、の癖に

混沌とした平屋の一軒家は猫のおしっこで溢れていて、このどこかにコンドームを隠したと、立派な人が立派に言った。私は腹が減ってしょうがないので、今にも抜け落ちそうな床を踏みしめながら台所に立ち、なにか食べるものはないかと探す。どこもかしこも猫のおしっこ、の癖にいない猫。蛇口を回してもガスコンロをつけても猫のおしっこ、の癖にいない猫。

ここには食べるものなんてないんだと、あるのは隠されたコンドームだけだと立派な人が立派に言った。それでも腹が減るのに食べるものがないので、体重は減っていく一方だ。境界線を恐れて曖昧にただよう青いあいつが、私の上で踊っているから、お腹も体重も減っていく。

ただよう青いあいつは、住宅街の石塀からぬるりと出てきた。たまたま通りがかったのが私だったから、そのまま何故かついてきた。ここ数週間居着いているから家賃を払え、と言うと境も実態もないから踊ることしかできないのですと言い訳をのたまって、ただ私の上で踊っている。きっと擦り減らされている、こいつのせいで。

平屋の一軒家と猫とそのおしっことコンドームと立派な人と青いあいつ、と私。登場人物が多すぎて途中で諦めかけるけど、でもいない、猫が。

混沌とした平屋の一軒家は境界線も実態もなく砂のようにどこかに流れて、それでも細い根を張っているのは溢れる猫のおしっこのおかげ。立派な人は立派な風に早くコンドームを探せというし、青いあいつは踊り続けて止まらない、そのせいで擦り減る私を見ても何も思わない。の癖に、いない猫。

#詩

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