2023.7月頭渋谷道頓堀劇場

梅雨の蒸し暑さもあり、渋谷はマスクをしている人をほぼ見かけなかった。外国人観光客がスクランブル交差点で記念撮影をする姿も増え、コロナ前の生活に戻っている人が増えていることを実感したが、慎重派の私はまだマスクが手放せないでいる。

渋谷道頓堀劇場の今週の香盤は、私の関東滞在のタイミングと運良く重なり、eyeさんと蒼稀子さんを拝見しようと先月から決めていた。

香盤順は、
1:eyeさん
2:蒼稀子さん
3:玉さん
4:浅葱アゲハさん
5:赤西涼さん

浅葱さんと赤西さんは、この日が初観劇だった。お二人の堂々としたステージは、身体の末梢まで意識を行き渡らせたようなパフォーマンスで、演目の世界にグッと引き込まれた。
玉さんは別の劇場で何度か拝見したが、渋谷道頓堀劇場で見るステージは、照明などの影響なのか、より深みが増して見えた。

奇数回は夏らしい演目が多く、全体的に涼しげな印象を受けたが、特に赤西さんの狐の演目は、終始笑顔で熟される中にも、時折、狂気を覗かせる場面があり、ゾクっとした。

蒼さんの夏の演目は、これまで拝見したステージの中で最もストリップの様式に落とし込んだ構成になっていた。そこに意外性を感じたが、随所に蒼さんのパフォーマンスの巧みさも組み込まれているように見えた。
ステップ、衣装を脱いでいく所作、凛とした立ち姿の背中で語る表現、暗転後の立ち位置の移動などから、空間と物語の時間経過と無言の語りを感じるようであった。

eyeさんのステージは、艶やかな衣装、力強く、また、しなやかな身体表現、足捌きや手捌き、細かい表情の変化や視線の向け方、さらに扇子を用いたチェアダンスや、その演目の立ち上がりで難しいギミックも熟すなど、それら全体的な格好良さは見ていてとても楽しいし、叫びたくなるような高揚感もあった。

そんなこんなで、平日でも賑わう場内は今回も見応えのあるステージが続き、最後の4回目がダブル進行で始まるとハプニングが起こった。

経緯は把握していないが、eyeさんの演目中に被り席にいたお客さん同士が、手に持ったお酒を乾杯し始めた。それに気付いたeyeさんが、咄嗟の判断で、その状況をアドリブで対応し、場内を大いに盛り上げてステージを務め上げた。
本来ならば、自身のステージの段取りを乱されたことになるのだろうが、ハプニングをモノにし、場を盛り上げ、更に履いていた網タイツに挟みきれなくなるくらいのチップを受け取ってステージを後にするという、eyeさんのステージ力(りょく)を、また垣間見る場面に立ち会った。

場内の異常な盛り上がりを考えると、次の蒼さんはやり難いのではないかと思ったが、1周年作が披露されると、場内は一瞬で蒼さんの空気になった。
eyeさんに続き、蒼さんのステージ力(りょく)や1周年作の持つエネルギーの凄さを体感して、私が蒼さんのステージに漠然と感じていた魅力が、一つ明確化されたような気がした。

1周年作は、抽象的な演目だと思うが、使われる音、パフォーマンスなどの全てが、私のストリップ以外の趣味の感性にも紐付けされて、そこから色々と考えたり感じさせてくれるところが、とても好きな演目である。

夏の演目は、ストリップの様式にかなり寄せたものであったが、これまでと異なる演目を披露されたことには、蒼さんなりの苦労や試行錯誤があったのではないかと勝手ながら想像した。

表現したい事を仕事の成果に結び付ける事の難しさは、色々な踊り子さんも語っているが、ハプニングすらも味方にする、一瞬で場を自分の空気に変えるという説得力の強さは、とてつもない武器なんだと改めて体感した1日だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?