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小説『ボクは未来にいますか』

botchiです。
初・オリジナル小説作りました。
イラストもオリジナルです。

去年 プリ小説のコンテスト用に
作成しましたが期限
間に合わなかったので
こちらで投稿させていただきます。

プリ小説は「小説+漫画」のような
感覚で、作っていて
とても楽しかったです。

あらすじと第一話のみ
note用に作成しました。
第二話~最終話はプリ小説のほうで
読めるので よろしければ
リンクからとんでお読みいただけると
嬉しいです。

よろしくお願いいたします。

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「ボクは未来にいますか」
                                                                                                  botchi


~あらすじ~

君は未来にもういない…

交通事故でこの世を去った君。
残された彼女の私。

君にとって私って何だった…

どんな存在…

私とどうなりたかった……

返ってくるはずもない答えを
ぐるぐる一人考えさ迷う私。

小学生のころの君が
クラスメイトと共に埋めた
タイムカプセル。
その中に入っていた
一本のカセットテープが
回り回って私のもとへ。

テープには
幼き日の君の声…

若くして人生に絶望し
誰よりも生きようとした君。

そんな君が残した言葉たちが
私に届いたとき
知られざる『真実』も明らかに…


過去の『君』が
未来にいる『私』を救う
優しい愛の物語。




第一話 「君」



「 犯人は幼なじみの男だと思う…

じゃ、いってきます。」

それが君の最期さいごの言葉だった。

まるで推理小説の始まりかと

思わせるような台詞せりふ

だけど、その実体は玄人くろうとでも何でもない

推理好きな素人しろうと一般人が思い付いた

ミステリー漫画についての

ただの推理、考察。

そんな言葉を残し

自分の推理が当たったのか

はずれたのかも知らず

漫画の続きさえも読めずに

君は一人お空へ旅立ってしまった。

二人のあいだでは

よくわすたぐいの会話だったので

そのことには特に触れず

口に歯ブラシをくわえたまま

「いってらっしゃーい。」とだけ伝え

私は君を送り出した。

それが君にかける

最後の言葉になるとも知らずに…。

27歳でこの世を去ってしまった君。

交通事故だった。

青信号を渡っていた君に

よそ見していた車が

突っ込んで一瞬で

その人生を終わらせてしまった。

同時に私と君の日々も終わった。

突然訪れたお別れ。

何ともあっけない結末だ。

あまりの出来事に

悲しむことも涙することも

できないまま葬儀を終え

何日かたった今も

君と過ごしたマンションに一人

二人で選んだソファーに座り

独りっきりでたたずんでいる。

夕暮れが連れてきたオレンジが

ゆっくりと部屋を

優しい色に染め上げ

時間の経過を そっと

私に教えてくれた。

ああもうこんな時間か…

昨日も一昨日おとといもその前も

そんなことを思っていた気がする。

悲しい出来事があっても

当たり前のように続く毎日。

普通にこなしてはいるけれど

心ここにあらず…そんな感じ。

繰り返す日々。

いつも通り流れていく時間。

何も変わらない。

何も変わらないのだけど

君だけがここにいない。

いないんだ。


今の私のには

夕暮れの美しいオレンジさえ

すぐに色を失い消えていく。

今日もまた一日が終わる。

私にとって君は何だったのかな。

そして君にとって私は

何だったんだろう。

なんとなく好きになって

なんとなく一緒にいて

なんとなく笑いあって抱き合って

なんともない日々を共にした。

君と二年付き合ったけど

結局 最期さいごの最後まで

「結婚しよう。」とは言われなかった。


結婚が全てではない。

タイミングではない。

いろいろな理由を君に

問うこともなく

頭の中で並べては消し

並べては消しを

繰り返しながら

自分でもまだいいかななんて

呑気のんきにかまえていた。


結局どう思っていたのかも

聞けないまま

君はいなくなり

ちゅうぶらりんな想いだけが

私の心に居座りつづける 。

君は私とどうなりたかったのかな…

答えは返ってくるはずもなく

私の問いかけは空中でフッと消え

虚しさだけが部屋のなかに

色濃く残りただよっている。

同棲まではいかず

お互いの家を行ったり来たり

していた君と私。

付き合いが長くなってきたころには

休みの日のほとんどを私の家で

二人で過ごすことが増えていた。

君の家は駅近で便利だけど

最低限の物と

寝て起きてができる程度の

スペースだけ用意されたような部屋。

二人で過ごすにはちょっと窮屈きゅうくつだった。

一方、私の家は

駅からは離れているけど

ロフトがあって広さはある

マンションの一室。

二人でいても余裕があった。


なので自然と私のほうから

「ウチに来る?」と言うことが増え

徐々に君の家に行くことは

減っていった。

そのかわり君は

食材やりなくなりそうな

日用品を買ってきたり

必要以上に家の物を使うことなく

光熱費に気をつかいながら

私の家で過ごしていた。

そのことを君は口にせず

さりげなくやっていたけど

私はきちんと把握していた。

多分、はじめのころは

お互い一人の時間空間は

必要だなってくらいの暗黙あんもくの了解で

「同棲しよう。」とは

どちらからも言わずにいたんだと思う。

だけど、だんだんと

私の頭のどこかで

「じゃあ、そろそろ…」

なんて言葉がちらほら

浮かんできてはいたので

新しい家具を君と二人

選んだりしながら

気持ちの昇華しょうか

していたのかもしれない。

二人掛けのソファーを買うときも

君は当然のように

多めに金額を払っていてくれた。

必要以上のことは語らない君に

私も余計な気をつかわないでいられた。

それが心地よくもあった。

だからあえて核心かくしん

触れるようなことは

二人して言わずにいたけど

たまに不動産屋の前を通ったとき

物件の紙を眺めて二人で

あーでもないこーでもないという

やり取りするのが好きだった。

素直に楽しかったのを憶えている。

いつの間にか部屋が暗くなり

時間が過ぎていることに気が付いた。

静かすぎる室内に

冷蔵庫の音だけがかすかに響いている。

電気をつける気にも

テレビを見る気にもなれず

音楽が聞きたくなり

CDが並ぶ棚まで力なく歩いた。

適当に並べられた私のCDの隣に

ジャンルごとにきっちり

分けられたCDの列。

そのほとんどが君が家から

持って来たお気に入りのもの。

月明かりを頼りに

その中から1枚CDを取り出し

プレーヤーにセットする。

イントロが柔らかに流れ

部屋中にゆっくりと広がり

暗闇を穏やかなものへと変えていく。

寡黙かもくな君が好きな

漫画や音楽の話になると

熱を帯びた感じで少し饒舌じょうぜつになる。

ウンチクや退屈な自慢話ではなく

純粋に一冊一曲から感じたことを

心から漏れ出たかのように

そっと私に話してくれた。

けど、今聴いているこの歌。

この曲が流れているときだけ

とくに語らず君は黙っていたけれど

なぜだか一番

君の大好きと特別が伝わってきたんだ。

よく私も一緒になって

君の隣でこの歌を聴いていた。

印刷のないまっ白なCDに

男の人の優しい歌声。

歌詞カードもなく

CDケースには「誰かの歌」と

手書きの文字で書かれているだけ。


「ねぇ、そっちにも聴こえている?」

………



返ってくるはずもない返事を

しばらく待っている自分がいる。




私の隣に

君は


もういない。






全 二十話


第二話~最終話は こちらから↓

https://novel.prcm.jp/novel/Tf0P32BorcP6ijUC3eSg



お読みいただき

ありがとうございます。






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