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そのトマトが意識を持ったのは、陽の眩しいある夏の午後のことでした。 はじまりは、小さな小さな問いかけ、からです。 * 見渡す限りのトマトの森が世界をぐるりと覆って、反転した地平線のどこまでもどこまでも広がっています。大空がゆるやかな凹曲線をえがく地平線の奥へ奥へと吸いこまれて、その果てにある収束点が、はるか遠くもやのなかに霞んでいます。 さわやかな音を立てて飛び立つのは、水撒き鳥の群れ。透明な翼からは霧雨がこぼれ落ちて、珠虫色に光っています。細やかな水の粒がトマト