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「家事をやりません!」パートナーとの関係修復のために、あえて“突き放す”作戦に出ると……

今回お話を聞いたのはヨウイチさん(37)とマユさん(30)。ふたりは共働きで、事実婚6年目のカップルです。3年前に結婚式を挙げ、ヨウイチさん側の両親、そして愛犬の柴犬と同居しているそうです。事実婚を選ばれた、というより籍を入れなかった理由って何かあったのでしょうか?

マユ「もともとは『結婚式の日に婚姻届を出そう』と話をしていたんですけど、式の準備が整わず、予定が流れてしまったのが最初のきっかけでした。そもそも結婚するという流れになったのも、私の母が何度も『早く結婚しろ』と急かしてきたことが大きくて。夫からのプロポーズもとくになく、そんなこんなで割と結婚に関して“人ごと感”はお互いにあったかもしれないです」

ヨウイチ「結婚式も周りからの『大々的にやろう!』という圧があったので、そういうもんかなぁと」

マユ「そもそも、同棲中から『子供ができたら結婚する』くらいの考えでした。結婚式を挙げたいという願望もなくて。結婚する必要性をあまり感じていなかったんですよね」

ヨウイチ「ふたりとも働いているから扶養どうこうもないし。僕も必要性はあまり感じてないです」

 結婚していると配偶者控除など税金面で優遇されることがあるけれど、共働きの場合そこまで必要性を感じないというのはその通りだと思います。相続だって遺書があればできますしね。逆に結婚すると、夫婦別姓が認められていない現在、妻側の名字を変更する手続きやら報告やらが面倒くさい。

マユ「そうなんです、籍を入れずにここまできているのは手続き的な部分の面倒さが一番大きいですかね。でも、私の親からの『結婚しろ』という圧力は今もあります。いまだに、親から定期的に戸籍謄本が送られてきてますから(笑)」

ヨウイチ「職場なんかでも挨拶がわりに「入籍した!?」ってイジられますね」

マユ「デメリットとしては、保険の受取人になれないことですかね。今すぐに弊害が出るわけではないんですけど、将来を考えたときに現状の制度のままだとちょっと不安に感じる部分はあります」

 保険は事実婚でも受取人になれるタイプがあるにはありますが、選択肢が狭まったり、あとは家族割的なものを使えないのもデメリットかもしれません。とはいえ、なんだかんだ周囲からの圧が一番のデメリットだろうなあと感じます。いちいち「なぜ事実婚なのか」という理由を話さなきゃいけないし、誰に迷惑をかけてるわけでもないのに理解を得ていかなきゃいけない感じで……。あと細かいけれど結婚することは入籍でもない。

ヨウイチ「いまだに先輩には怒られますね。『ケジメなんだから』『そういうものなんだから』って」

「ケジメだ、そういうもんだ」ってのはその人の価値観であって、他人にぶつけていいものではない。ですが、人ってこういうことを言いがちなんですよね。「知らない」から。事実婚について何も知らないから、そういう人に不安を感じてしまうという。

 自分が知らないものを勉強しようともせずに「ダメ」って言い出したとき、人は“老害化”するものですね。

夫を変えた「家事しません」宣言

 おふたりへのインタビューはテレビ通話でおこなっていたのですが、チラチラと画面に映り込むモコモコの柴犬に悶えてしまいました……。

ヨウイチ「僕、最近ようやく犬が可愛いと思えてきたんですよ」

マユ「1年半飼ってようやく……」
 ふたりのルールにも「犬を大事にする」という項目を挙げてくれていました。しかし、なぜ今になって?

マユ「最近になって夫が自主的にお世話をしだしたからだと思います。その前は犬のことで大ゲンカしたこともありました。『お前が勝手に飼ってきたんだから散歩はお前が行け』みたいなことを言われて」

ヨウイチ「記憶にない……」

 うっ、「記憶にない」は困りますね。それだと話す前提が成り立たない!

ヨウイチ「『記憶にない』って結構言ってたみたいです。最近はあんまり言わなくなってるみたいですけど」

マユ「確かに、最近になって夫の態度がかなり変わってきました」
 先ほどからキーワードになっているのが「最近」。犬を愛し始め、態度も変わり……事実婚から丸5年、何があったのか!?

マユ「私が転職する際に『今までほどは家事をやりません!』と夫に宣言したんです。私は前職を辞め、その後しばらく休職期間があったのですが、その間もそれ以前も家事はほぼ私がやっていました。ですが、宣言後には夫も私も家事をやらないせいで家の中が荒れ果てまして(笑)。でも、意地になって2か月ほど放置し続けたところ、ようやく夫が家事をしてくれるようになりました」

ヨウイチ「家が腐敗していくさまが僕にもわかったので……。そこで『妻にばかり任せるのはおかしい』とやっと気が付きました。

 強いエピソードをいただきました。夫がやるまで家事をやらない!と決めても、1〜2日で汚さに耐えかねてやってしまう人が多いと思うんですよ。でも、マユさんは夫が改心して家事を手伝うようになるまで、根気強く待ったわけです。

ヨウイチ「まず、水回りがドロドロだったので水回りの掃除から始めました。それからは、何かを取るついでに机を拭いたりとか、洗濯物を取り込んだついでに洗面台を拭くとか、“ついでに”いろいろとできるんじゃないかと思うようになってきて……。それを続けていくと、家事が気持ちよくなってきたんですよね」

 家事が気持ちいい!物凄い変化!

マユ「夫が家事を手伝ってくれるようになってから、どういうわけか夫からの愛情を感じることが増えました。最近はお互いがリビングにいる時間も増えてますね」

ヨウイチ「これまでは『家事をやってもらっている』という罪悪感がずっとあったので、小言を言われないよう逃げていた部分があったかもしれないです。家事の大変さがわかって妻への感謝の気持ちが増しましたし、それに『このままでは俺が捨てられるかも』という恐怖も感じ始めて……。そんな危機感も相まって、徐々に変化していった感じです」

 この“夫から妻への愛情が増した話”が深いんですよね。「家事をちゃんとするようになったから妻からの愛情が増した」のではなく「家事をして、妻のありがたみがわかったから妻への愛情が増し、そのおかげで妻から夫への愛情も戻ってきた」という流れです。関係性がある程度成熟した夫婦の場合、より愛情を深めるためには「示したぶん、返ってくる」ということを大事にすべきなんだろうなあと思わされたのです。

一番ありがたいのは健康とメンタルを気遣ってくれる人

 マユさんの「夫が協力してくれるまで家事をしない!」宣言が功を奏し、現在はとても関係が良さそうなふたり。お互いがパートナーにしてもらって嬉しかったことは何でしょうか?

ヨウイチ「妻はすごく忙しいのに、毎朝お弁当を作ってくれるんです」

マユ「料理をするのは好きなので、当たり前のようにやってますね」

ヨウイチ「苦じゃない、というのがありがたいなと思ってて。お弁当も食べやすいよう麺が一口サイズになっていたり、ハロウィンのときにゾンビのキャラ弁になっていたり……。優しさを感じますね」

  一口サイズになっている麺! 働くことって孤独だったりするじゃないですか。そんなときにお弁当箱を開けて、麺が一口サイズに分かれてるの見たら……ううっ!(泣)

マユ「夫は年の半分くらいは出張していて外食が多いので、東京にいる間はなるべく手作りのものを食べさせてあげたいなとは思ってまして」

ヨウイチ「最近血圧も高くなってきてるので、ありがたいですよね」
 さきほどヨウイチさんから「妻に捨てられる恐怖」が語られましたが、自分の健康を考えてくれる人なんて絶対に大切にしたほうが良い。この世で一番ありがたいのは自分の健康とメンタルを気遣ってくれる人ですもの。これは別に結婚相手じゃなくても良いけど、そんな人がいるなら関係性を良くするために努力したほうがいいし、そのためのこの本を書いてるってわけですよ。

マユ「私が嬉しいと感じるのは、疲れて帰ると私の布団が整えられていること。それは、夫が家事に協力する前からやってくれていましたね」

 ベッドメイキング。これは誰でもすぐに真似できそうな嬉しいポイントじゃないでしょうか。しかし、こういう習慣ってふたりがケンカしたときにはどうなるんだろう。

ヨウイチ「ケンカしたときも逆に続けますね。やらないのが悔しいので」

マユ「私もケンカしたときは自分の洗濯物だけ洗おうかと一瞬思うものの、『みみっちいな』と思って夫のぶんも一緒にやるようにしています」

 ケンカして感情的になった状態から少し落ち着いてきたとき、相手の優しさが普段以上に心に染みるもの。相手への感謝が生まれると、話し合いの土壌ができますよね。そこまでいくと「ケンカ」から「話し合い」にスムーズに移行できて、より良い関係になれる気がする。

 さてさて最後に、ヨウイチさんが出張で1〜2か月帰ってこないこともあるそうですが、別々に暮らしている期間のルールってありますか?

マユ「おはようとおやすみだけは連絡しろ、と決めています。それを守り出したのも最近ですけど。“生存報告”だけはちゃんとしろと(笑)」

ヨウイチ「物理的に相手と離れることで、お互いが優しくなれている面もあると思います。『来月も東京にいる』って妻に言うとガッカリされますからね(笑)。でも、旅行がてら出張先に妻が来ることもあったりして。それはそれで楽しいですね」

 今回のおふたりは、いうなれば関係性がどんどん良くなってきた夫婦。そう、関係は致命的なものでなければ良くもできる! パートナーとの関係にちょっと不安を感じるかたは、とりあえずベッドメイキングから始めてみてはいかがでしょうか。


こちら

「すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある」より。

https://amazon.co.jp/dp/4594084508


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