楽天は本当に改悪したのか?

12月1日から楽天グループのSPU(スーパーポイントアッププログラム)が改定されます。

※SPUとは…楽天のサービスを使うことで、楽天市場でのポイント還元率が上がるしくみのこと。
楽天モバイルユーザーならプラス2倍、楽天カードでの決済でプラス1倍、楽天トラベルの利用でプラス1倍といった風に、多くのサービスを利用すればするほど、楽天市場で買い物をした際にもらえるポイントが増えます。

12月の改定では、各サービスの倍率が見直され、現状の最大15.5倍から16.5倍に倍率がアップします。
一見、楽天ユーザーにとってはメリットのあるように見える改定ですが、SNSでは「史上最大の改悪」との声も上がりました。

なぜでしょう?

結論からお伝えすると、今回の改訂が「改悪」になるのは全体の2割ほどと言われているヘビーユーザーだけの見込みです。
それ以外の8割のライトユーザーは、改定前と同程度か、むしろポイント還元額が上がる可能性が高いです。

この結論を聞いて安心したので、もう大丈夫です!という方はここまでページを閉じていただいてOKです\(`•ㅅ•´)ノ

もう少し詳しく知っておきたい、という方向けに、以下で具体的に解説していきます!



・楽天モバイル契約だけで常時5%還元

まず、今回の改訂における楽天の意図をひも解いていきましょう。
楽天グループは今回、楽天モバイルの契約者獲得に向けて大きく舵を切ったと言えます。

楽天は12月1日のSPU改定で、楽天モバイル重視の戦略を明確に押し出してきました。
11月現在、楽天モバイルを契約している場合、楽天市場での買い物で2%のポイントが上乗せされます。
楽天市場の通常ポイントは1%なので、合算すると計3%アップになりますね。
ダイヤモンド会員(※)だとこのポイントがさらに1%上乗せされるので、合計4%アップになります。
※6カ月間で4000ポイント以上かつ30回以上ポイントを貯めた楽天カード保有者がなれる、輝けるクラス✨

これに対し、12月1日からは会員ランクによるポイントの差分がなくなり、楽天モバイルの契約だけでSPUのポイントが4%まで増加されるようになります。
楽天市場の通常のポイントと合わせると、還元率は5%ですね。
ダイヤモンド会員にならなければ4%に達しない現状と比べ、条件がシンプルで、かつ幅広いユーザーが5%還元の恩恵を受けられるようになります。
楽天市場でお得な買い物をするための条件として、楽天モバイルを契約しているか否かの差がかなり大きくなる形です。

また、モバイル回線だけでなく、楽天モバイルが運営する他のサービスも還元率が軒並み上昇します。
AndroidのGoogle Playなどで利用できる「楽天モバイルキャリア決済」で月2,000円以上利用した場合にアップする還元率は、0.5%から2%へと4倍も増加。固定回線の「楽天ひかり」や、モバイル回線を使う据え置き型ルーターの「Rakuten Turbo」を契約した際の還元率も、1%から2%に倍増します。
楽天モバイル関連だけで、最大8%のポイントを上乗せすることも可能になるわけです。

画像は楽天市場より

・1万円ぶん買えば1100ポイント付与される


この状態で楽天カードを使って決済すると、通常ポイントも合わせてなんと計11%もの還元が実現します。
1万円のものを買っただけで、1,100ポイントが戻ってくるのはかなりお得ですよね。
ちなみに楽天ポイントは楽天市場や楽天証券など、楽天グループのネットサービスで利用できるのはもちろん、楽天ペイを通じて店舗での決済にも活用できます。
イヌ先生もたまに、はま寿司やジョナサンでのランチ代をポイントで支払っています。
楽天市場で日用品を1万円ぶん購入するだけで、ランチ1食分が浮くという計算ですね。

楽天モバイルキャリア決済や楽天ひかりなどを利用するのは面倒だという方でも、12月からは楽天モバイルを契約しているだけで常時5%のポイント還元率なので、2万円の買い物をすれば1,000ポイントをもらえます。

楽天モバイルの「Rakuten最強プラン」は、データ利用量が3GB以下の場合、料金は税込み1,078円です。
毎月、楽天市場で2万円程度の買い物をすれば1,000ポイントが付与されるため、楽天モバイルの料金がプラマイゼロになるというシステムです。


3GB以下だと自動的に1,078円になるのは便利

月1万円から2万円の買い物というのは、日用品や雑貨などをほぼ楽天で購入するという方にとって決して高すぎるハードルではないので、この辺りの設定から見ても、楽天が楽天市場ユーザーを楽天モバイルに誘導しようとする意図が色濃くなっている気がします。

トータルでのポイントも最大15.5倍から16.5倍に上がり、大きな改善に見える楽天のSPUですが……
SNSで「改悪」との声が噴出した理由は、「上限額の低下」と「楽天カードの改悪」「達成条件の難度向上」の3つに集約されます。

・上限額の低下


今回の改訂で、サービスごとに付与されるポイントの上限が大幅に低下することになりました。
還元率は上がっているものの、天井がかなり低くなったという印象です。

例えば楽天モバイルの場合、現状ではダイヤモンド会員なら7,000ポイント、それ以外は6,000ポイントを上限にポイントが還元されます。
これが12月1日以降は一律で上限2,000ポイントまで下がってしまいます。
楽天モバイルのキャリア決済の上限も5,000ポイントから1,000ポイントに低下し、楽天ひかりやRakuten Turboも、5,000ポイントから1,000ポイントに縮小。

楽天モバイル関連以外でも、楽天カード特典分が5,000ポイントから1,000ポイントに縮小され、プレミアムカードに至っては1万5,000ポイントから5,000ポイントまで上限が下がるなど、獲得上限が大きく減る形です。
楽天証券の投資信託も5,000ポイントから2,000ポイント、楽天ブックスや楽天Koboが1,000ポイントから500ポイントなど、上限額は軒並み減少しており、これまで毎月大量にポイントを付与されていた楽天経済圏ヘビーユーザーにとっては間違いなく「改悪」と言えるでしょう。


楽天銀行+楽天カードは還元率と上限がともに大幅ダウン

・楽天カードの改悪


楽天カードもポイント獲得上限が減少していますが、楽天プレミアムカードはさらに還元率まで下がってしまうことになりました。
11月までは楽天プレミアムカードの場合、ポイント倍率が特典分だけで2%上がり、獲得上限も1万5,000ポイントでした。
12月からは倍率の優遇がなくなり、一般カードと同じ1%に引き下げされます。改定後のポイント上限は5,000ポイントと、一般カードよりは多いものの、ポイントの貯まりやすさは大きく下がってしまいます。

しかも、一般カードの楽天カードは年会費無料ですが、楽天プレミアムカードは1万1,000円の年会費がかかります。
ポイント還元率や上限の高さといったメリットを見込んで契約していた人にとって、SPUの改訂は梯子を外されたという印象ではないでしょうか。

さらに2025年1月から、楽天プレミアムカードの特典だった空港ラウンジ利用サービスの「プライオリティ・パス」にも年5回までという制限がつくことになりました。

こうしたサービスの削減が相次ぎ、楽天もさすがにこれは改悪であるとの自覚があったのでしょう。なんとプレミアムカードやブラックカードの年会費を返金するという異例の対応をスタートしました。
それもあって、これまでプレミアムカードを使っていた人が早々に一般カードに切り替えるという動きも多く見られます。
今後はよほどの改善がない限り、楽天カードは一般カードで充分ということになりそうです。

・達成条件の難化


他の二つに比べると注目度が低い印象ですが、実はSPUの達成条件も地味にハードルが上がっています。

例えば楽天ブックスは、現状だと1,000円以上の注文で対象になりますが、SPU改定後は3,000円以上の買い物でないと対象外になります。
楽天Koboも1,000円から3000円に、Rakuten Fashionに至っては、利用だけで達成できていたところに5,000円の上限がつくことになりました。
SPU達成のためにギリギリを狙った「ポイ活」をしていたユーザーにとっては、こちらもかなりの改悪となりそうです。

地味に痛い改訂かもしれません…

・まとめ


まとめると、楽天モバイルさえ契約していればポイント還元率は上がるものの、その上限は縮小されるというのが今回の改訂の概要です。
率が上がって天井が下がるわけで、そのぶん、すぐに上限に達しやすくなるのですが…
たとえば楽天モバイルでいえば、これまではダイヤモンド会員の人でも約23万円の買い物をしなければ上限の7,000ポイントをもらえなかったのが、改定後は5万円で上限の2,000ポイントに達するという計算になります。

ただ、天井が高い方が良いとはいえ、楽天市場で毎月23万円の買い物をするという想定はあまり現実的ではないですよね。
その意味では改定後のSPUのほうが、より多くの一般的なユーザーに受け入れられやすいと言えます。
楽天市場での買い物が毎月5万円以内というライトユーザーにとっては、還元率が高くなる分、これまでより還元額が上がりやすくなるからです。
これまで一部の「ポイ活」ヘビーユーザーに手厚く還元していたポイントを、広く薄くばらまくような改定と見ることもできるでしょう。

ポイント目当てでがっつりと楽天市場を利用していたヘビーユーザーが離れていくリスクを取りつつ、それ以上にライトなユーザー層の裾野を広げ、楽天モバイルの契約者獲得を促進するリターンのほうが大きいと判断した──というのが、今回のSPU改訂における楽天の狙いと言えそうです。

ちなみに、楽天グループが11月9日に開催した決算説明会では、楽天グループの取締役副社長を務める武田和徳氏が「改悪という声も最初のころは結構あったが、モニタリングをしていると、1週間ぐらいでほぼほぼそういった声は上がらなくなった」とコメントしています。

イヌ先生も、今回の改訂で損をする可能性の低いライトユーザー層として、今後も楽天のサービスを利用しつつ、その動向を見守っていきたいと思います。
また大きな改訂や発見があった際にはnoteやTwitter(X)でシェアできればと思いますので、ぜひどちらもフォローしておいていただけると嬉しいです。

それでは、また次の授業でお会いしましょう!

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