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きのホ。2ndフルアルバム「リビングデッド」 所感

※タワレコオンラインでの取り扱いは現時点(2023/6/05)では無し

各曲所感

ゲイン

 1曲通して最初に聞いたときにまず驚いたのが、変則的な曲の構成。

Aメロ・Aメロ・Aメロ・Bメロ・Aメロ・Bメロ・サビ・Bメロ・サビ・Aメロ・Aメロ

 みたいな構成で、この流れでサビくるかなぁ~みたいなところを裏切りまくりで、かといって全体通して聞いて変とかじゃなく気持ちよく聞ける。
 音から歌詞がわからないサビが好き。音だけで聞いても良いし、歌詞がハマった状態で聞いても良い。「ねっ!しょうたいの ねっ!しょうらいのない ずぃっ!しょうたいむによこやりやめて」ここを音だけ聞いて正しい歌詞を浮かべられた人どれだけいるんだろうか。好きです、ハンサムケンヤ。

 ハンサムケンヤ氏はこの曲を1日と向き合う曲と表現している。あわただしく過ぎ去っていく日常の中の1日を切り抜いたみたいなそんな1曲だと思った。繰り返し聞いていたいけど、次の曲にも進みたい。そんなもどかしい気持ちになる。

魂リリース

 だましだまし続けてきたけどもう仕事も人間関係も全部嫌だーー!わーーーん!!でもこの場所でだけは全部解放できる!!いぇーーい!!みたいな曲(そうなの?)きのホ。のメンバーにとっては、きのホ。として人前に立つその時が解放の場所なんだと思う。多分。知らんけど。
 約半年前にリリースされていたシングルからの、再録収録。半年間ライブで歌い続けてきた上での再録なので各メンバーの曲への解像度が高くアルバム内でも特に完成度が高いと思ってる曲。後に出る片鱗も同様だが、初出からの成長が感じられるのも良い。きのホ。の楽曲はほぼすべてレコーディング時には歌割りが決まっておらず、一曲通してレコーディングをしたうえで歌割りを決める方式を取っているため、ここは自分の歌割りだと全メンバーが確信を持って歌っている音源はおそらくこの2曲が初。(泣きのPOWERは当て書きの歌詞があるけど歌割り決まってないフリーなところも多分あったんじゃないだろうか。)
 デビューが決まってからの約1年半の努力のすべてが詰まっている。今と歌割りが違うからとかそういう理由じゃなく定期的に初期の曲とかも再録して欲しい。是非ベスト盤を出す際には収録曲すべてオケ含めて再録して欲しいし、全曲収録して欲しいし、新曲も追加して欲しい。(ベストとは)

リビングデッド

 全国ツアー「いまゾーンB、そっちは?」のプロモーションムービーでイントロが使われていた曲。その刷り込みがあるせいなのかもしれないけど、イントロが流れてくるだけでワクワクのテンションがあがってくる。ポップな曲調と裏腹にわりと暗めな事を歌ってる歌詞。魂リリースに続いて「私の物語」こちらは解放されず、内に秘めて深く潜って自分と向き合うような印象。案外、対になっているような2曲なのかも。こじつけだけど。

片鱗

 前述の魂リリース同様の再録曲。リリース当時から過去一カッコいい曲だと思ってたけど、ライブでの磨きがかかって歌い方もまるで違うようなカッコいい歌に仕上がっている。片鱗はもうなんというかほんとにどうしようもなくカッコいいと思った。当然CDからは見えないけれどダンスもカッコいい。今回の音源だとライブの経験が歌ににじみ出ているようで、音からダンスが見えるんじゃないかっていうぐらいの臨場感がある。

泣きのPOWER

 きのホ。初のメンバー紹介ソング。グループ名やメンバー名を歌詞に盛り込み、それぞれの個性を歌う。歌詞の内容は素直に紹介するというよりは、ギュっとディフォルメして紹介した感じ。グループ名の「きのぽ」という音も素直にそのまま入れるのではなく、「上々泣 きのPO WER」少しひねた感じに入っている。今改めて歌詞を見てて気づいたけど、らねちゃんだけフルネーム入って無くて「らね」の2文字しか入ってないな…。

反面教師

 曲名から「予言者」とかみたいにシリアスめな曲かと思いきや、めちゃくちゃポップな曲。よくよく⇔くよくよ、毒毒⇔くどくど、楽楽⇔くらくら、歌詞にも反面教師というか反転した言葉が多用されていて言葉遊びがおもしろい。セリフ部分でも反面教師の反面教師は自分にとってはどうなるんだろうみたいな思考実験のようなことを始めるしとにかく最初から最後まで楽しいワクワクする一曲。僕にとって反面教師である君の反面教師のあの人はいったいどんな人になるんだろう?

渋滞

 先行で配信されていたシングルからの収録。
曲中に「渋滞」という単語が出る回数46回。
渋滞は誰のせい」と問い詰めること41回。
そしてそれを上回る「身体」53回。
間違いなく「渋滞」と「身体」が歌詞に出てきた回数世界一の曲だと思うし、これからこの記録が塗り替えられることは無いと思う。「渋滞」と「身体」が渋滞している。これがすごい記録となるのかどうかはよくわからないが。ここだけ聞くとどう聞いてもネタ曲っぽいけれど、そんなことは無くてちゃんと聴ける一曲になってるのがすごい。

 杉本晃佑監督のMVも素晴らしい。

あなたはそうだろう

 きのホ。の中でも数少ない、割と直接的に愛について歌う歌。ひょっとしたら解釈違いかもしれないけども。最近見てる「僕の心のヤバいやつ」の市川みたい。普段はずっと斜に構えてるけれど最後にはちょっと折れてちょっと考えちゃうところとか。

昔の話

 思い出の中の景色がじんわりと思い浮かぶ。
 昔の思い出にすがるでもなく、懐かしんだり、部屋の中に残ってるものを見て思い返したり、今を重ねてみたり、繰り返し、反芻しながら、現在と溶け合っていくような優しい歌。初めて聴いたときには、小中学校の合唱曲みたいな印象をうけた。みんなで懐かしい思い出話に花を咲かせながら、あの頃こんな歌歌ったよね~。みたいな。あ、だから昔の話???そういうことなの?(違います。)

DANGER!

 渋滞と同じく先行で配信されていたシングルからの収録。イントロからテンションあがりまくる。楽しいしカッコいいしすごく良い。10曲目でもう何も語彙力が残ってないから言葉が出てこない。好きです、デンジャー!10曲目でアルバムを締めくくるのにとてもいい。というかDANGER!はセトリでもそうだけど何曲目に来ても映える一曲だと思う。

ボーナストラック

 これはCDにしか収録されていないボーナストラック。58.6秒のブランクの後に再生される1曲。是非現物のCDを手にして聴いてもらいたい。

アルバム所感

 サブスク全盛期になり、個人個人のプレイリストもカセット、MD、CD-R、ウォークマンやiPodを使っていたようなあの時代を経てどんどん作りやすくなってきた。便利になっていくにつれて、アルバムを丸々1周聞くような聞き方をあまりしなくなってきた。もちろんそんなの個人差があるので一概には言えないけど少なくとも僕はそう。自分用のプレイリストを作るときは聞きたい曲を選ぶのでアルバムから選ばれない曲も当然出てくる。思い返せばCDコンポで聞いてた頃も毎回このアルバムの6曲目、8曲目は飛ばすみたいな事はよくしてた。所謂捨て曲と呼ばれるような曲がだいたいのアルバムにあった。だけど「リビングデッド」には今のところそういう曲が無い。全曲通して聞いてしまう。いまいちだなとか飽きて捨てるようなところが今のところ一曲も無い!ゲインを聴き始めるとDANGER!までが1セットみたいな感覚。(普段盤で聴いてないので、ボーナストラックは割愛)豪華なのにしつこくない三ツ星レストランのフルコースのような、なのにファミレスの人気メニューTOP10のような何も捨てるところも残すところもない皿の隅まで全部ペロッといけるSDGsのこの時代にふさわしい珠玉の10曲!これは上手いこと言おうとして意味の分からないことを言っています!!

 ほんとに将来ベストアルバムを企画するとしたら全曲入れるしかないだろうっていうぐらいに全部の曲が良い。リビングデッドは間違いなく名盤。ちなみにきのホ。の楽曲で一番好きな曲は「夜の庵」です。

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