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(エッセイ)このコロナ禍でギターを始めたというお話。

※この記事の最後の方に、恥ずかしながら私自身の演奏動画があります。

 今年の1月のことだが、こんなイベントがあった。

 バンド活動をやっている作家さんを集めてのライブイベントである。
 私とはこのミス同期デビューの佐藤青南さんや、釣り友の岡崎琢磨さんなどの友人知人も出演しており、第一回と第二回は会場に足を運んで観たんだけど、今回はうちの息子くんが大学受験の真っ最中だったこともあって、配信チケットを購入して自宅で視聴させてもらった。

 ところで、これは今まで誰にも言っていなかったんだけど、ギターの練習を始めた。

 きっかけは、コロナで外出があまり自由にできなくなったからだ。

 元々、私は釣りとかキャンプとかのアウトドアが趣味だったのだが、ご存じの通り、コロナの影響で、以前のようには気軽に出掛けられなくなってしまった。そこで、家でもできる趣味をと思って、楽器の練習を始めたのだ。

 とはいっても、最初はギターではなくウクレレだった。
 人に誘われて始めたんだけど、これが自分でも意外なくらいにハマってしまったのだ。

 実を言うと、ギターは十代の頃に一度、挫折している。

 中学三年生の時に雑誌の通信販売で買った、アンプやチューナーが付属した初心者用セットで、メーカーは忘れてしまったが、白いボディに黒いピックガードの付いた、ストラトキャスタータイプのギターだった。

 今は、ちょっと YouTube とかを検索すれば、優良なギターの動画教材がいくらでも無料で観られるし、初心者のための情報も充実しているけれど、当時(35年くらい前)は、今のようなネット環境もなく、CDやビデオのついた教材もなくはなかったけど、ほんの四十五分くらいのビデオがついているだけの教材が何千円もしたりして、とてもじゃないが手が出なかった。
 ギター教室に通うという発想もなく、周りにギターを教えてくれるような人もいなかったので、必然的にスコアブックを買ってきてTAB譜を首っ引きで練習したり、CDやカセットテープで繰り返し曲を聴きながら耳コピするしかなかった。

結局、この時は、ピストルズとかラモーンズとかダムドとか、ギターソロを除けばパワーコードだけで押し通せるような曲しか弾けるようにならず、その先、どう練習していいかもわからなくて、一年足らずで挫折してしまった。よく、「Fの壁」とか言われるが、そもそもオープンコードを練習した覚えがないので、そこにすら至っていない。

 二十代の頃に、エレキベースに手を出したこともある。

 ギターはコードとかあって難しいけれど、ベースなら単音なので何とかなるんじゃないかという、ベーシストが聞いたら怒られそうな理由からだ。すみません。何もわかっていなかったんです。
 その頃は音楽の趣味も、パンクからレゲエやファンクに移っていたので、とりあえずボブ・マーリー&ウェイラーズのバンドスコアを買ってきて、『ジャミング』とかの簡単な曲なら、ピック弾きでいくつか弾けるようにはなった。
 本当はブーツィー・コリンズみたいな格好良いスラップに憧れていて、真似して練習してみたりもしたんだけど、そもそもどうしたらあんな音が出るのかすらもわからなかった。
 当時はスラップはチョッパー奏法とか呼ばれていて、超絶技巧のように思われていた。詳しい教則本なんかも存在せず、みんな手探りで技を習得していたんじゃないかと思う。
 まあ私はツーフィンガーすらできなかったから問題にもならないが。

 そんなわけで、二度の挫折を経て「自分は音楽には向いていない」と思うようになった。

 だけど、「楽器が弾ける人」への憧れは、ずっと燻り続けていたようだ。   
 楽器が弾けないままに終わる人生に、大きな悔いがあったのは間違いない。

 そんな時にコロナである。

 さっきも書いたが、最初はギターではなくウクレレだった。
 これは今振り返っても、いい巡り合わせだったと思う。
 最初からギターだったら、また挫折していたかもしれない。

 ウクレレの練習を始めたのは、忘れもしない、2020年の5月のゴールデンウィークの頃だった。今からちょうど2年前のことだ。

 インターネットでウクレレの普及に力を入れている、ガズさんという人のYouTube動画(→こちら)を見て始めたのだが、これがびっくりするほどわかりやすく、1週間もしないうちに簡単な曲が弾けるようになり、その上、弾きながら歌う、「弾き語り」ができるようになってしまった。

「俺、楽器弾けてる! 弾き語りしている!」というこの時の感動と衝撃は計り知れない。一生無理だと思っていたことが、短い期間であっさりと習得できてしまい、狐につままれたような気分だった。

 これがウクレレのいいところで、例えばCやAmなどのコードは指一本で押さえられるし、悪名高いFコードもたった指二本である。弦もナイロンだから押さえやすいので、コードチェンジも少し練習すればすぐにできるようになる。

 この成功体験に味をしめ、次から次へと弾き語りで曲をコピーした。ギターだと、たぶんこの状態に至るまでに早い人でも3か月から半年くらいはかかると思う。ウクレレから始めてよかったと書いたのはこのためだ。楽器っていうのは、弾けるようになると、どんどん楽しくなってくる。

 そして数か月後、とうとうギターに手を出した。

 若い頃はエレキでギョイーンみたいなのに憧れがあったんだけど、ウクレレから入ったせいで、アコースティックギターに興味が湧いた。

 で、いろいろと調べているうちに、「スラム奏法」というものに出会った。

 自分も詳しくは知らないんだけど、ペッテリ・サリオラさんというフィンランドのギタリストが2000年頃から始めた比較的新しい奏法で、まあ要するにギターをパーカッションのように叩きまくりながら弾く奏法だ。

 通常は初心者が手を出すような奏法じゃないんだけど、知らない者の強みというか何というか、「ナニこれカッケー。俺もこれできるようになりたい」と、いきなりこれから練習を始めたのです(今はピック弾きの練習もしています)。

 というわけで、49歳でギターを始めて1年半(ウクレレ入れたら2年くらい)の現在の私の演奏を公開します。ある意味、羞恥プレイだな。でも人に演奏聞いてもらわないと上達しないっていうしな~。

 これは先日、部屋で練習していたら、息子くん(大学生)が乱入してきてスマホで動画撮影してくれたものです。梅雨時なもんで室内干しの洗濯物とかが映り込んでいて絵面が悪いのはご勘弁。

 曲は Vaundyの『裸の勇者』。アニメ『王様ランキング』の主題歌です。

 こうやって動画で客観的に見ると、自分で思っていた以上に弾けてないな~。

 クローズスネアの叩く位置が悪いとか、カッティングとかブラッシングのキレの悪さとか、ロール入るとリズムが微妙に狂うところとか、課題だらけだな。あと俺、最近太り過ぎだからダイエットしないと(ギター関係ない)。

 この年になって、新たに一生付き合える趣味に出会うとは思ってなかったよ。ギター楽しい。

 心残りは、せめてあと十年早く始めたかったってことくらいかな。


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