中年はほんとに危機

「仕事とお金」について、いぬ氏の思うところを教えてください

ぺりおさんからのこの質問に答える前に、中年の危機、という言葉が目に入ってきて、そっちの話のほうが興味あるなと思ったいぬです、こんばんは。

ぼくももうすぐ42歳、モロにミッドエイジクライシスな年齢の真っただ中なのですが、ぺんぎん氏が言ってるのと同じように、なんとなく第一陣は乗り越えたような気がしていますね。

それでまあ、ぼくにとってのミッドエイジなクライシスはまさに「仕事と金」、そして「出世」の話と切っても切り離せない気がします。

それはもう忘れもしませんけど、5年前のある日、会社にまっすぐに行く気が起きなくて、まあそれ以前からずっとやる気が少しずつ減っていってたわけですが、途中にある喫茶店に入って、色々とモヤモヤしていることをノートに書いてまとめまして(それはモヤモヤするたびに今でもやることです)、しかしたいしてモヤモヤは晴れず、そのお店を出た瞬間に、それは重い重いため息が身体から出ていって、こりゃもうダメだなと思ったのでした。

ところが、こりゃダメだなと思って終わりではなくて、ここからずっとしんどい日が続きます。

なんとか自分を変えたいと思って別の組織に異動してもその先で失敗し、また別の取り組みをやってもまたその先で空回りして失敗し、まあ苦労ばっかりして、体調まで崩して、家族にも迷惑をかけて、それでも若い頃のような、自分のやったことがどんどん血肉になっていくあの感覚は一切なくて、何にも残らない、という経験をしました。

極め付けは、後輩のほうがどんどん出世していって、ぼくのほうは全然給料が増えなくて、なのに後輩に頭下げたりしなくちゃいけなくなり、自分はどちらかといえばそういうことはあんまり気にならないほうで、やりたいことができていればそれで幸せ、という性格だと思ってたのですが、もうそのやり取りが耐えられなくて、毎日嫉妬に狂って、それは苦しい毎日をすごしていましたね。

というのも、どうも自分は広告のコピーライターだったりクリエイティブディレクターの仕事が「やりたいこと」だったわけですが、時代の変化の中でそういう仕事がどんどん減っていって、あんまりクリエイティビティを発揮する必要のない仕事が増えてきて、楽しくなくなっちゃったんですよね。

それでまあ、今となっては、いやいやそこを楽しくするのが本当のクリエイティビティだろって思うわけですが、当時は何かをやるにはそれにふさわしい組織に行かなきゃいけない、というように思い込んでいました。

MBAに行ったほうがいいんじゃないだろうかと思っていたのもその時期だし、海外で働いた経験がないことを急にコンプレックスみたいに思い始めたりして、そんなこと微塵も興味ないくせに!

それじゃあどうやってこの危機を乗り越えたかといえば、まあ色んな人たちに救ってもらえたからですが、一番大きいのは、とあるクライアントのところに出向したことかもしれません。

そこで、自分は広報とか広告とかに関わる一切合切の仕事を取り仕切る経験をしたわけですが、まあその職場はエライ人もそうでない人も、なんでもみんなでやるわけです、オフィスの掃除から、お客さんのクレーム対応から、来客へのお茶出しまで、自分たちでやるわけです。

そうなると、どうも今まで自分は何か高級なことをやっているつもりになって、頭脳だけ使ってりゃいいんだとふんぞり返ってたんだなと嫌でも気づく。

実際に世の中には本当に頭が良くて、頭脳だけ使ってりゃいい人もいるわけですが、自分は決してそんな人間じゃないし、分厚い企画書を書くよりも、職場を出るときにゴミ出ししたほうが喜ばれる世界があるわけです。

それでぼくはすっかり目が覚めて、仕事なんてのはそんな高級なもんじゃなく、できることをやっていけばいいんだと気づいたわけです。

とはいえ、まあそこからもあれこれ失敗してますが、また働くことが楽しくなってきまして、それはもうクリエイティブとか広告とか組織とか出世とかそういうのはどうでもいい、自由にやって、人に笑ってもらえたらいいな、って吹っ切れたわけです。

お金も一緒で、まあ家族がいるからお金はたくさんあったほうがいいわけですが、しかしどれだけ悩んだり不安に思っても給料は増えないのでもういいや、会社は給料で自分を評価するかもしれないが、ぼくは自分を給料で評価するのはやめようと、どれだけ毎日を自由に、そして無我夢中に暮らしたかを評価しようと思いました。

無我夢中というのはいい言葉だな、まさに夢中になっている時というのは自分がなくなる、あるいは自分という存在が透明になって、目の前の取り組んでいるものだけが見えている状態になるもんです。

それで、ぺりおさんにバトンタッチということで、特に質問はないのですが、感想とか、関係ないけど思ったことなどお願いします。

dag.

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