ミス・バレンタイン

ビニールカーテン越しに見た彼女の姿は、すでに記憶に怪しくなっている。

切り揃えられた前髪を残して、後ろで一つに結ばれた黒い髪。
年齢は僕よりいくつか年下に見えた。
身長は少し高く、服装はもう覚えていない。

彼女はおにぎり二つと大きい菓子パンを買ったので、お昼にこれ全部食べるのかなと邪推した。
ありがとうございましたを言ったら、彼女はがんばってくださいと返した。
俺は戸惑ってへらへらするだけだった。情けない気持ちになった。

おんなじ菓子パン買ってみたけど、まだ食べる気にならない。
お砂糖のソースがかかっている、薄いうずまきのパン。

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