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『CHAGE & ASKA LIVE IN KOREA 韓日親善コンサート』DVDレビュー

2000年8月、CHAGE and ASKAは、韓国で日本人初の単独大規模コンサートを開催した。

四番打者ばかりを集めたセットリスト。
CHAGE and ASKAが韓日親善コンサートで披露した楽曲群は、自他ともにそう認めざるを得ない。

1.夜明けは沈黙の中へ
2.なぜに君は帰らない
3.WALK
4.higher ground
5.もうすぐ僕らはふたつの時代を超える恋になる
6.LOVE SONG
7.終章(エピローグ)
8.めぐり逢い
9.THE RIVER
10.トウキョータワー
11.はじまりはいつも雨
12.no doubt
13.SAY YES
14.HEART
15.僕はこの瞳で嘘をつく
16.YAH YAH YAH
17.NとLの野球帽
18.PRIDE
19.On Your Mark
20.Something There
21.太陽と埃の中で

これまでの国内ツアーとも、アジアツアーとも異なる、明らかにベストアルバム級のセットリストである。

2000年と言えば、巨人が4年ぶりのリーグ優勝を目指して強力なプレミアム打線を組んだ。長嶋茂雄監督が夢見たのは、全員が四番打者の圧倒的な野球。そんな理想的なチームが2000年の巨人だったように思う。

1番から7番までの誰もが四番を任せられる超重量打線は、圧倒的な破壊力を見せつけて巨人をリーグ優勝へ導く。長嶋茂雄監督は、監督人生の集大成を飾るかのように、自らの夢とプロ野球ファンの夢を華やかに実現させた。

CHAGE and ASKAがすべて四番打者のセットリストを組んだのには、そんな時代背景も重なる。
圧倒的な実力を見せつけて、国境の壁を壊す。

韓国の大衆に日本人アーティストの魅力を知ってもらうには、そして、認めさせるには、CHAGE and ASKAのベストを見せつける必要があったのだ。
そのため、1曲目からラストの21曲目まで、全速力で走り抜けるようなライブになっている。
100メートル走を21本連続で走り続けるようなライブ。ここまで圧倒的なライブは、他に見たことがない。

そんな中でも、CHAGE and ASKAらしさは、しっかり出してきている。「トウキョータワー」でCHAGEのソロ歌唱を聴かせると、続いて「はじまりはいつも雨」でASKAのソロ歌唱を聴かせる。
2人それぞれが、ソロアーティストとしても確固とした実力を持っていることを見せつけるのだ。

さらに、英語詞曲「THE RIVER」「Something There」も披露。聴衆の中には、日本語は知らないが、英語は知っている韓国人もいる。そんな人々への配慮もしっかり考慮しているのだ。
特に「Something There」は、アメリカのハリウッド映画の主題歌なので、韓国人にも唯一馴染みがある楽曲のはずだ。

そして、何といっても「HEART」からラストの「太陽と埃の中で」までの畳みかけるアップテンポな楽曲群は、圧倒的だ。
「HEART」と「僕はこの瞳で嘘をつく」の間に、「Trip」のイントロの超絶スキャットを挟むところは、もったいなすぎるほどの使い方だ。

「YAH YAH YAH」では、観客全員がサビを大合唱する盛り上がり。「PRIDE」での沸き上がる歓声。それらは、もはや日本以上と言っても過言ではなかった。

そして、ASKAが行った日本語と韓国語のスピーチは、同じ内容でありながら、それぞれの国の人々が大きな歓声を上げるほど、国境と歴史を超えた民間交流を意識した名スピーチであった。
続く「On Your Mark」でASKAが涙で声が詰まり歌えなくなったシーンは、もはやもらい泣きせざるを得ない。

このときばかりは、「On Your Mark」が日韓の文化交流への願いを託す楽曲になっていた。

「夢の心臓めがけて 僕らと呼び合うため」

ASKAは、当時の状況とこのサビの詞があまりにもリンクしすぎていたため、感極まってしまった、と振り返っている。


大サビ前のアカペラが映えるラストの「太陽と埃の中で」を聴き終わった後、私は、CHAGE and ASKAの集大成をこのライブに感じた。

国境を超えて離れていた国民同士の心をつなげたライブ。おそらく、これを超えるライブをできるアーティストは、後にも先にもCHAGE and ASKAしかいないだろう。

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