『対策されること』vs北九州(5/4)H レビュー
・北九州戦レビュー
勝ち点1という結果では少し物足りなく感じた試合。
取れそうだったけど取れなかった試合と捉えるか、相手にやりたいことをさせずに無失点で抑えた試合と捉えるか。
おそらく、大半の人が順位を考えても、取れそうだったけど取れなかった試合とも思うし、守り抜いたとも思うような試合であったのではなかろうか(私自身そう思ったりもしている)。
ピッチの上から出るメッセージを読み解くことであるひとつの納得点と今後の課題を見出したい。
・メンバー
山雅は4枚変更
前、下川、小松、外山とサイドの選手中心に主力に欠場者が出ている。
前節初出場の吉田は初先発。
フォーメーションは3-4-1-2。
北九州も4枚変更
攻撃の中心髙澤や藤川がサブスタート。
フォーメーションは4-4-2
・徹底的な研究を相手に
まず、山雅は北九州のビルドアップをはめるために、でスタートしたのでは無く、1番触らせたくない中盤を経由させない守備を敷いた。
理想としては、高い位置をとるSBに対してWBが盾ズレしてサイドでノッキングさせてボールを奪う形。
前線の3枚も、コンディションの影響もありショートカウンターに向いているため、その点を意識しているように感じた。
ただ、その目論見は3分で打ち砕かれる。
珍しく現地で見た私が、北ゴール裏中央から見た景色は、北九州のSHがタッチラインギリギリまで張り出し幅を広げ、その後方のSBは低い位置でボールを待っているという構図だった。
瞬間。
やられた。
と感じた。
山雅が北九州の4-4-2に対して3バックで来ることを予測していたかのように、哲学を捨てて山雅の3バックの攻略のための布陣を敷いてきたのである。
北九州の狙いは明白で、左サイドに寄せてから右サイドの藤谷へ展開。ちなみにこの瞬間に既に4人の北九州の選手が逆サイドでの攻めのためのポジショニングをしている。
そこから藤谷がドリブルで運び、中央の選手へパスor裏抜けというパターンを徹底してきた。
右サイドへの展開でも同じような構図は狙っていたが、吉田と宮部の運動量・スピードで何とかカバーしていたため、どちらかと言うと機動力タイプではない住田と常田が揃う左サイドが狙われていた。
また、右サイドでは別の問題が。
菊井のポジショニング次第で1トップ2シャドーのようになることもあるのだが、菊井が河野に対してプレスをかけるタイミングで、その裏に顔を出され、縦パスを入れられるというシーンを複数回作られた。
こちらは北九州にとっては本来狙い通りに近いボール回しのため、相手の長所を消す守備をしている以上通して欲しくないパスにはなる。
いずれにせよ、北九州がそこから山雅の守備陣を崩すところに関しては、耐えることが出来たのはプラスポイントだが、守備フェーズだけ見るとゲームプランを修正せず耐え続けたような格好になった。
また、攻撃に関しては横山の裏抜けを徹底マーク。
起点ができないため、サイドでのコンビネーションに頼らざるを得ない展開が続き、攻撃面での練度・連携の設計の不十分さを感じた。(正直、前節も横山のゴールがなければ同じことを書いていたと思われる。)
この点はチームとしての完成度を上げていく過程で徐々にというところではあるが、今節においてはメンバーの影響もあり、単騎突破や「自分のやりやすいプレー」を選ぶシーンが多く、チームとして効果的な攻撃をボックス内で展開することは出来なかった。
ただ、個人個人が求められていることを実行することで、チャンス自体は作れている。
それが今の現状であり、今節のように徹底的な個の対策にあった場合に、グループでそれを打ち崩すことができるようになれば、より確実性が増していくだろう。
・どんなメンタリティを持つか
戦術面で大きな変更を加えなかった(相手の捕まえ方のマイナーチェンジはあった)ことについて思考すると、やはり前提として守備が大切というチーム全体の意識がある。
もし、3-4-1-2の基本線を変え、前線の選手がSBにプレッシャーをかけるプランに変更していたら、山雅としても従来の狙いに近いものは出せるし、逆に北九州としても自分達がやりたいサッカーに近づいていくことになる。
今回に関してはそこをよしとしなかった、つまり相手が不得意なことを自らやっている状況の方が失点しづらいと判断したのではないかと考えている。
そう考えると交代も妥当な選択肢であったことが分かる。
加えると、連戦であり消耗が激しい状況であることも一部加味されているだろう。
もちろん試合ごとにある程度アプローチは異なるだろうが、今後も基本的な部分はおそらく守備ベースになるのではないだろうか。
ともかく、様々な要因があり、守備的な部分を第一に考えた試合運びであったこの試合に関しては、無失点を喜ぶことがとりあえず良いのではないだろうか。
・山雅対策のその先へ
戦術的なところで全てをカバーしきれない部分が難しいが、消耗が激しく、現時点で60分以降にトーンダウンする試合が多い。
この状況下で勝っていくためには、ある程度早いタイミングで得点することが求められる。
しかし、今節のように守備ベースで入った場合その点を求めていくことは現実的ではない。
特に現状SHにピン留めされることに対する解決策を見いだせていない。
特に我々としても、具体策として提示するというのも難しいというのがもどかしい。
スタッフの方々もおそらく頭を悩ませているところではあると思うが、この塩漬けを食らって思うように勝ち点を積み重ねられないという状況だけは避けたいという認識はそこまでズレていないだろう。
結論として攻守両面において、個々、グループ、チーム3種類の戦術レベルをもう一段階あげることが求められる。
仕込む/仕込まないの問題はあるにしても、若手が多い伸びしろのあるチームだからこそ、他のクラブよりも大きな成長曲線を描く可能性を有している。
それを目撃し、理解する上で重要なファクターである現状分析・課題認識がしやすい試合だったのではないだろうか。
原点回起