リビングにて


ソファに座った母が湯気をたてている。堕落してくようなコーヒータイムが、リビングに充満する。太陽の熱はじりじりと、ガラス越しに父の偶像を燃やしていく。母はにこにこしながらそれを眺め、床の木目から死を吸い取る。

「これもいいけど、あそこの部位はまるで駄目」

バリバリと音をたてて、背中で骨も喰っている。母の正面でコーヒーをすすり、せんべいなんぞを食っている。


丘の上に建つ生ぬるい鉄塔の下には、父の頭部が埋まっている。芯の無い空気にあてられて、赤いシートと鉄パイプが風になびいている。母はゴザをしいて、麦茶をくれとせがむ。鉄塔の生ぬるい確かな熱にやられて、いつかアメーバになってしまいそうだ。

「母は鬼ですが、父は偶像なのです」

くたびれることを知らない明るさと暗さ、焦がれる心で蒸発する。柔らかな閉塞を心で噛み締めて、私は眠る。おやすみなさい。


#詩

もうちょっと頑張れよ、とか しょうがねえ応援してやる、とか どれもこれも励みになります、がんばるぞー。