コラム4

あわら四方山話その2
芦原の最終日は、冷たい強風と雪の降る厳しい夜だった。

開演前にお邪魔をすると、フロアには2〜3名の男性が雑談をしており、そのうちの1名は投光のスタッフさんだった。

あわらミュージック劇場は、お客さんの入りによっては1回で切り上げてしまうことがあると、前日に別のお客さんから教えてもらっていたので、遠征最終日にこの状況はとても嫌な予感がした。

私も雑談に加えてもらい、タイミングを見計らって投光のスタッフさんへ「今日の感じだと1回で終了ですか?」と尋ねた。
すると、「いや、2回やりますよ!」と即答された。あわらミュージック劇場の常連さんと思われる他のお客さんも、その返答には盛り上がっていた。

更に、「やれるなら3回やりますよ」とも言っていた。この時点では、それは流石に冗談かなとも思ったし、常連のお客さんもやや弄りの入った返しをしていたのだが…開演すると本当に3回公演が行われた。

今までは、どの劇場のスタッフさんに対しても、客とスタッフという距離感での関わりしかなかったが、この日の夜はスタッフさんの心意気に心底痺れた。

無粋なので確認はしなかったが、恐らく遠征客を把握した上での決断なんだと勝手に思っている。

開演時間が近づくと、お客さんの数も増えてホッとした。しかも、この日は出演者さん全員がお手製のおにぎりとシチューと、バレンタインデーのチョコレートケーキまで用意してくれていた。

3回公演が終わり、劇場を出ると道路が雪で白くなっていた。私は雪に慣れていないので、ゆっくりと転ばないように歩いて宿へ戻った。寒くて風も痛かったが、それも含めて凄く素敵な思い出が出来たことにとても感謝している。

宿の近くのコンビニエンスストアで買い物をし、外の喫煙所でタバコを吸っていると、赤灯をつけたパトカーがやってきて、手荷物検査を求められた。
この日の予算を使い切った空の財布を自分で開けて、警察官へ見せる。これも良い思い出になった…かは微妙だが話のネタにはなるかなと思った。

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