【2024松本山雅】vs Y.S.C.C (3/9)H レビュー
・YSCC戦
思い通りにコントロール出来たかと思った試合だったが、後半早々のワンチャンスを沈められ、苦境に立った。
最終的に追いついたあたりに今年の山雅のタダでは折れない部分を感じつつ、3試合で1勝という現実は目標に向けて満足いくものでは無い。
とはいえ、今後の戦い方の方向性を見て取れるシーンは多くあり、この試合をどう捉え、どう改善していくかは非常に重要な「収穫」を得た試合と言えるだろう。
・メンバー
山雅は前節から1枚の変更。滝が復帰し、山口がベンチに。ベンチメンバーは藤谷が山本に変更と、滝の復帰分で米原がベンチ外という形になった。
YSは前節大阪戦からは7枚の変更。
というのもミッドウィークのルヴァンカップ水戸戦から中2日で、大阪戦のメンバーのほとんどをスタメン起用していたため、ターンオーバーといった形だった。
・試合を支配出来た前半
前半、いつになくスローペースで入った山雅。
そのこともあり、試合を全体として支配したのは山雅だった。
前提としてYSが前節、ルヴァンカップを中2日づつで戦ってきているというところもあるが、かなりローペースで入ってきた。
そこに対して山雅も相手が来ないのであればとじっくり攻めることになるのだが、構造としても相手が出にくい形を作っていた。
ボランチの位置
前節は安永が降りて3バック的に回すシーンが多かったのだが、今回は降りずに2枚画壇差をつけて並ぶ、ないしそこから高い位置をとるような動きを見せていた。
これにより相手2トップは山雅の2CBにプレスをかけることが出来なかった。
SBやSHのサポート
また、同時に行っていたのが、SHやSBのサポートだ。
基本的には大外をSB、ハーフスペースをSHが取るような形は原則通りだが、多くの場合そのどちらかが低い位置でビルドアップの出口のサポートになっていた。
全てのケースがそうでは無いが、基本的に山雅の2CBが中央付近で持つサイドがSHが降りるようなシーンが多かった。
・守備の構造上の問題はどう改善した?
前節問題になったCB-SB間のギャップをどう埋めるかという問題。
そもそも相手GK児玉が足元のスキルをかなり持っているため、YSの保持時にハイプレスに行くシーンが少なかったことで、問題が発生するシーンは少なかった。
しかし、YSとしてはやはりギャップを狙っていた。
シーンA:大外経由での打開
山雅の解決策は我慢だった。
大外のWBに対してSBの縦ズレを我慢し、ギャップを絞って対応。
SHはWBへのルートを牽制しながらストッパーに対してプレッシャーをかける構図だった。
右サイドでは牽制が上手く効かず、WBに対してボールを入れられ、そのまま撤退を強いられるシーンが散見された。
シーンB:我慢できずに刺される
こちらは左サイドでよく見られた現象だった。
コンセプトは恐らく右と同じなのだが、樋口が若干早く出ることでギャップへのボールを供給された。
この点、常田の個で事なきを得ていたが、構造的には解決しきれてはいないということは認識しておかなければならない。
・一瞬の緩みから生まれた失点
後半から明確に相手に変化があり、そこで受けてしまったことで試合を難しくしてしまった。
まず、人ベースで言うと、右WBに柳が入ったことで、個の力を活かした突破を図られ、押し込まれてしまった。
組織的なところでは、YSが山雅が後ろ向きで受けるボールに対して前向きにアプローチする守備。
失点もそこから生まれた。
ただ、後半入って3分で変わったことに察知してプレーを変えろというのは難しい。
というよりも試合全体で足りなかったことがこのシーンに凝縮されている。
それがトランジションでの切り替え。
特にネガティブトランジションが緩い。
ここははっきりと課題と言える。
結局失点シーンでもほぼほぼタイトにボールに寄せることは出来ずにズルズルとポケットを取られ、失点を許している。
ここはいくら試合の展開がスローだろうが落ち着かせていようが、関係なく強度を高くプレーする必要があるシーンだ。
それができるようにならない限り安い失点は減らない。
・後半苦しんだ訳
ここからPKの獲得までかなり苦しむことになる。
考えられる苦しくなった理由を考察したい。
狙われたボールの受け方
YSに前向きで狙われているのはひとえにボールの受け方。厳密に言うとプログレッションする時の前の向き方にある。
山雅の選手に多いのは、半身・後ろ向きで受けて「ターン」して前進するパターン。
このパターンは守備にとってはボールを受ける選手が限定できていれば、ターンしてさえくれれば引っ掛けられる可能性がある。
ここにひと工夫入れるとすれば、後ろ向きで受けた選手の手前に前向きの選手がサポート。
そこに落として、前向きの選手が展開するというパターンだ。
今の山雅で導入するとすれば少し深さとパススピードが足りないが、パスの受け手を絞って狙ってくる相手を交わすことが出来る可能性は高くなる。
裏抜けの減少
後半露骨に減ったのが2列目の裏抜け。
実は前半から滝、浅川が裏抜けを多く実行。なかなかビルドアップ陣からボールが出てくることはなかったが、相手の守備組織を広げる役割を担っていた。
しかし、後半はその動きが滞る。
理由が複数あり絞れないが、「①後ろに余裕がないため下にサポートする意識が強まった」「②後ろが苦しいことで裏に抜けてもボールが出ないと判断した」「③疲労により裏抜けが難しくなった」「④あまりボールが出てこないのでプレー判断を変えた」のいづれかないし複数が要因であると考えられる。
実際裏抜けができるようになるとチャンスを作れており、PK獲得も浅川が裏抜けして起点を作ったところから生まれている。
このサッカーをやる上で、効果的に裏抜けを組み込めるか。それを継続できるかは一つポイントだ。
・この試合運びをどう捉えるか
守備フェーズにおいても、攻撃フェーズにおいても、ある程度スローでコントロールするようなイメージだった今節。
体力的な要素を考慮しても、この修正は妥当に思えた。
しかし、指揮官の言葉はこうだった。
この言葉は捉え方に注意が必要に感じる。
恐らくだが、試合展開に対して否定的な訳ではなく、アタッキングサードやネガティブトランジションなど、状況に応じてスピードアップすることが求められているように感じる。
シチュエーションに応じて判断を合わせることは難易度が高い。
また、山口に対してのコメントで
という言葉が出ているが、ある程度個人間のコンビネーションに依存する部分が出てくるのだろうと感じる。
とにかくこの試合だけでは判断がつかないことも多い。
連戦を終えるまでは長いスパンで検証が必要だ。
ただ、これは外から見た我々の感想。
チームは常に結果を求められている。
引き続きチームが表現する自称を理解し、紐解きながら後押したい。
再び強い山雅を 共に #14