【2020松本山雅】第2節vs金沢(6/27)Aレビュー

1.失った勝ち点2

再開初戦は山雅にとって厳しい現実を突きつけるものだった。
数多くのシュートを放ちながら、DF・ポスト・バーそして元山雅戦士白井裕人に阻まれ続けた。
この試合では一定の収穫は得られたが、それ以上に多くの課題を露呈した試合であった。
やや批判的になってしまうが、今後40試合で他を圧倒し、J2制覇・J1昇格を果たすために今後松本山雅がクリアしなければならないと考えられる課題・今後に期待できるポイントをあげていきたい。


2.スターティングメンバー

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山雅は4ヶ月前の愛媛戦から1人変更。
左SBが高橋から高木利弥に変更になっている。
高橋の欠場理由は不明だが、サブにも入っていないことを考えると負傷も考えられるだろう。

対する金沢は2人変更。
契約により出場出来ない下川に変わり高安孝幸、負傷の大石に変わり山根永遠となっている。


3.山雅の攻撃

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まずピックアップするシーンは前半2分、阪野のミドルシュート。(上図)
スローインの流れから、隼磨が中へクロス。セルジーニョがヘディングでフリックし阪野がターン。
左足で放ったシュートは白井のセーブに遭うが、高い位置でボールを握り中央に人を集め、2トップを中心としてゴールを狙う姿勢が出たシーンであろう。リスタートから速い展開でシュートまでもっていった点も評価できるポイントとなる。
31分にもセルジーニョがワンツーを繰り返しエリア外からシュートを打ったシーンがあり、前線の連携はある程度機能していると考えていいだろう。


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次にピックアップするのは70分の利弥のシュートシーン。(上図)
阪野が下がりながら受け、塚川にパス。
塚川からハーフスペースの裏に抜けた利弥へスルーパスが通りシュートに持ち込んだ。
GKと1vs1に持ち込んだシーンはこのシーンだけだったが、このように裏に抜けるシーンを増やすことでより得点のチャンスを作ることが出来るだろう。
実際、押し込んでボールを保持している際に、スペースがありながら走り込む選手が居ないシーンが複数あり、裏を狙う意識を強化していくべきだろう。


4.山雅の守備

間延びしてカウンターを受け続けた後半については次の項目で触れるとして、2月の2試合から課題であるクロス対応について触れたい。

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前半21分、加藤にフリーでヘディングを打たれたシーンだが、ここでは以前の試合と違いペナルティーエリア内で「ゾーンディフェンス」を敷いている。
マンツーマンで付くことによってサイドチェンジに対応できなかった以前(特にセレッソ戦)の反省を活かしているといえる。
しかしながらこのシーンでは、クロスを打たれる前までは隼磨加藤のチェックをしていたのだが、クロスが打たれた瞬間、その弾道に気を取られマークを外してしまった。

また別のシーンでは4バックがスライドし、スペースを埋めた藤田利弥の間に加藤の侵入を許し、上から叩きつけるようなヘディングシュートを打たれているため、ゾーンディフェンスの穴を徹底的に突かれてしまっていた。
ゾーンにしろマンツーマンにしろ最終的には相手FWと競り合う必要があるが、現時点で山雅のDF(特にSB)はポジショニングや駆け引きにおいて後手に回っているのは事実であり、修正が必要だろう。


5.苦戦したミラーゲーム

ツエーゲン金沢は試合前の監督のコメント通り、数人が連動したサイドからの攻撃と、ロングボールを織り交ぜて攻撃してきた。
特に前半はボールの取りどころを定めるのに苦戦し、数的優位を作れず、自陣に押し込まれる時間が続いてしまった。
さらに山雅は自陣で奪ってから縦に速い攻撃を展開し、最終ラインで回そうとしてもプレッシャーを感じてロングボールを蹴らされてしまい、回収されてしまう苦しい状況が続き、余裕を持ってボールを回すということはあまりできなかった。

しかし、数的同数から数的優位を保つために守備に奔走し、ボールを奪ったら全体で前に圧力をかけて走るこのスタイルは、「中断明け」「無観客」「敵チームのチャント音声」など様々な得意な条件の中で選手は疲労を蓄積させていった。
疲労で足が止まっていると感じるのは人それぞれだろうが、私は前半30分過ぎ後半55分過ぎである。

先に再開している欧州においても、再開初戦では後半60分から試合のトーンが落ちている試合が多く、山雅も例外ではなかった。
さらに守備で左右に振られ、カウンターで上下することで、金沢よりも多く走っている山雅はその疲労が目に見えるのも早かったのである。

ミラーゲームではなく、数的優位を作れるフォーメーションは用意してあるため、そちらをチョイスしなかったことについては甚だ疑問であり、先ずその時点で自滅の道を歩んでいたことは明白だろう。


6.必然的に後手に回った選手交代

4-4-2で茨の道を進むことを決めたのであれば、交代選手の用意は必須である。
山雅の控え選手は

常田
服部
アルヴァロ
真希
久保田
彰人

この7人である。
この時点で右SB田中、左SB利弥、ボランチ藤田という守備局面で重要な選手の交代可能性がことごとく絶たれている。

対して金沢は結果的に2トップと2SHを総とっかえし、疲労で動かない守備陣に襲いかかった。ポゼッションで余裕をもってプレーしていた高安、杉井の両SBはフル出場を果たし、試合終了まで高いレベルで戦術を遂行した。

しかし山雅は、橋内が負傷し常田と交代、杉本久保田、パワープレー用に阪野服部を交代。
相手よりも疲労度が高いのにも関わらず交代枠を2つ残して試合を終えてしまった。この点については布監督は次節への修正ポイントとして試合後のインタビューで言及している。

また、交代不可能な3人に加え、セットプレー守備でルカオホドルフォをマークする塚川も交代することができなかった。途中消えるシーンが増えていたものの、サブの選手にルカオないしホドルフォをマークできる人材は居ないため、出続ける他なかったことは布監督を大いに悩ませただろう。

そうであればやはり、ボランチのフォローなくフレッシュな相手SH陣とやりあえるSBの選手が、サブの選手に居ない今回の陣容は失敗であると言わざるを得ない。
負傷やコンディション不良のメンバーがSBに多く居るのであれば、今回のサブメンバーを見てわかる通り層の厚いCBを使った3バックを組み、WBとして他のポジションの選手を当てていくのが得策だったと言えるだろう。

7.次節への希望

まずは森下の活躍だろう。
自分よりも大きいルカオと対等にマッチアップし、必要な場面でファウルで止めることでピンチを未然に防ぐことに成功した。
冷静に守備に貢献する若武者は今後山雅の最終ラインを支える欠かせない人材になりうるだろう。

次に、久保田のフィットである。
もちろんセルジーニョは文句無しの活躍である。しかし久保田セルジーニョが居た2トップの一角に入り、セルジーニョよりも低い位置で組み立てに参加し攻撃をサポートした。
ポゼッションを高めるのに必須の能力を兼ね備えており、いい距離感でサポートすることでセルジーニョの負担を軽減させるだろう。

次節は新潟と打ち合いの末ドローとなった甲府とホームサンプロアルウィンでの対戦。
次こそは山雅戦士が笑顔で試合を終えられることを願っている。