さんの歌唱が見事に融合した名演で、YouTubeでは誰もが大絶賛し、再生数も10万回を超えて伸び続けている。
私も、以前、感動してレビューを書いたほどだ。

「WINDY ROAD」は、MULTI MAXの大人気曲。宇海×澤近泰輔の名義でカバーし、2023年のFNSチャリティキャンペーン50周年イメージソングに起用された、再び旬の楽曲。
きっと将来、宇海さんの名を全国区に押し上げた曲として語られるに違いない。

このライブは、第1部と第2部に分かれており、第1部の盛り上がりが最高潮に達したのは、やはりこの曲だった。
コロナ禍が収束し、ステージ上に紙飛行機が飛び交う光景は、壮観と感嘆せずにはいられない。

そして、第1部のトリを飾ったのが澤近さんのオリジナル曲「夕景」。
ストリングスをバックに澤近さんがピアノを弾き語る。初めて聴く澤近さんのソロ歌唱は、とてもソフトで切なく響く。
これまでの人生を振り返り、いくつもの思い出が淡く平坦になっていく情景を描き出している。
このライブのタイトルはクロニクル。つまり年代記。
1年ごとに開催するライブ形式だけでなく、それぞれの年代に存在する、思い出深い重要な楽曲を音楽で記したライブでもあるのだ。

ライブが後半に進むにつれ、私は、そんな想いをどんどん強くしていくのだった。

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