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103号室 夏至の祭り

2020/06/21(夏至)

やることなくって散歩ばっかりしていたGW中、近所に広くて緑のあるいい公園を見つけた。なんかやりたいなと思っていたら、コロナの波がようやく少し引いたタイミングで夏至がくる。夏至に公園で朗読したらさぞ気持ちよかろうと思いついてしまった。コロナ明け。公園。夏至。僕はいいことを思いつくと後先考えられなくなって即動き始めてしまう。ツイッターで衝動的に夏至朗読会を呼びかけたら、おなじみの人たちや初めての人たちが乗ってきてくれた。開催前日に北野さんから「日食朗読会ですね。では、直接公園に行きます。」とメッセージが来て、そこで初めて夏至で日曜日で朗読会の日のその時間に日蝕もあると知った。

当日は曇り、雲を透かしてだいぶ傾いだ太陽がなんとなく欠けているようにも見えなくもない。公園の隣はニュースにもなって打ち捨てられたようになっている小学校。どことなく異界感漂う日和に、懐かしい顔たちが集まってホッとする。僕たちは豊中市の広域指定避難所にもなっている広い公園の、子供連れとかの目に入らない隅っこに陣取った。ジャンケンで順番を決めて、車座になって朗読を始める。自動車とカラスの声、それに空港に着陸する飛行機が頭上をかすめる轟音がなかなかにすごくて、強制的に中断される。朗読が聞こえないということはないが、はじめのうちはなかなか集中するのに苦労した。みんな目を閉じて耳をすませて、がんばって世界に入り込もうとしている様子だった。だけど、2人、3人と読んでいくうちにそれにも慣れて、カラスの声や飛行機も不随意の合いの手のように受け入れながら聞ける耳になってきた。短歌から100字小説、タルホ、物語まで小さくて遠い世界をのぞいて回る2時間弱の旅。僕は、今日は詩やろ、と思って1時間ぐらい前に書いた詩っぽいものを朗読した。外で読むと声を張るのでいつもより朗読っぽくなる。マスク外すの忘れてたのを後から悔やんだ。
朗読を2周して日没間際、ちょうど解散ムードになった頃、西の空の雲が切れて夕陽が小学校の赤い外壁をオレンジに染めた。やっぱり今日はみんなで異界にいてたのかもと思った。

打ち上げも終わって部屋でラーメンを茹でてすすろうとしているとチャイムがなった。出て行くと半分開けたドアの隙間から蜂本さんが「渡すの忘れていました」といって闇取引みたいな動作で黒い袋に入った何かをくれた。

(クリタ)

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