SMAPのこと

SMAPが解散を発表した。
アイドルというのは楽しくただキラキラ輝いて翳りなんて見せないで欲しいなんていうのは消費者の奢りかもしれない。
だけどこのSMAPの終幕の仕方はやるせない。もう中年の気配は隠しきれない5人だけれど、しかし5人集まって歌って踊るときの空気と輝きは紛れもないアイドルだったから、彼らがあんな風に重苦しく歯切れの悪いやり方で終わってしまうのは、悲しい。

91年にデビューした彼らは、平成生まれの僕らが物心ついたころには既に第一線のアイドルだった。ぎりぎり、世代的には森くんがいた頃を知ってるかどうかくらい(僕は知らない)だから、「青いイナズマ」や「SHAKE」の頃からが、僕にとってのSMAPだ。

そして、ごく個人的な話になるが、僕がSMAPに対して強く好感を覚えたのはここ数年。そのきっかけは彼らが20周年を迎えたことと、「Joy!!」という曲だった。

なんせ、物心ついたころにはSMAPは超一流のアイドルだったから、改めて好きになる必要なんてなかったのだ。むしろ、「世界に一つだけの花」があまりにもヒットしすぎて、鼻白んでしまったほど。既に超カッコ良くて、面白いお兄さん達だから、逆に、歌が上手くないとか、おっさんだとか、あえて逆を張ってみせるのも思春期の通過儀礼だったのかもしれない。
もちろん、はなからハマれなかった人もいるだろうが、少なくとも僕にとっては、当たり前に人気者で、アイドルだった。

そして、時は流れて、2013年(この間にも、彼らの思い出深い曲はもう沢山出ているけれど)、「Joy!!」という曲が出る。確か先に、「赤い公園」というバンドの、僕と同じくらいのミュージシャンがあのSMAPに曲を提供したのだ、という華々しいニュースとして曲のことを知ったのだ。それから、なにかの音楽番組で曲を聴いた。そして、その歌詞に、なんだかたまらなくなってしまった。

「無駄なことを一緒にしようよ」「あの頃の僕らを思い出せ」

ちょうど、就職して2年目だった。働きだした会社でそんなに上手くはいかなくて、たまに学生時代の友人と飲んで、それで気持ちを晴らしてなんとかやりすごしていた時の僕に、アッパーな曲調で少し後ろ向きでだけどそれでも前を向いて、と歌うあの曲はとても響いた。
それで改めてSMAPのことに興味が湧いてネットで調べていくにつれ、例えば木村くんと中居くんの関係性や、ちょうどその頃に放映された「初めての5人旅」という番組の動画を見て、20年以上グループとして活動を続ける彼らについて、今まで気づかなかった視点が生まれた。
アイドルとして、それだけの年数い続けるということ。グループ内での関係性。そういえば、彼らには様々な事件もあって、それなのにアイドルとして未だに輝いているのだ。
そうなると、「Joy!!」の歌詞が、改めて色んな意味を思わせてくれた。

それから、彼らの過去のアルバムをきちんと聴いたりし始めたところだった。いつかコンサートに行きたい、なんて言っていたら、こんなことになってしまった。

いつか親も死ぬし好きなバンドも解散する、という話でしかないのかもしれない。いつまでも続くものなんてないし、その事を教えてくれた、ということなのかもしれない。
少なくとも、彼らの曲だけは、あの輝きのままであってほしいし、ソロになった彼らも、老いてもいいから、カッコ良い存在であってほしい。今のところは、ただそれだけだ。

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