シン・ウルトラマン感想

この文章はシン・ウルトラマンのネタバレを含みます。未見の方はご注意ください。

 はい、シン・ウルトラマンを見てきたので感想を書きます。チラシの裏ってやつです。

 私、子どもの頃は大の特撮好きでございました。
 ウルトラマンは夏休みに再放送されたのを見たりレンタルビデオ屋で借りて見たりして、ウルトラマン大百科とかも愛読してました。
 大人になってからは熱も冷めてしまったので、ティガ以降の平成ウルトラマンはあまりチェックしておらず、きちんと見たのはZくらいであり、あまり熱心なファンではないかもしれません。
 しかし、子どもの頃に熱中したこともあり、思い入れが深いシリーズなのは間違いありません。

 ウルトラマンだけでなく、ゴジラも大好きでした。ゴジラは初代ゴジラから昭和後期のちょっとアレだったころのゴジラまで見てました。というか平成ゴジラもハリウッド版ゴジラも全部見ました。こいつ実はかなりゴジラ好きだな?
 そんな私がシン・ゴジラを見て「こんな作品が作れるのかァ~っ!」と見事に脳を破壊されたため、今回も期待して見に行ったわけです。

 今回もやられました。

 シン・ゴジラの時は想像していなかった方向から殴られたという感じの衝撃だったんですが、今回は正面から殴られたって感じでした。
 「ウルトラマンってこういうもんだよね」という文法を基本守りつつ、現代の「ウルトラマン」として丁寧に仕上げてきたなあという感じです。意外性はないかもしれませんが、ひじょ~によくできた作品だと思います。

 まず開幕ぐにゃ~っていうマーブル模様からのタイトル表示。うんうん、ウルトラシリーズといったらこれですよね。
 からの未確認巨大生物のラッシュ。あ、これ全部ウルトラQに出てたやつじゃん! なるほどなー、ウルトラマンの前の話だからかー!
 っていうかまずペギラとかを禍特対が倒す話からしてめっちゃ見たくないですか? それだけで映画作れそうですよ。いやまあ、それやるとシン・ゴジラになっちゃうんでしょうけど!

 冒頭の流れなんかは、シン・ゴジラがあってこそできる演出だなーと思ってみてました。細かい説明がなくてもどういうことがあったのかは大体わかってしまう、さすが。
 禍威獣とか禍特対の当て字は字面として見ると不自然なんですが、音としてはやっぱりカイジュウ・カトクタイっていうのが必要なんですよね。

 そして透明怪獣登場。ネロンガだー! やっぱりよく知ってる怪獣が出てくると俄然盛り上がりますね! 映画館なので内心でワッショイしてました。
 対処が遅れると核攻撃始まるからそれまでになんとかせいよっていういつものアレ。米軍はすぐに核攻撃したがるな!
 そして逃げ遅れた子供を助けに行くという神永さん、上から降ってくるウルトラマン。あっこれヤバいやつでは……? と思ったら案の定、子どもを庇って破片がゴンッ。この辺りでウルトラマンだけじゃなくて、セブン以降のテーマも混ぜてくる感じかなあと思いながら見ていました。

 ウルトラマンにおいて、ウルトラマンは主役でありながら、同時に怪獣を倒すための舞台装置でもあります。ウルトラシリーズはエピソードのテーマ性が強く、人間のエゴや科学技術の暴走、環境破壊に対する自然の逆襲が怪獣を暴れさせる原因になっていたりします。いわば、人間の自業自得です。しかし、それでもウルトラマンは人間のために戦ってくれる。特に初代はその傾向が強く、言ってみればデウス・エクス・マキナであって、「ウルトラマン」という個人としてのキャラクター性はほとんど見られません。
 もちろん、人間の時の姿のハヤタ隊員は一人の人間として描かれているのですが、それがもともとの彼の人格であるのか、ウルトラマンの人格であるのか、はっきりとしません。だから、ウルトラマンが何のために命をかけて人類のために戦ってくれるのか、どのような気持ちであるかはわからないわけです。
 ウルトラセブン以降、ウルトラマンは「人間の勇敢さに感動した」という形で、個人的に人類に肩入れして戦ってくれているということが描かれるようになりました。シン・ウルトラマンでもそういう描写になっています。もともとのウルトラマンでは、逃走したベムラーを追っているウルトラマンと、ビートルを操縦するハヤタ隊員が空中衝突したためにハヤタ隊員が死亡、その罪滅ぼしとしてウルトラマンがハヤタ隊員と命を共有して蘇生させたということですから、ここは明白な改変だと思います。

 そしていよいよウルトラマンの登場ですが、色が銀色! あとなんか細い! 元のデザインよりも異星人っぽさが増してますね。そしてウルトラマンの特徴であるシュワッチ声もなし。電撃を喰らいながら無言で距離を詰めてから、スペシウム光線でワンパン。戦い方に人間味がないというか、すごい機械的ですね。

 そしてウルトラマン対策ということで浅見さん登場なわけですが、やっぱり神永さんの中身がウルトラマンになってますね……。いかにも地球人を理解しようとしてる宇宙人って感じ(どんなんだよ)。
 しかし、あの発言に奇行でも周囲から「あいつはもともと単独行動が多いからな」で済まされるもともとの神永さんが一番謎の人物な気がする……。『野生の思考』読んでて「おっレヴィ=ストロースじゃん!」ってなりました。

 次の禍威獣はガボラ。ヒレを剥ぎ取られるやつですね。オープニングで出てたパゴスとネロンガとガボラは同じ着ぐるみを流用していたわけですが、それを「同型の生物兵器かも」っていう説明をつけてたのは面白かったです。
 地中を掘り進むガボラに地中貫通爆弾で攻撃するも効果なし。万事休すかと思われたところにウルトラマン登場! 変身シーンもあって安心。 そして人間が混ざったせいか色が赤くなってました。人間の血の色とも取れるなあ。
 前に比べると戦い方も人間味が増してるというか、背後にある放射性廃棄物処理場を庇う戦いをしており、ウルトラマンが人類の味方だというのが明確にわかるシーンでした。
 それにしてもガボラくんのドリルかっこいいな!

 ガボラを倒した後、禍特対の本部へ現れるザラブ星人。怖っ! 神永さんの乗ってる車にいきなり出てくるシーンもホラー味ありました。あと声がツダケン! 友好を装って取り入ったり、ウルトラマンを人間の時に誘拐しようとしたりっていうのは旧作と同じですね。
 あっさり誘拐される神永さん。やっぱりウルトラマンには変身できずにピンチっていうシーンがないとね!
 そしてザラブ星人といえばにせウルトラマン! 旧作のにせウルトラマンは目がつり上がってる感じでしたが、あんまり露骨に偽物って感じじゃないですね。
 自分がザラブ星人に囚われる可能性を予見して手がかりを残しておいたお陰で、神永さん(ウルトラマン)は浅見さんに救出されるわけですが、ここ人類を下等な存在と見てなめきっているザラブ星人と、対等な存在として見ているウルトラマンの対比になってましたね。
 あとパンプスで鉄扉を蹴破るのはやめたほうがいいと思いますよ浅見さん……。

 夜のビル街でのウルトラマンとにせウルトラマンの空中戦は「重力を無視してる」感じがすごかったですね。劇中でもそんな感じの説明があったかな~と思いますが、あえてそういう動きで描いてるのかなと思います(飛行に伴う衝撃波がないとかも)。
 ところで振り切ったと思ったらウルトラマンが真下に張り付いてて、スペシウム光線を直射してくるって怖すぎません? あとザラブ星人の本体がペラペラでえぐれてる感じなのは面白いデザインだと思いました。

 ザラブ星人を撃退したのもつかの間、次は浅見さんが巨大化してビル街に! 巨大フジ隊員じゃんこれ! ってことはメフィラス山本なの!?
 どうでもいいですが子供の頃、巨大フジ隊員がすごい不気味で怖かった思い出があります。だって特に意味もなく人間を巨大化させるとか怖くないですか? 今回はメフィラス山本のプレゼンテーションっていうことになってたので、そういう不気味さはなくなってましたね。

 それで山本耕史役のメフィラス星人ですが最高でしたね。山本耕史を演じるメフィラス星人を山本耕史が演じてるわけですから実質山本耕史役のメフィラス星人と言っていいと思います。
 自然な振る舞いなのにどこか不自然という絶妙な胡散臭さ。同じ「人間を演じている異星人」である神永さんが「無表情なんだけどどこか人間臭い」のと好対照でしたね。
 メフィラスが人間を分析して上辺を真似しているのに対して、ウルトラマンは人間を理解しようとしているということなんでしょう。それにしても山本耕史すごいな。

 メフィラス星人と神永さんが公園でブランコ乗りながら話したり、居酒屋で一杯やりながら話すシーンも、重要なシーンだけどおかしみがありましたねー。
 やっぱりウルトラセブンのメトロン星人とセブンがちゃぶ台挟んで会話するシーンを意識してたんでしょうか。自分が知らないだけで他にオマージュ元があるのかもしれませんが。
 あと割り勘は卑怯。笑うわあんなん。

 日本政府はメフィラスの計画に乗っかってメフィラスに服従する契約を結んでしまうわけですが、ここは旧作と違う点ですね。旧作では子どもであっても地球を売り渡したりはしない、という話だったのですが……。
 大人の立場から見ると、メフィラスの甘言に乗ってしまう政府は非常に情けないのですが、同時に大人である自分たちがそういう政府やシステムを支持しているし、そこに取り込まれてもいるわけです。はたして今の人類は利益と自立を天秤にかけた時にどちらを選ぶのか。そしてその天秤の向きを変えることができるのは、私たち一人ひとりの判断にほかならないのだと思います。

 それで色々あってメフィラスの企みを挫いて、ウルトラマンとメフィラスの対決なわけですが、メフィラスも元々の意匠を残しつつ、スッキリとしたラインになり、異星人感マシマシでかっこいいですね!
 ウルトラマンの八つ裂き光輪を片手で弾くのもカッコイイ。引き際も実に見事で、初代メフィラスの大物感が出てました。

 メフィラスが撤退したのは光の国から別のウルトラマンことゾーフィがやってきたからでした。なんでもウルトラマンが地球人と合体したせいで、地球人が生物兵器として利用可能なことがマルチバースに知れ渡ったから光の国の掟によって地球を滅ぼすためにゼットンを持ってきたとか。
 ってお前が持ってくるんかい! しかもゼットンて! なんだよ光の国横暴だな! お前なんかバードンに突つかれて頭燃やされてしまえ! って思いながら見てました。

 光の国の裁定に異を唱え、人類のためにゼットンと戦うことを決意したウルトラマン、禍特対に強力を要請します。ちゃんと一兆度の火炎吐くので安心。地球どころか太陽系まるごと消滅。柳田理科雄もこれにはニッコリ。
 ところで政府の要人として竹野内豊が出てきた時はシン・ゴジラ思い出して笑っちゃいました。ファンサービスですかね。
 今までの異星人ラッシュで心が折られて「どうせ人類が何やっても無理無理無理! ウルトラマンさんよろしくお願いしますよ!」とイデ隊員ムーブをかます滝くん。うんうん、やっぱり最後は人間の手で怪獣倒さないとね。ウルトラマンだからね。

 「為せば成る、為さねば成らぬ何ごとも」と格言を口にしてゼットンとの戦いに赴くウルトラマン。よかったそこで「私の好きな言葉だ」とか言い出さなくて。
 ゼットンですが宇宙恐竜っていうか宇宙戦艦ですね。生物というよりメカ。あとデカい。CIWSみたいにすごい勢いで対空弾幕張ってくるし。
 奮戦するも力及ばず地球に落下するウルトラマン。そしてヤケになって職場でストゼロ飲み始める滝くん。わかりやすい荒れ方だな!

 しかしウルトラマンは滝くんを信じてベータシステムの理論を託しており、再起した滝くんが中心になって世界中の科学者が結集してゼットン対策を立案することに。会議がバーチャルで済まされてるのは笑いました。
 その辺の流れはあっさりでしたが、まあシン・ゴジラで一回やったとこですからね。

 ゼットンによる攻撃直前、昏睡状態から目覚めたウルトラマン。滝くんたちのはじき出した計算をもとに「変身直後、コンマ一秒のうちにゼットンをぶん殴ってプラズマごと別次元へ放逐する」という荒業を敢行。無茶すぎない?
 ウルトラマンの変身シーンと言えばこれ! この効果音! 決死の覚悟でゼットンを異次元へ放逐するも、自分も逃れられずに異次元へ落ち込んでしまうウルトラマン。次元の狭間をさまようウルトラマンのところへゾーフィが! なんかよく頑張った、人類は生き延びる価値があるとか適当なまとめをするゾーフィ。お前どこまでも上から目線だな。
 光の国へ帰ろうと言うゾーフィに対し、地球はこの後多くの異星人に狙われる、だから私はここに残って地球を守るために命を使うというウルトラマン。「そんなに人間が好きになったか、ウルトラマン」。あー! ここで言うのかー!

 他者のために命を懸ける覚悟と、生き延びたいと願う意志。その背反が人間であり、人間は理解しようとしても理解できない存在である。でも、ウルトラマンがやったことって実際そういうことで、それは冒頭で神永さんが子どもを助けるために命をかけたことと同じなんですよね。スケールが違うだけで。
 ウルトラシリーズにおいては、人間に焦点を当てるとウルトラマンがデウス・エクス・マキナになってしまい、ウルトラマンに焦点を当てると「ウルトラマンの話」になってしまい、人間が脇役になってしまうという、構造上のねじれがある。人間ではなく、異星人がヒーローであるウルトラマンであるからこそ生じる問題ですね。
 それゆえに、主人公はウルトラマンであり、かつ人間でなければならない。その立ち位置をどう描くかによって、物語の性質は大きく変わってくると思います。

 シン・ウルトラマンでは際立ってウルトラマンを異星人として描くことにより、ファースト・コンタクトものとしての性質を備えています。
 そして、劇中でもウルトラマンが「私は神ではない。君たちと同じ一個の生命体だ」と語っていましたが、ウルトラマンという異星人が、怪獣を倒すという役割を担ったデウス・エクス・マキナから、一個の登場人物、人間へと変身していく過程を描く作品であった、と感じました。
 私としては「異星人であるウルトラマン」と「人間」の関係をいかに描くかというのがウルトラマンというシリーズのキモであると考えているので、そこを中心に据えてきたのは「わかってるな~!」という感じでした(厄介オタク)。

 以上です。チラシの裏なので言っていることがいい加減なのはご容赦ください。
 自分は映像・演出についての知識はぜんぜんなので、その辺りはだいぶ見落としてるだろうな~と思います。詳しい人の解説聞きながら見たいなー!

 とりあえず、もう一度見に行ってその時は絶対パンフ買います。


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