蛇が丸くなって私の前に居た。ぐるぐる同じことを繰り返す私に向かって「いつかお前はへびになる」と言った。確かに私は巳年生まれだし、蛇になってもおかしくないと思った。蛇の鱗は青緑色にぎらぎら光って、瞳は私をまっすぐ貫いて、人ごとみたいに話しを聞きながらビールを飲んでいた。

気づけば夏は終わろうとしていた。花火の約束もお祭りの約束も、すべて果たせなくてごめんね。いつも私はこんな風で、東京で誰かに見つけてもらいたいと他力本願を本気で思って生きているよ。池袋界隈を泣きながら歩いて、いつものように君に後ろから声をかけてもらえるのを待っていたりするよ。

蛇は私を笑った。小皿にビールを少しだけいれてやると、紅い舌でちろちろ舐めて満足そうに目を細めた。膝を抱えてその様子を眺めていると、確かにこいつはぐるぐる廻っていた。

雨の降った八月の終わりは、秋のにおいを小出しにしてこの街をぬか喜びで満たして、踊る私を馬鹿にしているよ。今日の朝に出した手紙、不安になったから夜にもう一度出したよ。同じことを繰り返しながら私は君のにおいを探して、強がってビールを飲みながら歩いていたよ。

理解が出来ないから蛇はとぐろを巻いた。長い身体を撫でてみると、そうやって人のことを馬鹿にしない方がいいと怒られてしまった。いつかお前の視線は地を這って誰にも届かなくなって、東京だろうがどこだろうがお前はそうやってぐるぐる繰り返すんだと言われてしまった。

秋のにおいは君のにおいかもしれない。君も知ってるとおり私はとても馬鹿だから、何かをした後に後悔するよ。二週間も気付かないまま生活をするよ。冷蔵庫は空になって、ビールの空き缶だけがシンクの中で泳いでいるよ。君からもらった青いピアスは家の中でひっそりと息をしてるよ。君が置いていった君は、私の手の中で小さく丸まっているよ。私が蛇になったらそれを食べてしばらく過ごすつもりでいるよ。

#詩

もうちょっと頑張れよ、とか しょうがねえ応援してやる、とか どれもこれも励みになります、がんばるぞー。